縁（えにし)

筏の冒険

筏の冒険

9歳の陽斗は、夏の暑い日、流れる川のほとりで楽しそうに遊んでいた。裏山で拾った竹を使って、仲間たちと一緒に筏を作る計画を立てた。川の流れを利用して、自作の筏で浮かぶ冒険をしてみたいという思いが、陽斗の胸に膨らんでいた。

「絶対に楽しいに違いない！」と陽斗は声を弾ませながら、仲間の健太と亮に話した。三人は一生懸命に竹を集め、しっかりと結び合わせて筏を作り始めた。竹を組み合わせる作業は思った以上に難しかったが、陽斗たちは互いに協力しながら、夢中で作業を進めた。

ついに筏が完成し、陽斗たちは喜びの声を上げた。「これで冒険の始まりだ！」と陽斗は言い、川に筏を浮かべる準備を始めた。川の流れは穏やかで、これなら大丈夫だろうと思っていた。

しかし、現実は思っていた以上に厳しかった。陽斗たちが筏に乗り込むと、流れが次第に強くなってきたのだ。「大丈夫、まだ行けるよ！」と陽斗は言ったが、流れの勢いはどんどん増していった。川の流れが早くなり、筏は思いのほか速く流されていった。

「やばい、どうしよう！」と健太が叫んだ。陽斗たちは必死に筏を押し戻そうとしたが、流れは強く、筏はますます速く流されていくばかりだった。周りの風景が次第に遠くなり、陽斗は不安を感じ始めた。

「どうする、陽斗！戻れなくなっちゃうよ！」と亮が叫んだ。陽斗は焦りながらも、冷静になろうと心がけた。「落ち着け、まずは岸に向かって筏を操ろう！」と陽斗は言い、筏の舵を取ろうとしたが、川の流れがますます激しくなり、操るのは難しくなっていた。

そのうち、陽斗たちの筏は川の曲がり角にさしかかり、流れが急になってきた。筏は激しい流れに翻弄され、ひっくり返りそうになった。「大変だ、落ちるかも！」と健太が叫ぶ。

陽斗は仲間たちと力を合わせ、筏を支えようと必死に手を伸ばし、周りの景色を見渡した。岸には小さな木々や岩が見え、何とかそこに向かって筏を引き寄せようと考えた。「あそこに行こう！」と陽斗は指さし、仲間たちに声をかけた。

ようやく岸に近づき、陽斗たちは筏を必死に押し込みながら、流れに逆らってなんとか岸に辿り着くことができた。「やった、岸に着いた！」と陽斗たちは安堵の声を上げた。

筏が無事に岸に着くと、陽斗たちはほっと胸をなで下ろした。「これからは、もっと注意しようね。」と陽斗は仲間たちに語りかけた。健太と亮も頷きながら、「ほんとうに、危ないところだったね。」と同意した。

その後、陽斗たちは川のほとりでしばらく休息を取り、筏を改良することに決めた。陽斗はこれからの冒険のために、もっと安全な筏を作ろうと心に誓った。

帰り道、陽斗たちは今日の出来事を振り返りながら、互いに笑い合った。「あの冒険も、いい思い出だね。」と陽斗は言い、仲間たちは笑顔で頷いた。

家に帰った陽斗は、お母さんに今日の出来事を話すと、心配そうな顔をしながらも、「無事でよかったわね。」と安心した。陽斗は「もう二度とこんな冒険はしないようにするよ。」と反省しつつも、心の中では次の冒険に胸を膨らませていた。

その夜、陽斗は自分の部屋で静かに振り返りながら、心の中で大きな冒険の計画を立てていた。「次はもっと安全で、楽しい冒険をしよう。」と陽斗は決意し、夢の中へと誘われていった。