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ロリータファッション ゴールデンエイジ
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「だるまさんがころんだ」
みゆが急いで立ち止まる。
「だるまさんがころんだ」
あきらは、ぱっと振り向く。
みゆは、よろけそうになりながら必死でこらえる。
「だるまさんがころんだ」
また、あきらは振り返る。
みゆは、左足を出しそうになって慌てて引っ込めた。
その途端、バランスを失ってよろけそうになってしまう。
「みゆ、動いた」
「はーい」
こんどは、みゆが鬼。
この遊びは走ったり止まったりする機敏な動作が必要です。また、鬼が振り向く瞬間を見逃さないようにする集中力や振り向いた瞬間に動くと言う判断力など、運動に必要な総合的な動きを鍛えられる。
運動神経は生まれつきと言うイメージがありますが、実は子どもの成長期には、神経系が成人に近いレベルまで発達する「ゴールデンエイジ」と呼ばれる時期がある。
このゴールデンエイジとその前のプレゴールデンエイジの過ごし方によって運動神経の良さが決まる。
雪がいっぱい積もった田んぼは、一面の銀世界。
大運動場だ。
自由に飛んだりはねたりできる。
あきらおにいちゃんと、おすもうをとったり、じゃれあったり、
かけっこしたり、楽しく体を動かしながら遊んでいた。
みゆは今、5歳。
あきらは、大学1年生。
あきらは、本気でみゆをお嫁さんにもらおうと考えていた。
双方の親の許可もとってある。
源氏物語の紫の上のように、
あきらの好みの妻に育てようと思っている。
みゆが着ているコートは、淡いピンクでふちに白いもふもふがついている。
うさぎさんのお耳がフードになっていて、
ロリータ好きにとってはたまらない一品。
「え、どうせ、年を取ったらロリータじゃないから、
育てても無駄だって?」
そうかもしれない。
そうじゃないかもしれない。
その時に考えればいいじゃないか。
あきらは、脱がせて楽しむロリコンではなくて、
着せて楽しむロリコンなのだ。
手袋も、手の甲が淡いピンクで掌が白。
手首の所に、卵色のぼんぼんがついている。
頭のおリボンは、白地にピンドットのうすーいうすーいピンク。
今日は、淡いピンクと白と卵色で決めてみた。
みゆはときたま、癇癪を起こす。
それは、愛着障害で人との距離のとり方がわからなくて
上手に出来ない自分と仲良く出来ないとき。
あきらはそんなみゆを慈しむように、優しく育んでいる。
春の日の縁側のように、
まったりと明るい日差しで包んでやれたらと願っている。
堅雪の表面がざらめのようにキラキラと光る。
「あきらにいちゃん、ばたんしたい」
「うん、ばたんしよう」
ばたんは、あきらとみゆが考えた遊びで、
目いっぱい走って、雪の上にばたんと寝転がる。
雪に上に倒れこむと、何もかもが真っ白になり、
過去の罪まで消えていくような気がする。
この村は、二階から出入りするほど豪雪地域だった。
翼がないのに飛び,手がないのに打ち,目がないのに見るものは何か。
―中世から語り継がれている,白い竜についてのなぞなぞ。
答えは『雪崩』
でも、あきらもみゆもまだ雪崩を見たことはなかった。
海の幸、山の幸に恵まれているのに、
交通の便が悪いからか、過疎になっていく。
「いちについてヨーイどん」
必死で駆け出すみゆの足跡が雪の上に点々とついて、
道になっていく。
まるで、高村光太郎の道程の詩のように……。
僕の前に道はない
僕の後ろに道は出来る
ああ、自然よ
父よ
僕を一人立ちにさせた廣大な父よ
僕から目を離さないで守る事をせよ
常に父の氣魄を僕に充たせよ
この遠い道程のため
この遠い道程のため
みゆが走りつかれたのか、雪の上にばたーん。
あきらは、高村光太郎の詩を暗誦する。
みゆが真似をする。
2.3回繰り返すと、驚いたことに
一人でみゆは暗誦した。
「賢いな。覚えたのか」
「うん」
また、暗誦してる。
「あきらおにいちゃん、みゆ、おなかすいた」
「そうか、何が食べたい?」
「何かあるかな」
みゆの家は、とても貧乏だ。
大きな家なのに、現金がない。
「おにいちゃんちに行く?」
「うん、いく」
みゆはあきらの家に行くのは初めてだった。
「あきらにいちゃんち、お屋敷みたい」
「お屋敷か」
あきらは、ふと、
「親は子供を選べない。子供も親を選べない」
と、思った。
とりあえず、お手伝いさんに頼んで食事を用意してもらった。
旅館の食事のようにお膳に載せて出された食事を見て、
「あきらおにいちゃん、これ、誰の?」
「みゆが全部食べていいんだよ」
「鷹穂に残さなくて平気?」
「うん、全部食べていいんだよ」
「残したら叱られるの?」
「ううん、叱られないよ」
「でも、全部食べられないから、
初めから食べられるブンだけとるの」
食べ物を残すということが許されなかったんだろうな。
食べられないほど、自分の皿に入れることが罪だったんだろうな。
あきらは、家によってこんなにも食事一つにしても
考え方が違うんだということを痛感した。
みゆは、手を洗って正座すると、手を合わせて
「頂きます」
と、食べ始める。
「何で頂きます?」
「作ってくれた人やお百姓さん」
「ほー」
「あと、命」
「何の命?」
「食べ物の命」
あきらが、みゆを自分の妻にしようと思った理由が
なんとなくわかった。
貧乏でも、愛着障害でも、この子には
他の子にはないスピリットがある。
それは、森羅万象に対する感謝なのかもしれない。
