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ちょっとティータイム。衝撃 東京拘置所の内緒話

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「うう、暑い、死ぬ」

ここは東京拘置所、懲罰房。

50度はあろうかと思うよなコンテナ状態。

水道はあるのだが、蛇口をひねっても一滴の水も出ない。

刑務官がボタンを押さなければ、

トイレの流す水も手を洗う水も出なかった。

熱中症でこのまま死ぬかと思うような極限状態。

3メートルはあろうかと思うような位置に

ステンドライトのような小さな窓がある。

開いてはいない。

拘禁反応に普通の人でもなるんじゃないかなと

思うような状況である。

小学校や中学校のかつていじめっ子だった人たちは、

みんなこういうところに勤務しているのかと思うような

事件勃発。というか、日常茶飯事。

やっと、入れてもらえたお茶。紙コップの中に冷たい水が入ってる。

飛びつくようにそばによる。

飲もうとした、

「あれ、おしっこくさい」

薄く黄色の液体。

「くそ、おしっこ入れられた」

確かに尿飲療法とかいう民間療法は聞いたことがあるが、

それは本人も尿だと理解して飲んでいるのだろう。

俺はそんなこと、望んじゃいない。

何が因果で、人の尿を飲まなきゃいけないんだ。

しかも、この状況で。

アイスクリームかカキ氷が食べたいくらいだ。

せみ時雨が騒がしい。

しかも、夕べした大便が担当に頼んでも、流してもらえない。

「流してください」

「朝まで待て」

「はー?」

いじめだろう。虐待だろう。

お前ら、社会の強い者に歯向かうことができないから、

ここで社会の弱者の受刑者予定の

しかも重度の精神病者の俺をいじめるのか。

もう、暑さのため、怒る元気もなかった。

明日の朝になれば、みんなのところにいける。

このまま何もなかったことにして、我慢していれば。

「しかし、くさいなー」

吐き気がしてくる。

こえだめの前にいるようなものである。

ここは独居である。

他にはこの部屋に人はいない。

さっきから、俺にいろいろしてくるやつは、

24歳くらいの刑務官だった。

こいつ、こんなだから、家族からも愛されず、

彼女ができてもうまくいかないのかな。

なーんて、彼の不幸を想像して、にーと笑う俺。

「はー、みんな狂ってる」

大便を流さないで。くそっ。

本来なら、犯した罪を反省し、

静かに聖書でも読んでいたいのに……。

朝方近くなり、近づいてきた刑務官は、

「流して欲しいか?」

と聞いてきた。

「はい」

「じゃあ、これを飲め」

みると、紙のコップの中に少しの水と白い液体が入っている。

多分、精液。

「ほんと、こいつくそだな」

俺も狂ってるけど、同じくらいこいつもいかれてる。

俺は仕方なく、それを飲んだ。

だって、こいつに逆らうと……。

以前、こいつに逆らって次の日に雑居に戻れるはずが、

1週間放置された。

だから、言うことを聞くしかなかったんだ。

力比べでもしてるのか。

シーソーゲームなのか。

まあ、楽しんでください。

担当さん。

「流してやるから、にぎれ」

「はー?」

「大便を握れといってるんだよ」

はー、マジいかれてる。

ママがもし、ここにいたら、

何も言わないで、3メートルは吹っ飛んでるだろうな。

想像したら、少し楽しくなった。

こんな時は、楽しいことを思い浮かべのが一番。

マザコンのように、

「ママー、あいつがいじめるよー」

ここにいるこいつと、波長があうともっとむごい要求をされる。

以前、ここで、お尻の穴に4本指をつッっこまれたという話さえ聞いたことがある。

ここは、治外法権。

彼らの言いなりなのだ。

朝になり、法務部長が回ってきた。

「今日、雑居に移るんだよな」

「はい、よろしくお願いします」

やったね、何とか切り抜けられそう。

俺はほくそ笑む。

と、思った何分後。

あいつがまた戻ってきた。

ご飯が運ばれてきて、

大便を握った手を水で洗わせてはくれたのだが、

石鹸がないので独特のにおい。

そこに食事が運ばれてきて、匂いで吐き気がして

食べることはできなかった。

「石鹸を貸してください」

お願いしたのだか、

にやにやと笑って石鹸を貸してはくれなかった。

そのまま食事を放置してあったのだが、

「食えないんだろうから、

優しい俺が、おにぎりにしてやる」

「さぞ、いい香りがするだろう」

まじ、こいつ、人間じゃねー。

どんなことがあれば、こんなことができるのか、

人間性を疑うぜ。

初犯の刑も決まっていない俺に、

どうしてここまでするのかなぞだった。

お前、出たら覚えてろよ。

その時はそう思ったのだが、

刑を終えて出た俺は、

苦労して勤め上げて、

アンナやつのためにまた逆もどりするのはいやだった。

「何で俺なんか生んだんだよ」

「くそばばあー」

統合失調症で親を泣かせてばかりいた。

その度に、俺は生まれてきたことを呪った。

なのに……。

面会のときに、ママはガラス越しに俺と手を合わせ、

二人で泣いたあの日のことを俺は忘れない。

「自分を愛してくれる人を泣かせて、

夢を語るなよ。かっこ悪いじゃないか」

「ママ、俺はあんたに笑顔でいてもらうために生きる」

男は黙って、ニヒルに笑った。



読んでいただいてありがとうございます。











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