このユーザは規約違反のため、運営により削除されました。 前科者みたい 小説家になろうを腐ったみかんのように捨てられた 雑記帳

お盆の夜

「お盆の夜」

毎年夏になると、町の外れにひっそりと佇む古い家が特別な意味を持つ。古びたその家は、町の人々が恐れて避ける場所であり、お盆の時期になると特にその恐怖が増す。そこには、一度も行ったことがない人はないと言われるほどの不吉な伝説があった。

主人公のゆうこは、家族と一緒にお盆の帰省でその町にやってきた。彼女の祖父母の家はその古い家から少し離れた場所にあり、昔からの言い伝えを気にしないゆうこは、気楽に帰省の準備をしていた。しかし、今年の夏は特に暑く、町の雰囲気もいつもとは違っていた。お盆の夜が近づくにつれ、何か不安な感じが漂っていた。

お盆の夜、町では迎え火を焚き、祖先の霊を迎える準備が整えられていた。ゆうこは家族と一緒に祖父母の家で過ごしていたが、なぜかその古い家が気になって仕方がなかった。夕食が終わった後、家族が夜の準備をしている間に、彼女は一人で散歩に出かけることにした。

町の外れに立つその家は、外見こそ古びていたが、内側には何か古い時代の悪意が感じられた。ゆうこは好奇心から、その家の前に立ち止まり、暗く沈んだ家の中を覗き込んでいた。窓ガラスが割れ、長い間放置された家具が埃をかぶっている中で、彼女はふと気配を感じた。

「誰かいるの？」ゆうこは静かに呼びかけたが、返事はなかった。彼女は家の中に入る決心をし、鉄製の扉を押して中に足を踏み入れた。廊下はまるで時間が止まったように静まり返っており、ゆうこは徐々に奥へと進んでいった。

家の中に入ると、異常な冷気が漂っており、胸の奥に寒気を感じた。懐中電灯を照らしながら進むと、途中で古い鏡がひとつ置かれているのが目に入った。その鏡は厚い埃に覆われていたが、ゆうこはなぜかその鏡を覗き込むことを避けられなかった。鏡の中には、うっすらと何かが映り込んでいるようだったが、よく見えなかった。

「こんなところで何をしているんだ？」突然、後ろから声がした。驚いたゆうこは振り向くと、そこには町の老人、松本さんが立っていた。彼の顔は真剣そのもので、普段の穏やかな姿とはまるで違っていた。

「松本さん、どうしてここに？」ゆうこは困惑しながら問いかけた。

「この家には近づいてはいけない。」松本さんは低い声で言った。「お盆の夜、この家では何かが目覚めるのだ。」

「何が目覚めるんですか？」ゆうこは問い詰めた。

松本さんは一瞬ためらい、やがて語り始めた。「この家の過去には、数百年前に生きた家族がいた。彼らは数多くの罪を犯し、町を恐怖に陥れていた。家族が亡くなった後、彼らの霊はこの家に閉じ込められ、毎年お盆の夜になると現れると言われている。」

その話を聞いたゆうこは、恐怖と疑念が入り混じった気持ちで松本さんを見た。「それが本当なら、どうすればいいんですか？」

「霊たちに気づかれないようにするのが一番だ。彼らの気配を感じると、目が合ってしまうことがある。」松本さんはゆうこを見つめながら言った。「今すぐにこの家を出るんだ。」

ゆうこは急いで家を出ようとしたが、その時、廊下の奥から不気味な声が聞こえてきた。「出ていけ、出ていけ…」

彼女の心臓は激しく打ち、足がすくんで動けなくなった。松本さんがゆうこの手を引いて家の外に連れ出した。外に出た瞬間、ゆうこは深く息を吐き、ホッとした気持ちと恐怖で震えていた。

その後、ゆうこは家族と一緒に祖父母の家に戻り、お盆の夜を静かに過ごした。町の人々は、彼女の体験を聞いても信じようとはしなかったが、ゆうこはその夜の出来事を決して忘れることはなかった。古い家が持つ恐怖と、そこに閉じ込められた霊たちの存在は、彼女にとって深い影を落とすものとなった。

お盆が過ぎた後、その家は再び町の人々に忘れ去られ、静かに佇んでいる。だが、ゆうこにとっては、あの家の影が永遠に心に刻まれることとなり、夜になるといつも、あの不気味な声が響いてくるのではないかと、恐れてしまうのであった。