このユーザは規約違反のため、運営により削除されました。 前科者みたい 小説家になろうを腐ったみかんのように捨てられた 雑記帳

どうして俺は俺なんだろう 11

「よし、気合い入れてキャッチいきまーす♪」

新型感染症のせいで人通りのかなり少なくなった歌舞伎町。

カラフルなネオンだけが無機質な冬の街並みを彩る。

俺はお気に入りのユニクロのロングコートを小粋に着崩し

ナンパに出かける。

おいおい、アベックばかりじゃん。

ここで目をつむり、しばし黙想。

(大丈夫、うまくいくに決まってる。LINE３件交換するんだ)

家で、美しいお辞儀の仕方を何度も練習した。

体を起こす時に時間をかけてゆっくりと優雅に。

「こんばんは、はじめまして、あなたのことがもっと知りたいので連絡先を教えてください」

ストレートに決める。

素直が一番。

真心は必ず通じるんだ。

歩きながら、話しかける姫様候補を探す。

保険のセールスの亡母も新規開拓は毎日していた。

だから、俺も頑張るんだ。

失敗すればするほど、めっちゃ恥ずかしい。

波長の合った人が必ずいる筈なんだ。

インナーワードが嵐のように飛び交う。


挑戦をして、失敗してもまた次の挑戦のデータ

失敗した。今度はもっとうまく失敗しよう。

沢山人よりも失敗する。でも成し遂げたいからまたやる。あとは失敗を美化する

おお、綺麗なお辞儀が出来たぜ。やったね。

どんどん笑顔になってくる。

100点、100点、100点だったら、くだらないテストしか受けていない証拠でしょうよ

失敗しているのに、恥ずかしい筈なのに、心から楽しくなっていく。

どんな姫様に出会えるかな。

今日のトラディッショナルなスタイルは健康的で清潔感があるかな。

つける香水も上半身と下半身で変えてみた。

上半身はシャワーコロン。

檸檬の香りで爽やかに。

下半身は、ムスクの入った少しセクシーな奴。

靴もしっかり磨いたリーガルのタッセルスリップオン。

どうだい、メンクラのモデルみたいだろう。

自画自賛。

しっかし、流石２月の東京。

関東の空っ風。

「さむっ」

思わず背中を丸めたくなる。

第三胸椎から第三腰椎がコートを着ているのに

シャイに寒さを感じる。

そりゃあそうだ。一年で一番冷える季節だもんな。

立春とは名ばかりで梅がようやくほころび始めた２月。

沈丁花でさえまだ蕾が膨らみ始めたばかり。

背筋を伸ばすんだ。

お尻の穴をしめるんだ。

ええ男になっていく。

黒の上下のスーツにグリーンのレジメンタルタイ。

カフスとネクタイピンは２月の誕生石のアメジストで決めてみた。

アメジストがネクタイの反対色なので、くっきり浮きだってさわやかにマッチしてる。

亡母は、東京の二月の風にびっくりしたって言ってたけど、

耐えがたきを耐え、忍び難きを忍び自己滅却。

これぞ押忍の精神なり。

なんとか、ぎりぎり毎日一件以上の指名も頂けている。

俺は俺を愛する姫様たちのグレートプレゼンターに育てていく。

問題は、自分の母親と同じくらいの年齢の姫様を

本かのとして自己暗示できるかだよな。

う～ん。如月陽翔(きさらぎ　はると)は幻惑に包まれた。

コマンド……。

ホストの仕事も無事に終わり、夜明け前の彼は誰時の公園で、

河津桜を見物している。

俺的には、もう少し薄いベビーピンクが好きなんだけど、

まあ、これはこれで初潮を迎えた少女のようにあでやかでかわいいかな。

コンビニで一ノ蔵　辛口本醸造を買った。

散々、ホストクラブでお酒を飲んだのになんでまたと思うかも知れないが、

小さい時に亡母に、夜桜見物にいろんなところに連れて行ってもらった。

「神様はすごいね。こんなにたくさんの色がなくても生きて行けるのに

人間が楽しめるように見分けがつくように畏怖の念を抱くほどに

愛を込めて作ってくださったのよね」

沢山の色があるように沢山の人間がいる。

俺は俺色を作っていく。


0か1か
白か黒か
光か影か
いいか悪いか
オールオアナッシングで
傲慢にも
神の役を演じ
何時も自分を裁いてた
自分自身を切り刻んで……

お疲れさま
辛かったね
偏った思考パターンから
解放されて行くね

芽が出て
伸びて
膨らんで
花が咲き
実を付ける
ああ　今が一番幸せ
ありがとうございます pic.twitter.com/2cXnyvSaim


今夜はスノームーン。

今宵も月は冴え冴えとして鏡花水月。

大和言葉に添えて俺の心を映し出していく。