不撓不屈

再会の時

再会の時

秋の風が冷たく吹き抜ける夕暮れ時、私は公園のベンチに座って、空を見上げていた。雲一つない澄み渡る空が広がり、その先には彼の姿が思い浮かぶ。彼、悠真（ゆうま）との関係はいつも波乱に満ちていた。

悠真と出会ったのは大学のサークル活動がきっかけだった。彼は私より三つ年上で、リーダーシップがあり、周囲から頼られる存在だった。初めて会ったときから、彼に惹かれるものがあった。彼の自信に満ちた笑顔、何があっても決して揺らがない強い心。それが私を虜にした。

しかし、私たちの関係は決して順調ではなかった。彼は忙しい日々を送り、私たちが一緒に過ごす時間は少なかった。何度も約束がすれ違い、心の距離も次第に広がっていくように感じた。それでも、私は彼を想い続けた。どれほど寂しくても、彼のことを信じていた。

「いつか、もっと一緒にいられる日が来るはず」と自分に言い聞かせながら、待ち続けた日々。友達からは「そんなに我慢しなくていいのに」「もっと他の人を見つけたほうがいいんじゃない？」と言われたこともあった。でも、私は悠真以外に目が向かなかった。彼の言葉一つ一つに希望を見いだし、その度にもう少し頑張ろうと思った。

ある日、久しぶりに悠真から連絡があった。彼からのメッセージは簡素で、明日会いたいというものだった。私はすぐに承諾し、翌日、彼と会うために指定されたカフェに向かった。

久しぶりに会う彼の姿は、少し疲れて見えた。仕事が忙しいのだろうか、と気にかけつつも、私は笑顔で声をかけた。「久しぶりだね、元気だった？」

しかし、彼の返事はそっけなかった。「ああ、まぁね」と短く言っただけで、深い話をする様子もなく、ただコーヒーを飲んでいる。

沈黙が続き、私は何を話せばいいのか分からなくなっていた。そんな時、彼が突然口を開いた。「俺、しばらく会えないかもしれない」

驚きと戸惑いが心を支配する。なぜ？　どうして？　何か悪いことでもあったのだろうか。質問が頭を巡ったが、口から出てきた言葉は一つだけ。「どうして？」

「仕事が忙しくなって、それに……俺たち、なんだかお互いにとって良い方向に進んでいない気がするんだ」

その言葉を聞いた瞬間、胸が締め付けられた。彼は別れを切り出していた。何度も心の中で覚悟していたはずだったが、実際にその瞬間が来ると、私は何も言えなくなってしまった。

「今は、俺たちにとって距離が必要だと思うんだ」と彼は続けた。私はただうつむき、彼の言葉を受け入れるしかなかった。

それからしばらく、私は彼のことを忘れられなかった。何度も電話しようと思ったが、結局は止めた。彼の決意が強いことは分かっていたし、それを覆すのは私には無理だと感じた。だけど、彼のいない日常は耐え難く、空虚な気持ちだけが募っていく。

そんな時、友達のアドバイスを受け、少しでも自分の時間を充実させようと決意した。仕事に打ち込み、趣味を再開し、新しいことにも挑戦する日々を送った。最初は辛かったが、次第に少しずつ心の傷は癒えていった。

そして、半年が過ぎた頃、またあのカフェで彼に会うことになった。偶然だったが、私たちは自然に再会した。彼もまた、少し変わっていた。以前の忙しさはなく、穏やかな表情をしていた。

「久しぶりだね」と彼は言った。その声にはかつてのような力強さが戻っていた。

「そうだね、元気だった？」私は微笑んで答えた。

「実は、あの時別れを告げたことを後悔してたんだ。君を巻き込んでしまったのは、自分がどうするべきか分からなくなっていたからだった。でも、もう一度やり直したいと思っている」

彼の言葉は予想外だったが、その真摯な瞳を見て、私はまた心が揺れた。あの日、私は彼を信じ続けた。そして、その結果、彼がまた戻ってきてくれたのだ。

「私も、もう一度信じてみるよ。お互いに不撓不屈の心でね」

それから私たちは再び歩み始めた。過去の痛みや迷いを超えて、今度こそ強い絆を持って進んでいく。それは簡単な道ではないかもしれないが、私たちはお互いを信じ続け、どんな困難にも屈しない心で向き合う決意を新たにしたのだった。