ギリシャ神話

創作

神々のちょっとした騙し合い

「神々のちょっとした騙し合い」

オリュンポス山の頂上では、神々が日々平和に暮らしていたが、何かと小さな騒動が起きることもあった。その日も、神々の間でちょっとした面白い事件が巻き起こっていた。

「ゼウス様、今日はあなたの命令で、また大事な会議を開かないといけないんですね？」アテナは、真面目な顔でゼウスに話しかけた。彼女はオリュンポスの知恵の女神で、いつも冷静で理知的だ。しかし、ゼウスの返事を待つ間に、少しだけ疲れた表情を浮かべた。

「おお、アテナ。今日はちょっとした冗談を考えているんだ。」ゼウスはにやりと笑いながら答えた。彼の目には、何かしら悪巧みの影が見え隠れしていた。

「冗談？ゼウス様が冗談？」アテナは目を見開いて驚いた。「それは一体、どういう…？」

「見ててごらん、アテナ。」ゼウスは軽く手を振り、全神々に向かって声をかけた。「今日の会議は、ただの会議じゃない。少しだけ遊びを交えようじゃないか。」

アテナは少し警戒しながらも、そのまま会議に参加することに決めた。ゼウスが本気で冗談を言っているとは思えなかったが、その「遊び」が何を意味するのか気になるところだった。

会議の場所に集まったのは、ゼウス、アテナ、ヘラ、ポセイドン、そして少し遅れてやってきたアフロディーテだった。アフロディーテは、いつも美しい容姿で登場し、他の神々が少し驚くほど華やかな存在だった。

「さて、みんな集まったな。」ゼウスは満足げに言った。「今日はみんなで面白いことをしようと思っている。ポセイドン、君は水の神だから、まず君がやってみるんだ。」

「水の神だって？」ポセイドンは眉をひそめた。「何をするつもりだ？」

ゼウスはにやりと笑った。「君には、海の中で最も珍しい魚を捕まえてきてもらいたい。」

ポセイドンは一瞬、困惑したように見えたが、すぐに冷静さを取り戻した。「なるほど、面白い挑戦だ。じゃあ、海の中で一番珍しい魚を捕まえてこよう。」

ポセイドンが海に向かうと、次にゼウスはヘラを見た。「ヘラ、君の番だ。君は家事の神だから、今日は神々の宴の準備をお願いする。」

ヘラはゼウスをじっと見つめた。「宴の準備？それは簡単なことだが、あまりにも退屈すぎないか？」

「じゃあ、ヘラ。君がもっと楽しいことをしてくれ。」ゼウスは目を細めて言った。

ヘラは少し考えた後、にっこりと微笑んだ。「わかった。じゃあ、ポセイドンが帰ってきた時に、宴の準備が完璧に整っているようにするわ。」

その瞬間、アフロディーテが遅れて会議室に入ってきた。「何か面白いことしてるの？」

ゼウスはニヤリと笑った。「おお、アフロディーテ。君が来てくれて良かった。君には一つの試練を与えよう。」

アフロディーテはその微笑みを浮かべながら、ゼウスの言葉を待った。

「君には、最も美しい花をこの山のどこかに咲かせてもらいたい。もしその花が本当に美しければ、神々の会議で見せびらかすことができるからね。」

アフロディーテはちょっと困った顔をした。「それなら、簡単にできるわ。でも…その花を見せるのが少し恥ずかしいわね。」

ゼウスはしばらく黙って聞いていたが、すぐに大きな声で笑った。「アフロディーテ、君に恥ずかしいことなんてないだろう。君の美しさこそが神々を魅了するのだから。」

その後、ポセイドンが海から戻り、珍しい魚を持ってきたが、その魚は何ともおかしな姿をしていた。奇妙な形をしており、色も奇抜で、どう見ても「珍しい」というよりは「面白い」と言った方が適切だった。

ポセイドンはその魚を自慢げに差し出したが、ゼウスは大笑いした。「それは確かに珍しいが、面白すぎる！」

ヘラは、ポセイドンの魚を見た後、しばらく黙ってから、ついに言った。「じゃあ、宴の準備はどうする？」

その瞬間、ゼウスは目を細め、皆を見渡した。「さあ、皆さん、楽しもうじゃないか。」

その日、神々はお互いの小さな騙し合いに笑い、ひとしきり楽しんだ。しかし、ゼウスはこの遊びを通じて、神々がどれほどに互いに楽しみながらも、その力を使って平和な世界を作り上げているのかを改めて感じていた。

そして最後に、ゼウスは言った。「みんな、今日は本当に楽しかったな。次回もこうやって、力を使うだけじゃなく、笑って過ごせる時間を作ろうじゃないか。」

アテナが微笑んだ。「そうですね。力を使うことも大切ですが、笑うことこそが、神々をつなげる力ですから。」

その日以来、オリュンポス山の神々は、時折こうした遊び心を持ちながら、世界を治めることを誓い合ったのだった。