ギリシャ神話

春秋花壇

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創作

不公平の神と人々の涙

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「不公平の神と人々の涙」

かつて、神々の住まうオリュンポス山に「不公平」の神、ディカステスがいた。ディカステスは、全ての者に平等に幸せを分け与える役割を担っていたが、他の神々からは冷たく扱われ、疎まれていた。その理由は、不公平の神である彼が「不公平を生むこと」自体を嫌い、あまりに公平であるために、神々の間に不和をもたらすことが多かったからである。

ある日、ディカステスはゼウスの命で人間界へと降り立った。彼は、どんな人間にも公平に恵みが届くように、収穫の時期に恵みを調整し、災害があればその被害を最小限に抑えるなど、努めて人間たちの暮らしを守ってきた。しかし、ある村に立ち寄った時、ディカステスは驚くべき光景を目にした。

その村は、豊穣の恵みを受け取っているにもかかわらず、人々は争い、怠け、他人を踏みにじることに夢中だった。富める者はますます富み、貧しい者はますます苦しむという「不公平」が蔓延していた。ディカステスは、なぜ自分が与えた公平な恵みが不平等を生んでいるのかと考え込んだ。

彼は村人たちに問いかけた。「なぜ、与えられた恵みを分け合わないのか?」だが、村人たちはディカステスの言葉に耳を傾けず、各々の利益を追い求め続けた。

その中で、一人の貧しい農夫だけが涙ながらにディカステスに訴えた。「私たちがどれだけ働いても、全てを支配する者たちに奪われてしまう。公平なんて、夢のような話だ。」農夫の言葉を聞いたディカステスは胸を痛め、どうすれば本当の公平が実現できるのかを考え始めた。

そこでディカステスは、村人たちに課題を与えた。「これから一つの試練を与える。その試練を通して、お互いに助け合わなければ、全員がその試練に飲み込まれるだろう。」彼は、村に一週間続く大雨を降らせた。村は水に浸かり始め、家畜や作物が流され、誰もが生き残るために協力しなければならない状況に追い込まれた。

始めは富める者も貧しい者も助け合うことで生き延びようとしたが、雨が続くにつれ、再び富める者たちは自らの利益を優先し、助け合いを放棄した。結果として多くの人々が犠牲になり、村はほぼ壊滅状態に陥った。

ディカステスは再び村を訪れ、その様子を見て深く悲しんだ。彼は静かに語りかけた。「不公平はお前たちが生み出しているのだ。私はただ、試練を与えただけだ。」それを聞いた農夫は、再び涙を流して訴えた。「私たちは何も学んでいなかったのかもしれない。あなたの与えた公平の意味を。」

ディカステスは村を去り、人間界から神々の山へと戻った。それ以来、彼は人々に真の公平を教えることを使命として、見守り続けるようになったという。









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