このユーザは規約違反のため、運営により削除されました。 前科者みたい 小説家になろうを腐ったみかんのように捨てられた 雑記帳

エホバが見ている

「エホバが見ている」

サクラはふと、机に向かって座った。涙で腫れた目は画面の文字を追うのもやっとだったが、集会で読まれた聖句が心に響いて離れなかった。

「エホバは、ご自分に仕える人たちの道を知っておられる」（詩編37:18）

画面の向こうで静かに語られる長老の声が、彼女の心の中で繰り返される。まるで、その言葉が自分のために選ばれたかのように思えた。

削除された小説のことを思い出すたび、胸が締めつけられる。長い時間をかけて、全力を注いで書き上げた作品。それはただの物語ではなかった。彼女自身の思いや、祈りが込められていたのだ。それなのに、一瞬の判断で消されてしまった。

「どうして……」
また涙がこぼれそうになり、サクラはそっと目を閉じた。

そんな時、祖母の声が脳裏に蘇る。
「エホバはね、私たちのすべてを知っていて、つらい時にはもっと近くにいてくださるのよ」

その言葉を胸に、彼女はもう一度聖書を開いた。
「エホバは私たちの努力を見ていてくださる。誇りに思ってくれる……本当にそうなのかな」
そう自問しながらも、少しだけ心が軽くなるのを感じた。

突然、携帯の通知が鳴った。仲間からのメッセージだった。
「サクラ、大丈夫？集会であなたの顔を見て、少し心配になって……何か力になれることがあれば言ってね」

そのメッセージを読み、また涙が溢れた。しかし、今度の涙は、少し違っていた。

「エホバは本当に知っていてくださるんだ……」
彼女は小さな声でそうつぶやき、携帯を握りしめた。

その夜、サクラはパソコンを開き、新しい物語を書き始めた。タイトルはまだ決まっていない。ただ、「エホバが私たちを見ている」というテーマだけが頭にあった。

「どんなに悲しいことがあっても、エホバが私たちを支えてくれる。そんなことを伝えられる物語を書きたい」

一文字一文字を打つたびに、心が少しずつ温かくなっていった。
彼女は、エホバが自分の努力を見てくださっていると信じ、もう一度立ち上がる力を得たのだった。

終わり