ギリシャ神話

セレネーとエンデュミオン

昔々、ギリシャの神話の時代、月の女神セレネーは夜空に輝く美しさで知られ、彼女の美は神々でさえもうっとりさせました。一方、大地で牧羊をする青年エンデュミオンは、その容姿端麗と美しい音楽の腕前で村人たちを魅了していました。

ある夜、セレネーは月明かりの下、天空を飛びながら大地を見下ろしていました。そこで彼女の目に留まったのが、一群の羊を守るエンデュミオンでした。その清らかな笑顔と優雅な動きに、セレネーの心は強く引かれていきました。

月の女神はエンデュミオンの夢の中に入ることを決意しました。彼女は夜毎、エンデュミオンの夢に現れ、月明かりの下で愛を育んでいきました。エンデュミオンもまた夢の中でセレネーに出会い、その美しさに心を奪われました。

二人の愛は夢と現実の狭間で紡がれ、月が空に輝く夜、エンデュミオンの羊たちは穏やかな夢の中で広がる牧草地を駆けめぐります。セレネーとエンデュミオンの心は、月明かりの中で交わる言葉なくして深まり、愛の絆は永遠のものとなったのでした。

ある晩、セレネーは夢の中でエンデュミオンに尋ねました。「あなたが求めているものは何ですか？」 エンデュミオンは微笑みながら答えました。「私が求めるものは、この夢の中であなたと共に過ごすことです。」 セレネーの心は温かな感動に包まれ、彼女も同じ思いを抱いていました。

夜毎、セレネーとエンデュミオンは夢の中で愛を育み、その愛の力は月明かりの中に宿りました。彼らの愛は大地にも影響を与え、草木や花々は月の神秘的な光に輝きを増し、夜の風は甘い旋律を奏でるようになりました。

しかし、神話の中で幸せな出会いもまた別れが訪れるのが運命です。ある晩、セレネーは夢の中でエンデュミオンに告げました。「私たちの愛は永遠ですが、大地で共に過ごすことはできません。」 エンデュミオンもまた同じ思いを抱きながら、「どんな形でも構わない。あなたと繋がっていられることが幸せです。」と答えました。

その後、セレネーは夢の中から離れ、月の女神としての役割に戻りました。しかし、エンデュミオンの心には彼女との美しい思い出が残り、月明かりの下で彼の羊たちはいつも平和で幸せな夢を見ることができました。セレネーの愛は永遠に続く月明かりの中に息づいていたのでした。