縁（えにし)

11歳のおままごと

11歳のおままごと

11歳の莉奈（りな）は、小さな町に住む内気な女の子でした。彼女は友達が少なく、いつも一人で本を読んだり、家の中で遊んでいました。そんな莉奈には、一つだけ特別な楽しみがありました。それは、おままごとです。

莉奈のおままごとは、普通のおままごととは少し違っていました。彼女の空想の世界には、たくさんのキャラクターが存在し、そのキャラクターたちが日々の生活を送る物語が展開されていたのです。莉奈の頭の中には、まるで小さな町が広がっているかのように、多くの家や店があり、キャラクターたちがそこに住んでいました。

ある日、莉奈は公園で遊んでいると、新しい転校生の男の子が声をかけてきました。

「ねえ、一緒に遊んでもいい？」その男の子の名前はユウキでした。

莉奈は驚きながらも、うなずきました。彼女は初めての友達ができるかもしれないという期待と不安で、胸がいっぱいでした。

「何をして遊んでるの？」ユウキが尋ねました。

「おままごとをしてるの。」莉奈は小さな声で答えました。

「おままごと？男の子でもできるかな？」ユウキは興味津々に言いました。

「もちろん、できるよ。」莉奈は少し笑顔になりました。「私の世界に君も入ってきてね。」

莉奈はユウキに自分の空想の世界を紹介しました。彼女の説明にユウキは興味を持ち、すぐにその世界に引き込まれていきました。二人は一緒にキャラクターを作り、物語を展開していきました。

「僕のキャラクターは、パン屋さんにしようかな。」ユウキは提案しました。

「いいね！私はそのパン屋さんの隣に住むお花屋さんにするね。」莉奈は楽しそうに答えました。

二人は毎日のように公園で会い、おままごとを続けました。キャラクターたちは次第に増え、物語もどんどん広がっていきました。莉奈はユウキと一緒に遊ぶことで、自分が孤独ではなく、友達がいることの喜びを感じ始めました。

ある日、莉奈は家でお母さんにそのことを話しました。

「お母さん、今日もユウキとおままごとしたんだよ。とっても楽しかった！」莉奈は笑顔で言いました。

「それはよかったね、莉奈。友達ができて嬉しいわ。」お母さんも嬉しそうに答えました。

しかし、ある時、ユウキが莉奈に言いました。

「ねえ、莉奈。僕、引っ越さなきゃいけないんだ。」

莉奈はその言葉に驚きました。

「引っ越すって、どこに？」彼女の声は震えていました。

「遠い町に行かなきゃいけないんだ。でも、大丈夫だよ。僕たちのキャラクターはいつでもここにいるから。」ユウキは優しく言いました。

「でも、君がいなくなったら、私のおままごとはどうなるの？」莉奈は涙を浮かべながら尋ねました。

「莉奈、僕たちの作った物語はずっと続くよ。僕も新しい町でおままごとを続けるから、君もここで続けてね。」ユウキは微笑んで言いました。

別れの日、莉奈はユウキに手紙を書きました。

「ユウキへ。君と一緒に過ごした日々は、私にとって宝物です。新しい町でも元気でいてね。そして、おままごとの物語を続けてね。いつかまた会える日を楽しみにしています。莉奈より。」

ユウキはその手紙を受け取り、感謝の気持ちを込めて莉奈にお別れを告げました。

それから、莉奈は一人でおままごとを続けました。ユウキと一緒に作ったキャラクターたちは、彼女の心の中で生き続け、物語はさらに広がっていきました。莉奈は、友達がいなくても、自分の想像力で世界を広げていく力を持っていることに気づきました。

季節が巡り、莉奈は少しずつ新しい友達を作ることができました。彼女はおままごとの楽しさを他の子供たちにも伝え、その楽しさを共有しました。そして、ユウキとの思い出は、彼女の心の中でいつまでも輝き続けました。

エントリー作品として、11歳の莉奈とユウキの物語は、読者に友情と成長の大切さを伝える心温まるストーリーです。内気な女の子が友達を見つけ、想像力を通じて自分を表現する姿は、アルファポリスの「第2回きずな児童書大賞」にふさわしい作品です。