ほっこりできるで賞

真夏日 ガーデニングのひと時 ほっこりタイム

真夏日　ガーデニングのひと時　ほっこりタイム

　田中美咲は、郊外の一軒家に住む主婦だった。庭いじりが大好きで、彼女の庭は季節ごとに美しい花々で彩られていた。真夏の暑い日差しの中でも、美咲は庭に出てガーデニングを楽しむのが日課だった。

　その日も、朝早くから美咲は庭に出ていた。太陽がまだ低い位置にあり、空気が少し涼しい時間帯に、水やりや雑草取りを済ませておきたかったからだ。彼女は大きな麦わら帽子をかぶり、庭の隅々まで丁寧に水をやった。

　「今年もたくさん咲いてくれてありがとうね」美咲は花々に話しかけながら、じょうろから水をそっと注いだ。ラベンダーの甘い香りが辺りに漂い、バラやマリーゴールドが鮮やかな色で庭を彩っている。

　作業を終えた頃には、太陽はすっかり昇り、夏の強い日差しが庭を照らしていた。美咲は一度家の中に戻り、冷たいレモネードをグラスに注いだ。それを手に、庭に設置したパラソルの下に置かれたチェアに腰を下ろした。

　「ふぅ…」美咲は一息つき、グラスを持ち上げて冷たい飲み物を一口飲んだ。レモンの爽やかな酸味が口の中に広がり、体の熱を和らげてくれる。庭からはセミの鳴き声が聞こえ、夏の訪れを感じさせる。

　その時、隣の家から小さな声が聞こえてきた。隣家には幼い男の子がいて、毎日庭で遊ぶのが大好きだった。美咲は微笑みながら、その声に耳を傾けた。

　「お母さん、見て！花が咲いたよ！」男の子の嬉しそうな声が聞こえる。

　「ほんとだね、たくさん咲いてるね。上手に育てたね。」母親の優しい声が続いた。

　そのやり取りを聞いて、美咲は自分の子供たちが幼かった頃のことを思い出した。彼らも庭で遊び、花の成長を楽しんでいたものだ。今はもう大きくなり、独立してそれぞれの生活を送っているが、その思い出は美咲の心に鮮明に残っている。

　美咲はチェアに深く腰掛け、しばらくの間、庭の風景を眺めていた。風が少し吹き、木々の葉がささやくように揺れる音が心地よい。庭には蝶が飛び交い、ハチが忙しそうに花々の間を行き来している。

　そんな静かなひと時、美咲は庭の片隅に植えたハーブの香りを楽しむために立ち上がった。ミントやバジル、ローズマリーの香りが鼻をくすぐり、彼女の心を癒してくれる。

　ふと、玄関のチャイムが鳴った。美咲が玄関を開けると、そこには郵便配達員が立っていた。「こんにちは、田中さん。お荷物です。」彼はにこやかに笑いながら美咲に小さな箱を渡した。

　「ありがとうございます。」美咲は受け取った箱を持って家の中に戻った。テーブルに箱を置き、開けてみると、中には美しく包装された新しいガーデニングツールが入っていた。これは、先週オンラインで注文したものだった。

　「これでまた庭がもっと素敵になるわね。」美咲は新しいツールを手に取り、その使い心地を確かめながら微笑んだ。

　午後になると、日差しが一層強くなり、美咲は再びパラソルの下に戻った。彼女は持ってきた本を開き、静かに読書の時間を楽しんだ。ページをめくる音、遠くで聞こえる蝉の声、そして庭の花々が風に揺れる光景――それらが彼女の心を満たしてくれた。

　しばらくして、美咲は目を閉じて昼寝をすることにした。庭の中で過ごす穏やかな時間が、彼女にとって最高のリフレッシュとなるのだ。心地よい風が頬をなで、自然の音が優しく彼女を包み込む中で、美咲は深い眠りに落ちた。

　夕方、目を覚ました美咲は、庭の花々が夕陽に照らされて黄金色に輝いているのを見た。その美しい光景に、彼女の心は再び温かく満たされた。

　「今日も素敵な一日だったな。」美咲は心の中でそう呟き、夕食の準備に取り掛かった。ガーデニングのひと時は、美咲にとって日常の中の小さな幸せであり、忙しい日々の中でほっこりとした瞬間をもたらしてくれる大切な時間だった。

　美咲はその日も、一日の終わりに庭を眺めながら、ほっこりとした気持ちで満たされていた。庭の花々と共に過ごす時間が、彼女の心を豊かにし、日常の疲れを癒してくれるのだ。真夏日のガーデニングは、美咲にとって何よりも大切な、ほっこりタイムであった。