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酔って候
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「お酒買ってあるから」
「ありがとう」
見ると、鴨鶴が1斗。
一升瓶10本。
12月31日、新幹線で広島に向かう。
前日まで仕事だったから、
なんとか父母と紅白を一緒に楽しみたかった。
予約はしていないから、当然、座る場所もない。
ぐすん。
新聞をひいて座る。
お土産沢山買ったよ。
母さまの紬の着物も買ったよ。
父母に渡す現金のお小使いもたくさんあるよ。
わたしはがんばってよく働いた。
あの頃は、自分をそれほど嫌いではなかった。
着てる洋服は、黒の3ピース。
赤のブラウス、白のほうがよかったな。
黒のパンプス。
全部どこかのブランド品。
オーデマ・ピゲの腕時計。
お客様が買ってくれた。
だけど、わたしはそんなものに興味がない。
隣の簡易椅子に座ってた人が、
「どうぞ」
といってくれる。
傲慢の風船を膨らませた私は、
「ありがとう」
と、一言。
でも、ちっとも嬉しくない。
好きな人と一緒なら、
たとえ、この状況で新聞の上に
座っても楽しかっただろう。
お世辞と今だけの愛にまみれて
わたしはどんどん高飛車になっていく。
なんて、いやな女。
父は多分、そんなものを求めていない。
ねー。
みんな賢いよね。
ぼっち生活も、わたしが選んだのよね。
だから、わたしが責任を取る。
酔っ払って何言ってるのかわからない。
ごめんなさい。
でーーーー。
新幹線の通路で、簡易椅子を譲ってもらったんだけど、
すわり心地が言い訳でもなく、
私はお礼を言って、荷物を持って移動していく。
ほっといて欲しい。
今はつらくても、家族に会えるんだから。
ちゃんと働いて、あいにいけるんだから。
前のように、家出ばかりして、
警察にお世話になって、
気がついたら保護センターじゃないんだから。
車窓から、富士山が見えるはずなのに、
見るゆとりさえなかった。
飛ぶように流れる景色。
ああ、こうやって私は大人になっていくのね。
大人は汚い。
染まりたくない。
だけど、一番汚かったのはわたしなのかもしれない。
やっとたどり着いた広島は、
父母の仮の宿。
わたしが悪いのだ。
3回目の退学で、
ついてきてしまった両親。
田畑も人に貸してしまった。
彼らは戻る家がなかったのかもしれない。
物質的には、2軒も3軒もあったのだが、
無医村じゃあねー。
没落セレブの家計は苦しい。
「あのままいくと、学費も払えなかった」
と、慰めてくれる。
ああ、パンツスーツにすればよかった。
みんな、必死なんだよね。
出稼ぎだったり、
家族に一年ぶりに逢いに帰る人だったり、
今だったら、想像して楽しくてしょうがない光景。
でも、あの時のわたしには
まるで競走馬のゲートのように思えた。
ちょっとでも、気を緩めると食われてしまう。
生きるか死ぬかの真剣勝負。
必死に高みを目指して、
朝日、毎日、読売、日経を読むのが日課。
お座敷に呼んでくださるのは、
政財界の名だたるかたがた、
素敵なおじ様たちばかり。
毎日毎日、うんざりするほどのお稽古。
日本舞踊、長唄、清元、常磐津、鳴り物。
働けば働くほど借金が増えていく。
何なの、これは。
借金なんてなかったはずなのに。
気がつくと、ゆうに1000万をこえていた。
ブラック企業だって。
笑わせるな。
あんたたちが不平を言っている親たちは、
休みたいとか遊びたいとか
思ったら死ねといわれて生きてきた人たちなんだ。
支離滅裂。
それと冒頭の鴨鶴とどう関係があるのよ。
まーなんと、わたしは
31日夜から1月5日夜までの間に、
その1斗を飲み干してしまったのである。
豪快だねー。
やるねー。
ただのアルコール依存症でしょう。
18歳なのに。
大田川は優しく流れる。
甥っ子と一緒にお風呂に入る。
「おばちゃん、おっぱい大きいね」
花の18歳におばちゃんいうなーw
がりがりにやせているのに、
おっぱいが大きいって12歳上の姉は、
どんだけ貧乳なの。
父様と一緒に食べたおすし、
おいしかったなー。
天国にいったら会えるのかな。
大年
大晦日
年越
大歳
除夜の鐘
除 夜
除夜詣
晦日蕎麦
年の夜
年越蕎麦
札納
梟
冬休
年の市
「ここに、お嫁さんを探しに来てるんじゃないんだから。
お客様は……」
「夢を売って、楽しんでいただいてお金を貰うの」
要は嘘をつけと。
村始まって以来の悪は、
大人の悪知恵に太刀打ちできない。
小さなときから見てきた水商売は
こんなに大変なことだったのか。
痛感させられる。
いつのまにか、子供がいて親に預けていることになっていた。
しかも、どの人にその話をしたのかわからなくなる。
悪になりきれない少女は、ため息をつく。
嘆息する。あえぐ。泣く。叫ぶ。
そんな気持ちが、飲めもしないお酒に向かわせたのだろう。
月日は流れ、急流も瀞となり、淀み、干からびていく。
盛者必衰の如し。