5歳の子に教わるってことがあるんだね。
あきらは、ますます、みゆが大好きになった。
みゆが急いで立ち止まる。
「だるまさんがころんだ」
あきらは、ぱっと振り向く。
みゆは、よろけそうになりながら必死でこらえる。
「だるまさんがころんだ」
また、あきらは振り返る。
みゆは、左足を出しそうになって慌てて引っ込めた。
その途端、バランスを失ってよろけそうになってしまう。
「みゆ、動いた」
「はーい」
こんどは、みゆが鬼。
この遊びは走ったり止まったりする機敏な動作が必要です。また、鬼が振り向く瞬間を見逃さないようにする集中力や振り向いた瞬間に動くと言う判断力など、運動に必要な総合的な動きを鍛えられる。
運動神経は生まれつきと言うイメージがありますが、実は子どもの成長期には、神経系が成人に近いレベルまで発達する「ゴールデンエイジ」と呼ばれる時期がある。
このゴールデンエイジとその前のプレゴールデンエイジの過ごし方によって運動神経の良さが決まる。
雪がいっぱい積もった田んぼは、一面の銀世界。
大運動場だ。
自由に飛んだりはねたりできる。
あきらおにいちゃんと、おすもうをとったり、じゃれあったり、
かけっこしたり、楽しく体を動かしながら遊んでいた。
みゆは今、5歳。
あきらは、大学1年生。
あきらは、本気でみゆをお嫁さんにもらおうと考えていた。
双方の親の許可もとってある。
源氏物語の紫の上のように、
あきらの好みの妻に育てようと思っている。
みゆが着ているコートは、淡いピンクでふちに白いもふもふがついている。
うさぎさんのお耳がフードになっていて、
ロリータ好きにとってはたまらない一品。
「え、どうせ、年を取ったらロリータじゃないから、
育てても無駄だって?」
そうかもしれない。
そうじゃないかもしれない。
その時に考えればいいじゃないか。
あきらは、脱がせて楽しむロリコンではなくて、
着せて楽しむロリコンなのだ。
手袋も、手の甲が淡いピンクで掌が白。
手首の所に、卵色のぼんぼんがついている。
頭のおリボンは、白地にピンドットのうすーいうすーいピンク。
今日は、淡いピンクと白と卵色で決めてみた。
みゆはときたま、癇癪を起こす。
それは、愛着障害で人との距離のとり方がわからなくて
上手に出来ない自分と仲良く出来ないとき。
あきらはそんなみゆを慈しむように、優しく育んでいる。
春の日の縁側のように、
まったりと明るい日差しで包んでやれたらと願っている。
堅雪の表面がざらめのようにキラキラと光る。
「あきらにいちゃん、ばたんしたい」
「うん、ばたんしよう」
ばたんは、あきらとみゆが考えた遊びで、
目いっぱい走って、雪の上にばたんと寝転がる。
雪に上に倒れこむと、何もかもが真っ白になり、
過去の罪まで消えていくような気がする。
この村は、二階から出入りするほど豪雪地域だった。
翼がないのに飛び,手がないのに打ち,目がないのに見るものは何か。
―中世から語り継がれている,白い竜についてのなぞなぞ。
答えは『雪崩』
でも、あきらもみゆもまだ雪崩を見たことはなかった。
海の幸、山の幸に恵まれているのに、
交通の便が悪いからか、過疎になっていく。
「いちについてヨーイどん」
必死で駆け出すみゆの足跡が雪の上に点々とついて、
道になっていく。
まるで、高村光太郎の道程の詩のように……。
僕の前に道はない
僕の後ろに道は出来る
ああ、自然よ
父よ
僕を一人立ちにさせた廣大な父よ
僕から目を離さないで守る事をせよ
常に父の氣魄を僕に充たせよ
この遠い道程のため
この遠い道程のため
みゆが走りつかれたのか、雪の上にばたーん。
あきらは、高村光太郎の詩を暗誦する。
みゆが真似をする。
2.3回繰り返すと、驚いたことに
一人でみゆは暗誦した。
「賢いな。覚えたのか」
「うん」
また、暗誦してる。
「あきらおにいちゃん、みゆ、おなかすいた」
「そうか、何が食べたい?」
「何かあるかな」
みゆの家は、とても貧乏だ。
大きな家なのに、現金がない。
「おにいちゃんちに行く?」
「うん、いく」
みゆはあきらの家に行くのは初めてだった。
「あきらにいちゃんち、お屋敷みたい」
「お屋敷か」
あきらは、ふと、
「親は子供を選べない。子供も親を選べない」
と、思った。
とりあえず、お手伝いさんに頼んで食事を用意してもらった。
旅館の食事のようにお膳に載せて出された食事を見て、
「あきらおにいちゃん、これ、誰の?」
「みゆが全部食べていいんだよ」
「鷹穂に残さなくて平気?」
「うん、全部食べていいんだよ」
「残したら叱られるの?」
「ううん、叱られないよ」
「でも、全部食べられないから、
初めから食べられるブンだけとるの」
食べ物を残すということが許されなかったんだろうな。
食べられないほど、自分の皿に入れることが罪だったんだろうな。
あきらは、家によってこんなにも食事一つにしても
考え方が違うんだということを痛感した。
みゆは、手を洗って正座すると、手を合わせて
「頂きます」
と、食べ始める。
「何で頂きます?」
「作ってくれた人やお百姓さん」
「ほー」
「あと、命」
「何の命?」
「食べ物の命」
あきらが、みゆを自分の妻にしようと思った理由が
なんとなくわかった。
貧乏でも、愛着障害でも、この子には
他の子にはないスピリットがある。
それは、森羅万象に対する感謝なのかもしれない。
5歳の子に教わるってことがあるんだね。
あきらは、ますます、みゆが大好きになった。
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