妻と愛人と家族

春秋花壇

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結婚の選択

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結婚の選択

「結婚してないときって、ちょっと『ん?』って思ったら別れるっていう選択肢が頭に浮かぶじゃないですか。これが驚きだったのが、結婚したら別れるっていう選択肢が無くなったんですよ。」彼女はそう言って、微笑みながらコーヒーを一口飲んだ。

結婚して10年になる麻美は、友人の亜紀とカフェでのんびりとした午後を過ごしていた。亜紀はまだ独身で、麻美の結婚生活に興味津々だ。彼女は最近、長く付き合っていた恋人と別れたばかりで、新たな恋を見つけることに慎重になっていた。

「つまり『別れないためにはどうしようか』っていうことができるようになった。だから1回『いいな』と思った瞬間に結婚してしまうのも1つの手かなと思います。」麻美は続けた。

「でも、それって怖くない?」亜紀が疑問を投げかけた。「一度結婚したら、簡単には後戻りできないってことだよね?」

「そうね。」麻美は少し考えた後、ゆっくりとうなずいた。「でも、結婚ってそういうものだと思うの。別れる選択肢がない分、問題があった時にどうやって乗り越えるかを考えるようになるのよ。もちろん、難しい時もあるけど、それを乗り越えることで二人の絆が深まるの。」

亜紀は麻美の話を聞きながら、自分の過去の恋愛を思い返していた。恋愛がうまくいかないと感じた時、すぐに別れるという選択をしてきたが、それは本当に正しかったのだろうかと考え始めた。

「例えば、どんな時にそれを感じた?」亜紀が尋ねた。

「そうね…例えば、些細なことでケンカになった時とか、価値観の違いに気づいた時かな。でも、そんな時こそ『どうやって解決しようか』って考えるようになったの。」麻美は少し微笑んだ。「最初はお互いに譲れないこともあったけど、今では相手の考えを理解しようと努力するようになったし、その結果、お互いに歩み寄ることができるようになったの。」

亜紀は麻美の言葉に心を動かされた。自分が恋愛で感じた不安や葛藤も、もしかしたら結婚を通じて解決できるのかもしれないと思い始めた。

「それにね、結婚って楽しいこともたくさんあるのよ。」麻美はそう言って、目を輝かせた。「一緒に新しいことに挑戦したり、旅行に行ったり、何気ない日常を共有することができる。それがどんなに素晴らしいことか、言葉では言い表せないわ。」

「そうなんだ…」亜紀は静かに頷いた。彼女の心には、麻美の話が深く響いていた。

「結婚って、完璧な相手を見つけることじゃなくて、お互いを支え合い、成長し合う関係を築くことなんだと思うの。だから、最初の一歩が大事なのよ。『この人なら一緒に乗り越えていける』って思える瞬間があれば、それが結婚のきっかけになるのかもしれないわ。」

麻美の言葉に亜紀は勇気をもらった。恋愛において不安や葛藤は避けられないが、それを乗り越えることで新たな関係が築けるのだという考え方に、心が軽くなった気がした。

カフェを出た後、亜紀は一人で歩きながら考えた。これから先、自分がどのような道を選ぶべきかを。過去の恋愛では、問題が起こるたびに別れを選んできたが、もしかしたら、次の恋ではその先を考えてみるべきなのかもしれないと。

「もしかしたら、一回『いいな』と思った瞬間に結婚してしまうのも…」亜紀は麻美の言葉を思い出しながら、未来に対して少しずつ前向きな気持ちを抱き始めていた。








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