ギリシャ神話

春秋花壇

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創作

創作ギリシャ神話:おお金持ちは誰?

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「創作ギリシャ神話:おお金持ちは誰?」

天上の神々が集うオリュンポス山。ある日、神々の王ゼウスが満面の笑みを浮かべ、宣言を始めた。

「さて、今日の議題は、我らの中で最も富を持つ者が誰かを決めることだ!金銀財宝の多さや、民からの捧げ物の数で競い合うとしよう!」

神々はこの突然の提案に戸惑いながらも、各々の自慢の富を思い浮かべていた。誰が一番の富を持つのかと期待が高まる中、まず口火を切ったのは、冥界を支配する神ハデスであった。

「地上の宝石や貴金属、それらすべての源は冥界にあるのだ。つまり、金銀財宝はすべて我がものと言える。いわば私は全ての富を掌中に収めているのだよ。」

ハデスの言葉に神々が頷きかけたとき、豊穣の女神デメテルが、落ち着いた声で異を唱えた。

「確かに、冥界には貴金属があるでしょう。でも、富とは必ずしも物質の量を指すものではありません。大地の恵み、つまり穀物や果物の豊かさがなければ、地上の民は飢え、国々は衰退してしまいます。豊穣が真の富なのです。」

その言葉に、農作物を抱えている地上の民を思い浮かべ、神々も一理あると頷いた。

すると今度は、海の神ポセイドンが一歩前に出た。

「私の海こそ、真の富を象徴しているのだ。魚介類から海洋交易に至るまで、海は人間たちにとって生命線だ。それに、数々の海の怪物や宝物が眠っているのも事実。私ほどの富を持つ神はいないだろう。」

しかし、彼が言い終えるか終えないかのうちに、金色に輝くアポロンが微笑みながら歩み出た。

「ポセイドン、それは確かに素晴らしい。しかし、私が持つ富はもっと価値があるかもしれない。私が与える光と音楽、そして芸術は、ただの物質とは違う形で人々の心を豊かにする。彼らの信仰と尊敬こそ、無限の富なのだ。」

その美しい言葉に、神々は心打たれたようにうなずき、賛辞を送った。しかし、その後も議論は続き、誰が最も富を持っているかは決まらなかった。

そこへ、愛と美の女神アフロディーテが現れ、優雅に微笑んだ。

「皆さん、私が思うに、富とは目に見えるものだけではありませんわ。人の愛、恋、情熱、そしてその想いこそが本物の富です。私が存在する限り、人間も神も愛を求め、私に祈りを捧げます。愛は他の富を超えた永遠の力なのです。」

その主張に、神々は再び考え込んだが、ゼウスが静かに席を立ち、彼の審判を告げた。

「なるほど、どの意見にも一理ある。そして全てが富の一部であることも否定できない。だが、私たちが富の真の価値を知りたいのであれば、実際に人間に問うてみるとしよう。」

ゼウスの提案で、神々は姿を消し、地上に降りて富の価値を尋ね歩くことにした。

ある村で、神々はひとりの賢者に出会った。彼は問いに静かに耳を傾け、考え込んだ後に答えた。

「神々よ、私が思うに、真の富とは、人々が共に助け合い、喜びを分かち合える関係の中にあります。大地の恵みも、海の資源も、冥界の宝石も、全ては人々の平和と幸福を生むためにあるのです。」

神々は賢者の言葉に深く感銘を受け、再びオリュンポスへと帰還した。そして、ゼウスが再び宣言する。

「皆よ、今日より、我らがそれぞれの力を一つに合わせ、人間たちの幸福を支えるために富を使おうではないか。」

それぞれの神々が力を合わせ、地上を支えることで、真の豊かさが生まれた。









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