ああ、今が幸せ。
すばらしい今日一日に、
ありがとうございます。
「ありがとう」
見ると、鴨鶴が1斗。
一升瓶10本。
12月31日、新幹線で広島に向かう。
前日まで仕事だったから、
なんとか父母と紅白を一緒に楽しみたかった。
予約はしていないから、当然、座る場所もない。
ぐすん。
新聞をひいて座る。
お土産沢山買ったよ。
母さまの紬の着物も買ったよ。
父母に渡す現金のお小使いもたくさんあるよ。
わたしはがんばってよく働いた。
あの頃は、自分をそれほど嫌いではなかった。
着てる洋服は、黒の3ピース。
赤のブラウス、白のほうがよかったな。
黒のパンプス。
全部どこかのブランド品。
オーデマ・ピゲの腕時計。
お客様が買ってくれた。
だけど、わたしはそんなものに興味がない。
隣の簡易椅子に座ってた人が、
「どうぞ」
といってくれる。
傲慢の風船を膨らませた私は、
「ありがとう」
と、一言。
でも、ちっとも嬉しくない。
好きな人と一緒なら、
たとえ、この状況で新聞の上に
座っても楽しかっただろう。
お世辞と今だけの愛にまみれて
わたしはどんどん高飛車になっていく。
なんて、いやな女。
父は多分、そんなものを求めていない。
ねー。
みんな賢いよね。
ぼっち生活も、わたしが選んだのよね。
だから、わたしが責任を取る。
酔っ払って何言ってるのかわからない。
ごめんなさい。
でーーーー。
新幹線の通路で、簡易椅子を譲ってもらったんだけど、
すわり心地が言い訳でもなく、
私はお礼を言って、荷物を持って移動していく。
ほっといて欲しい。
今はつらくても、家族に会えるんだから。
ちゃんと働いて、あいにいけるんだから。
前のように、家出ばかりして、
警察にお世話になって、
気がついたら保護センターじゃないんだから。
車窓から、富士山が見えるはずなのに、
見るゆとりさえなかった。
飛ぶように流れる景色。
ああ、こうやって私は大人になっていくのね。
大人は汚い。
染まりたくない。
だけど、一番汚かったのはわたしなのかもしれない。
やっとたどり着いた広島は、
父母の仮の宿。
わたしが悪いのだ。
3回目の退学で、
ついてきてしまった両親。
田畑も人に貸してしまった。
彼らは戻る家がなかったのかもしれない。
物質的には、2軒も3軒もあったのだが、
無医村じゃあねー。
没落セレブの家計は苦しい。
「あのままいくと、学費も払えなかった」
と、慰めてくれる。
ああ、パンツスーツにすればよかった。
みんな、必死なんだよね。
出稼ぎだったり、
家族に一年ぶりに逢いに帰る人だったり、
今だったら、想像して楽しくてしょうがない光景。
でも、あの時のわたしには
まるで競走馬のゲートのように思えた。
ちょっとでも、気を緩めると食われてしまう。
生きるか死ぬかの真剣勝負。
必死に高みを目指して、
朝日、毎日、読売、日経を読むのが日課。
お座敷に呼んでくださるのは、
政財界の名だたるかたがた、
素敵なおじ様たちばかり。
毎日毎日、うんざりするほどのお稽古。
日本舞踊、長唄、清元、常磐津、鳴り物。
働けば働くほど借金が増えていく。
何なの、これは。
借金なんてなかったはずなのに。
気がつくと、ゆうに1000万をこえていた。
ブラック企業だって。
笑わせるな。
あんたたちが不平を言っている親たちは、
休みたいとか遊びたいとか
思ったら死ねといわれて生きてきた人たちなんだ。
支離滅裂。
それと冒頭の鴨鶴とどう関係があるのよ。
まーなんと、わたしは
31日夜から1月5日夜までの間に、
その1斗を飲み干してしまったのである。
豪快だねー。
やるねー。
ただのアルコール依存症でしょう。
18歳なのに。
大田川は優しく流れる。
甥っ子と一緒にお風呂に入る。
「おばちゃん、おっぱい大きいね」
花の18歳におばちゃんいうなーw
がりがりにやせているのに、
おっぱいが大きいって12歳上の姉は、
どんだけ貧乳なの。
父様と一緒に食べたおすし、
おいしかったなー。
天国にいったら会えるのかな。
大年
大晦日
年越
大歳
除夜の鐘
除 夜
除夜詣
晦日蕎麦
年の夜
年越蕎麦
札納
梟
冬休
年の市
「ここに、お嫁さんを探しに来てるんじゃないんだから。
お客様は……」
「夢を売って、楽しんでいただいてお金を貰うの」
要は嘘をつけと。
村始まって以来の悪は、
大人の悪知恵に太刀打ちできない。
小さなときから見てきた水商売は
こんなに大変なことだったのか。
痛感させられる。
いつのまにか、子供がいて親に預けていることになっていた。
しかも、どの人にその話をしたのかわからなくなる。
悪になりきれない少女は、ため息をつく。
嘆息する。あえぐ。泣く。叫ぶ。
そんな気持ちが、飲めもしないお酒に向かわせたのだろう。
月日は流れ、急流も瀞となり、淀み、干からびていく。
盛者必衰の如し。
ああ、今が幸せ。
すばらしい今日一日に、
ありがとうございます。
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