不撓不屈

小さな一歩

どんなピンチな時も自分を大切にして。迷っても、失敗しても、それがあなたの成長に繋がるから。あなたのペースで進んで、笑顔を忘れずに。ちっちゃな小さな一歩も、確実に前へ進んでいる証だから。

いつもありがとう🤍


"小さな一歩"

日が沈み、夜が訪れた。駅のホームで一人佇んでいた莉子は、携帯電話を見つめたまま、深いため息をついた。仕事が終わるたび、家に帰るたびに感じるこの胸の痛み。やりたかったことを諦め、目の前の現実に押し潰されそうな毎日。そんな自分を責めることが増えてきた。

「どうしてこんなにうまくいかないんだろう…」

声に出してみると、少しだけ心が軽くなったような気がした。周りの人たちは皆順調そうに見えて、何一つうまくいっていない自分が情けなく思えることがある。大学を卒業してから、社会人として生きるということがこんなにも厳しいとは想像していなかった。

電車がホームに滑り込んでくる音を聞きながら、莉子はそのまま電車に乗り込んだ。窓の外には、忙しそうに歩く人々の姿が見える。みんなそれぞれの生活を必死に生きている。でも、そんな日々に追い詰められると、つい自分だけが取り残されているように感じてしまう。

「自分を大切にして。」そんな言葉を、ふと思い出した。数ヶ月前、友人の亜衣からもらった言葉だ。亜衣は、いつも元気で、周りの人を笑顔にすることができる、心の強い女性だった。莉子は何度も、亜衣の優しさに助けられてきた。けれど、最近はその亜衣からの言葉が頭の中でぐるぐる回っている。

「どうして、私は自分を大切にできないんだろう。」

莉子はまたため息をついた。駅から家までの道を歩きながら、その問いを自分に投げかける。そして、ふと足元に目を落とすと、道端に小さな花が咲いているのを見つけた。

「あれ？」

小さな黄色い花が、雑草の中でひっそりと咲いていた。その花は他の花々と比べて目立つことなく、静かに風に揺れている。しかし、決して枯れずに、そこに咲き続けている。その花の強さを見て、莉子は心の中で何かが少しずつ変わるのを感じた。

「私も、あんな風になりたい。」

急にそんなことを思った。自分は今、挫けそうになっているけれど、それでも少しずつでも前に進んでいる。周りと比べてどうかはわからない。でも、自分なりに一歩一歩踏みしめてきた道のりは、間違いなく自分のものだ。

「ちっちゃな一歩も、確実に前へ進んでいる証だよね。」

心の中で、自分にそう言い聞かせてみた。その瞬間、ふと気づくと、心の中の重荷が少しだけ軽くなっている気がした。何もかもがうまくいかなくても、少しずつでも前に進んでいくこと、それが大切なんだと。急がなくていい。焦らなくていい。自分のペースで進んでいけば、それが一番だ。

家に着くと、莉子は冷蔵庫からお茶を取り出し、ゆっくりと飲みながら、自分のことを少しだけ大切に思うことにした。そして、夜空に目を向けてみた。暗い夜空の中でも、星は輝いている。

「私も、きっと大丈夫。」

それが不安な気持ちを少しだけ和らげてくれる、そんな言葉になった。

その日の夜、莉子は寝る前に亜衣からもらったメッセージを見返した。

「あなたがどんな状況でも、私はあなたを大切に思ってるよ。自分を大切にしてね。」

その言葉に、何度も何度も励まされた。誰かに大切にされること、そのことを忘れないようにしよう。自分を大切にしてあげること。それがどれほど大切なことなのか、少しずつわかり始めた気がした。

莉子はそっと目を閉じ、深呼吸をした。そして、今日もまた、小さな一歩を踏み出す自分を、少しだけ誇りに思った。

おわり。