お金持ちごっこ

春秋花壇

文字の大きさ
上 下
410 / 634

ファストフードの罠

しおりを挟む
「ファストフードの罠」
亮介は、毎日のようにファストフード店に立ち寄るのが習慣だった。会社帰りの疲れた体を引きずりながら、いつものように立ち寄ったマクドナルドの明るい看板が目に入る。今日もまた、ハンバーガーとポテトのセットを頼むことにした。ポテトを一口食べると、その塩味と油の風味が口の中に広がり、瞬時に疲れが癒される気がした。

「これがあるから、一日頑張れるんだ」と、亮介は自分に言い聞かせながらも、心の片隅では何かが間違っていることを感じていた。

ある日、会社の同僚である佐藤が亮介に言った。「亮介、最近ファストフードばかり食べてないか?あまり健康には良くないと思うぞ」

「そうかもしれないけど、俺にとってはこれが一番手っ取り早いんだよ。時間も節約できるし」と亮介は言い返したが、実際にはそれが原因で体調を崩しているのを自覚していた。財布の中身も減り続けていた。気がつけば、給料日前にはいつもぎりぎりの生活をしていた。

そんなある日、亮介はネットで偶然「トロント大学の研究結果」を見つけた。その記事には、ファストフード店の近くに住む人は貯金が少ない傾向があると書かれていた。亮介は、自分がまさにその典型的な例だと思い知らされた。

「ファストフードが美味しすぎるから、人は欲求をコントロールできなくなる。そして、それが貧乏につながる」

亮介はその記事の内容に驚愕し、思わずため息をついた。彼の頭の中に浮かんだのは、ファストフード店のカウンターで見た自分の姿だった。日々の疲れを癒すために、安易な選択をしていた自分が、未来を見据えることなく浪費している現実を突きつけられた。

その夜、亮介はふとした思いつきで佐藤に連絡を取った。「おい、佐藤。明日、一緒に昼飯食べに行かないか?」

翌日、亮介と佐藤はオフィス近くのカフェに行った。佐藤はサラダとスープを頼み、亮介はそれに倣って健康的なメニューを選んだ。「どうだ?こういうのも悪くないだろ?」佐藤が笑顔で亮介に問いかけた。

「うん、たまにはこういうのもいいな」と亮介は答えたが、その心は穏やかで、久々に満足感を味わった気がした。カフェでの食事は、ファストフードに比べて割高だったが、その分自分の体が喜んでいるように感じた。

それから亮介は少しずつ、ファストフードを減らす努力を始めた。仕事帰りの寄り道を避け、自炊を増やし、簡単な料理でも満足するようになった。徐々にだが、亮介の生活は変わり始めた。無駄遣いが減り、貯金も少しずつ増えていった。

「ファストフードの誘惑に負けない自分になる」

それは亮介にとって大きな目標となった。誘惑に負けそうになるたびに、彼は自分に言い聞かせた。「美味しすぎるものには、裏があるんだ」と。

ある日の夜、亮介は久しぶりに街を歩きながらマクドナルドの前を通り過ぎた。明るい看板が今まで以上に鮮やかに輝いているように見えたが、亮介はそこに引き寄せられることなく、自分の足で前に進んでいった。

彼は心の中で小さくガッツポーズをし、まるで人生の大きな山を乗り越えたような気持ちになった。亮介は今、自分の人生の舵を取り戻したのだ。ファストフードに頼らない自分を見つけ、彼は次のステップに向けて歩み始めた。

亮介は、財布の中身が少しずつ増えていくのを感じながら、自分が正しい道を選んでいることを確信した。「お金を持つことは、使わないこと。そして、欲求に負けないことだ」と。彼は自分の小さな勝利を噛み締めながら、日々を生きていった。









しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

処理中です...