ほっこりできるで賞

古代の魔法と音楽

古代の魔法と音楽

古代の著述家たちは、音楽には魔法の力が宿っていると信じていました。そのため、多くの伝説や神話が音楽の魔法的な力を語り継いでいます。例えば、オルフェウスの奏でるたて琴の音色は、鳥獣草木を魅了し、川の水さえもその旋律に惹かれて流れを変えたと言われています。オルフェウスは、九人の女神ミューズの一人であるムーサの子とされています。ギリシャ人は、ミューズを文芸全般を司る神々と信じており、英語の「音楽（Music）」という言葉は、このミューズに由来しています。

伝説によれば、愛妻ユーリディスを失ったオルフェウスは、彼女を取り戻すために冥界に赴き、たて琴を奏でました。その旋律はあまりにも美しかったため、冥界の神々も心を動かされ、ユーリディスを彼の元に帰しました。

ギリシャ神話には、他にも音楽の魔法を語る例がいくつかあります。例えば、嫉妬深く凶暴な海の神トリトンは、魔法のホラ貝を吹いて海の波を静めたり、逆に大波を引き起こしたりすることができたと言われています。また、サイレンという海の精たちは、その美しい歌声で船乗りたちを魅了し、船を座礁させることで命を奪ったと言われています。しかし、オルフェウスがサイレンたちの近くを通り過ぎる際にたて琴を奏でると、その音色はサイレンたちの歌声を凌ぐ美しさであり、彼女たちは悔しさのあまり自ら海に身を投じたと伝えられています。

音楽は人々の感情に強く影響を与えるため、多くの宗教儀式で重要な役割を果たしてきました。古代ギリシャの宗教儀式においては、合唱隊は欠かせない存在でした。それは、アフリカの異教の崇拝において宗教的なダンスが重要視されるのと同様です。アフリカの一部の地域では、石笛や特定の種類の太鼓が神聖視されており、そのような太鼓が宗教儀式で使われる場合、ジャングルの霊や象の神がその中に宿ると考えられています。

古代の人々にとって、音楽はただの娯楽や芸術ではなく、神々と繋がるための神聖な手段であり、魔法そのものであったのです。オルフェウスやトリトン、サイレンたちの物語は、そのような信仰の証と言えるでしょう。音楽の持つ力と魔法に対する信仰は、古代から現代に至るまで、人々の心に深く根付いているのです。

あなたはどんな音楽が好きですか?