このユーザは規約違反のため、運営により削除されました。 前科者みたい 小説家になろうを腐ったみかんのように捨てられた 雑記帳

冬の日、お好み焼きを

冬の日、お好み焼きを

12月16日、朝から冷たい風が枯野を駆け抜け、空には鷹が悠々と舞っていた。冬木には薄く雪が積もり、庭のポインセチアも寒さに負けじと鮮やかな赤を見せている。そんな中、家の冬座敷では、サクラが膝掛にくるまりながら、テレビの料理番組を見ていた。

サクラは8歳。冬籠りがちになるこの季節、家の中で過ごすことが多かったが、今日は何やら特別な意気込みがある様子だ。

「よーし、今日こそお好み焼きを作るぞ！」

突然の宣言に、冬座敷の暖炉のそばで本を読んでいたお母さんが顔を上げた。
「お好み焼き？作るの？」
「うん！この前テレビで見て、ずっと作ってみたかったんだもん！」

サクラの目はキラキラと輝いている。お母さんは少し考えたあと、優しく笑って言った。
「じゃあ、一緒に作ってみましょうか。でも、お好み焼きは混ぜるのが大事だからね。しっかり頑張れる？」
「もちろん！」

準備開始

台所に移動したサクラは、エプロンをつけ、カーディガンの袖をまくり上げた。小さな手で材料をテーブルに並べ始める。キャベツ、卵、小麦粉、山芋、だし……そして、冷蔵庫からお母さんが取り出してくれたのは、大きなウインナーだった。

「これも入れちゃおうか。サクラの好きなウインナー。」
「やった！ウインナー入りお好み焼きだ！」

お母さんが材料の分量を教えながら、サクラは一生懸命に混ぜる。キャベツを刻む手つきはぎこちないが、真剣そのもの。途中でお母さんが手を貸しながら、なんとか生地が完成した。

「お好み焼きの生地って、なんだか雪みたいにふわふわだね。」
サクラがそう言うと、お母さんは微笑んで答えた。
「そうね。上手に焼けたら、きっと冬桜みたいにふわっと広がるわよ。」

初めての挑戦

熱したホットプレートの上に、サクラが初めてのお好み焼きを広げる。じゅわっと音がして、部屋に香ばしい香りが漂い始めた。サクラは緊張した面持ちで、菜箸を手にしている。

「まだひっくり返しちゃだめだよ。焦らず、しっかり焼いてね。」
お母さんのアドバイスを聞きながら、サクラはじっと焼ける様子を見つめる。やがて、いい具合に焼き色がついたころ、お母さんが声をかけた。
「さて、ここが一番の勝負どころ。サクラ、ひっくり返してみる？」

「うん、やってみる！」

小さな手でフライ返しを持ち、そっと生地の下に差し込む。ドキドキしながら一気に返そうとした瞬間――

「うわっ！」

お好み焼きが少し崩れてしまった。でも、なんとか形は保たれている。サクラは少ししょんぼりした顔をしたが、お母さんが励ました。
「初めてにしては上出来よ。焼けたら、形なんて気にならないわ。」

楽しい食卓

焼き上がったお好み焼きに、ソースを塗り、青のりとかつお節をたっぷりとかける。そして、ウインナーは花の形に切り込みを入れて焼いたものをトッピングした。かつお節が踊る様子に、サクラは思わず笑みを浮かべた。

「わあ、すごい！お店で食べるのと同じみたい！」

出来上がったお好み焼きを家族全員で囲み、いよいよ試食の時間だ。サクラは一口食べて、目を輝かせながら言った。
「ふわふわ！美味しい！自分で作ると、もっと美味しく感じるね。」

お父さんも「サクラが作ったお好み焼きが食べられる日が来るなんて！」と大げさに喜んでみせた。みんなが笑顔になり、温かい雰囲気に包まれた食卓。

サクラは満足げにお好み焼きを頬張りながら、「また作りたいな」と呟いた。その声に、お母さんはにっこりと頷き、次は何を作ろうかと話し始めた。

冬の日の小さな幸せ

その夜、冬籠りのように家で過ごした一日は、特別な思い出になった。台所の片隅には、まだ少しだけお好み焼きの香りが残っている。サクラは布団に入ると、ふわふわのお好み焼きを思い出しながら幸せそうに眠りについた。

外では、雪が静かに舞い落ちている。その雪は、まるでサクラの挑戦を祝福するかのように、庭の冬木やポインセチアをそっと覆っていた。

冬の寒さの中でも、家族の温かさが心を包み込む。そんな小さな幸せが広がった一日だった。