ほっこりできるで賞

夏至

夏至

夏至の日、静かな田舎町に住む主人公・悠太は、いつものように自転車で町を巡っていた。彼は大学生で、夏休みを利用して地元でアルバイトをしていた。この日も暑い日差しの中、彼は古い書店での仕事を終え、帰り道に立ち寄った道の駅で冷たいジュースを買っていた。

「ああ、これぞ夏だな」と思いながら、ジュースを飲み干す悠太。その時、道の駅の壁に貼られたポスターが目に入った。それは町おこしの一環として行われる夏至祭りの告知だった。

「夏至祭りか……久しぶりに行ってみようかな」と、悠太はふと決心する。彼は子どもの頃、夏至祭りで友達と一緒に縁日の屋台を巡ったり、花火を見たりした思い出があった。しかし、最近は仕事や勉強に追われてそうした地元の行事に参加することが少なくなっていた。

帰宅してから、悠太は夕方になるまで少し休憩し、そして夏至祭りの開催場所に向かった。夕涼みの風が心地よく、会場にはすでに多くの人が集まっていた。縁日の屋台や露店、そしてステージでは地元の子どもたちが太鼓を叩いていた。

彼はぶらぶらと屋台を見て回りながら、当時と変わらぬ懐かしい雰囲気にほっとする。そんな中、ふと遠くの方で幼いころからの友人・香織と目が合った。香織も地元に戻ってきていたようだった。

「悠太くん、久しぶり！ 夏至祭り楽しんでる？」香織は笑顔で声をかけてきた。

「ああ、久しぶりだね。お互い大人になったもんだ」と悠太も笑いながら答える。

二人は昔話に花を咲かせながら、屋台で食べ物を買ったり、地元の話題で盛り上がったりした。そして、夕暮れ時には花火大会が始まることになっていた。

「昔みたいに、夏至の花火を一緒に見ようよ」と香織が提案する。

「いいね、それで結構」と悠太はうなずきながら、二人で花火が打ち上がる会場へと向かった。

夜空に咲く花火の美しさに、二人はしばらく見とれていた。遠くで子どもたちが歓声を上げ、地元の人々も穏やかな笑顔で花火を眺めていた。

「やっぱり夏至祭り、いいね。こうして地元に戻ってきて本当に良かったと思う」と香織がつぶやく。

悠太も頷きながら、心から同意する。大学生活やアルバイトで忙しい日々の中で、こうして地元の夏の風物詩を楽しむ時間は、本当に貴重であると感じた。

花火が終わり、会場が静まり返った頃、悠太は香織に向き直った。

「香織、また会えて嬉しかったよ。これからもたまにはこうやって、地元のイベントに顔を出すようにしようか」と彼は笑顔で言った。

香織も微笑みながら頷く。「そうだね、私もこうして悠太と会えたら嬉しいな」と返した。

二人はそんな話をしながら、会場を後にした。それぞれの暮らしに戻りながらも、心には夏至祭りのほっこりとした温かな思い出が残った。

田舎町の小さな夏の奇跡、それが彼らにとっての夏至祭りだった。