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削除されても、消えないもの
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「削除されても、消えないもの」
サクラはもう一度、あの日の記録を読み返した。
「24hポイント 282,449pt、小説 1位、現代文学 1位……」
一文字一文字が心に突き刺さる。削除された今となっては、数字でしか残っていないけれど、確かにその瞬間は輝いていた。それは、あの日々の努力の証であり、言葉たちが輝いた一瞬だった。
夜遅くまで机に向かい、インスピレーションが湧かない日は本を読み漁り、自分の中の感情を振り絞って書いた小説。境界性パーソナリティー障害について、少しでも正確に描きたくて、何度も資料を調べた。どのキャラクターも、自分の一部のように愛していた。
でもその結果が、「削除」。
「どうしてなんだろう?」サクラは何度も自問した。
カテゴリーエラー、規約違反、そんな言葉が画面に並んでいたけれど、それでも納得するのは難しい。恋愛要素が少ない作品だと分かっていても、分類されたカテゴリーを拒絶されることが、何よりもつらかった。
母がふと部屋を覗き込んだ。
「またその記録を見てるの?」
サクラは頷いた。母はそっと隣に座り、彼女の手を握った。
「その数字はあなたが頑張った証拠よ。削除されたからって、それがなかったことにはならないわ」
「でも、もう一度書ける気がしない。頑張っても、また消されたらって思うと……」
母は小さく笑った。
「ねえ、サクラ。数字じゃなくて、どれだけの人がその小説を読んで『よかった』と思ったか、それを考えてみて」
そう言われて、サクラは初めて気付いた。
お気に入り登録してくれた人たちのコメント、毎日更新を楽しみにしていたという言葉、病気の描写がリアルで共感したというメッセージ。
サクラは画面を閉じた。記録はもういい。消えてしまった物語は、たしかにもう戻らないかもしれない。でも、その物語が誰かの心に何かを残したこと、それは消えない。
「もう一度、書こうかな」サクラはそっと呟いた。
母は微笑み、彼女を抱きしめた。
「大丈夫。あなたなら、きっとまた素敵な物語を書けるわ」
削除された小説は消えたけれど、それを紡いだ時間と努力は、彼女の心にしっかりと刻まれている。そしてそれは、これからも彼女を支える「勲章」だ。
終わり
また新しい物語を紡ぐ力を信じて──。
24h.ポイント 282,449pt 5,604 小説 1 位 / 193,035件 現代文学 1 位 / 8,533件
お気に入り 334
初回公開日時 2024.11.19 20:03
更新日時 2024.12.11 17:42
初回完結日時 2024.11.19 20:21
文字数(公開) 50,631
文字数(非公開) 27
24h.ポイント 282,449 pt (1位)
週間ポイント 157,975 pt (68位)
月間ポイント 1,263,575 pt (29位)
年間ポイント 1,263,575 pt (494位)
累計ポイント 1,450,157 pt (3,517位)
サクラはもう一度、あの日の記録を読み返した。
「24hポイント 282,449pt、小説 1位、現代文学 1位……」
一文字一文字が心に突き刺さる。削除された今となっては、数字でしか残っていないけれど、確かにその瞬間は輝いていた。それは、あの日々の努力の証であり、言葉たちが輝いた一瞬だった。
夜遅くまで机に向かい、インスピレーションが湧かない日は本を読み漁り、自分の中の感情を振り絞って書いた小説。境界性パーソナリティー障害について、少しでも正確に描きたくて、何度も資料を調べた。どのキャラクターも、自分の一部のように愛していた。
でもその結果が、「削除」。
「どうしてなんだろう?」サクラは何度も自問した。
カテゴリーエラー、規約違反、そんな言葉が画面に並んでいたけれど、それでも納得するのは難しい。恋愛要素が少ない作品だと分かっていても、分類されたカテゴリーを拒絶されることが、何よりもつらかった。
母がふと部屋を覗き込んだ。
「またその記録を見てるの?」
サクラは頷いた。母はそっと隣に座り、彼女の手を握った。
「その数字はあなたが頑張った証拠よ。削除されたからって、それがなかったことにはならないわ」
「でも、もう一度書ける気がしない。頑張っても、また消されたらって思うと……」
母は小さく笑った。
「ねえ、サクラ。数字じゃなくて、どれだけの人がその小説を読んで『よかった』と思ったか、それを考えてみて」
そう言われて、サクラは初めて気付いた。
お気に入り登録してくれた人たちのコメント、毎日更新を楽しみにしていたという言葉、病気の描写がリアルで共感したというメッセージ。
サクラは画面を閉じた。記録はもういい。消えてしまった物語は、たしかにもう戻らないかもしれない。でも、その物語が誰かの心に何かを残したこと、それは消えない。
「もう一度、書こうかな」サクラはそっと呟いた。
母は微笑み、彼女を抱きしめた。
「大丈夫。あなたなら、きっとまた素敵な物語を書けるわ」
削除された小説は消えたけれど、それを紡いだ時間と努力は、彼女の心にしっかりと刻まれている。そしてそれは、これからも彼女を支える「勲章」だ。
終わり
また新しい物語を紡ぐ力を信じて──。
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更新日時 2024.12.11 17:42
初回完結日時 2024.11.19 20:21
文字数(公開) 50,631
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24h.ポイント 282,449 pt (1位)
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