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10歳 風景画の練習

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「風景画の練習」

 10歳の結衣(ゆい)は、小学校の夏休みの課題として風景画を描くことになった。結衣は絵を描くのが大好きだったが、風景画は苦手だった。花や動物の絵ならいくらでも描けるが、広がる風景をキャンバスに収めるのはどうしても難しかった。

 ある日、母さんが言った。「結衣、今日はおばあちゃんの家に行くよ。おばあちゃんの庭はとても美しいから、風景画の練習にはぴったりだと思うの。」

 おばあちゃんの家は山の中にあり、自然に囲まれた素晴らしい場所だ。結衣は少し不安だったが、母さんの言葉に勇気をもらい、スケッチブックと絵の具を持って出かけることにした。

 車で1時間ほどの道のりを経て、おばあちゃんの家に到着した。玄関でおばあちゃんが笑顔で迎えてくれた。「結衣、よく来たね。今日は天気も良いし、庭で絵を描くのに最高の日だよ。」

 結衣はおばあちゃんの後について庭に出ると、目の前に広がる美しい風景に息を飲んだ。色とりどりの花が咲き誇り、緑の木々が風に揺れている。遠くには山々が連なり、青い空が広がっていた。

 「さあ、ここに座ってゆっくり描いてみなさい」とおばあちゃんが優しく言った。結衣は少し緊張しながらも、スケッチブックを広げ、鉛筆を手に取った。

 最初は何から描き始めればいいのかわからなかったが、母さんが以前教えてくれたアドバイスを思い出した。「大きな形から描き始めるといいわよ。細かいところは後から追加すればいいから。」

 結衣はまず、山の形を大きく描き、その後に木々や花々を追加していった。絵の具で色をつけると、風景がだんだんと生き生きとしてきた。

 時間が経つのも忘れるほど夢中になって描いていると、おばあちゃんが冷たいお茶を持ってきてくれた。「結衣、とても素敵に描けてるわね。休憩して、お茶を飲みながら少しだけリラックスしましょう。」

 結衣は感謝しながらお茶を飲み、一息ついた。おばあちゃんは続けて言った。「絵を描くときは、自分の感じたことや心の中の風景を表現するのも大切よ。技術だけじゃなくて、自分の気持ちを絵に込めると、もっと素敵な作品になるの。」

 その言葉に結衣は深く頷いた。再びスケッチブックに向かい、今度はおばあちゃんの言葉を思い浮かべながら、自分の感じた美しさや喜びを絵に込めて描き進めた。

 午後になると、結衣の風景画は完成に近づいていた。最後に細かい部分を仕上げると、結衣は自分の作品をじっと見つめた。おばあちゃんが隣に来て、「素晴らしいわね、結衣。あなたの感じた美しさがしっかりと伝わってくるわ」と言ってくれた。

 結衣は嬉しさと満足感で胸がいっぱいになった。「ありがとう、おばあちゃん。おばあちゃんのおかげで、風景画が少し好きになれた気がする。」

 おばあちゃんは微笑みながら結衣を抱きしめた。「これからもたくさん絵を描いて、自分の感じたことを表現していってね。あなたの絵が、見る人の心に響く素晴らしい作品になることを信じているわ。」

 その後、結衣はおばあちゃんの家での滞在を楽しみながら、さらにいくつかの風景画を描いた。毎回少しずつ上達していくのが感じられ、自信がついていった。

 家に帰る日が来ると、結衣は完成した風景画を持ち帰り、母さんに見せた。母さんは驚きと喜びでいっぱいの表情を浮かべた。「結衣、すごいわ!こんなに素敵な風景画を描けるようになったのね。本当に上手だわ。」

 結衣は照れくさそうに微笑んだ。「ありがとう、母さん。おばあちゃんのおかげで、風景画がもっと楽しくなったよ。」

 夏休みの宿題として提出した風景画は、先生やクラスメートからも高く評価された。結衣は自分の成長を感じながら、これからも絵を描き続けることを決意した。

 その後も、結衣は季節ごとにおばあちゃんの家を訪れ、風景画の練習を続けた。おばあちゃんと一緒に過ごす時間が、結衣にとって何よりも大切な宝物となった。

 そして、風景画を通じて学んだことは、結衣の心の中に深く根付いていった。自然の美しさを感じ、自分の心を表現する楽しさ。それが結衣の人生を豊かにしてくれた。

 結衣は成長するにつれて、さらに多くの風景画を描き、さまざまな場所を訪れてはその美しさをキャンバスに収めた。おばあちゃんとの思い出とともに、結衣の風景画は、見る人々の心に響く素晴らしい作品となっていった。








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