縁（えにし)

9歳 米山さんから雲が出た

米山さんから雲が出た

夏の終わりが近づくある日、田舎町の青々とした田んぼの中、少年たちは元気よく走り回っていた。彼らは学校が終わるとすぐに、いつもの秘密基地に集合するのが日課だった。

「今日もいい天気だなぁ。でも、ちょっと雲が出てきたな。」太郎が空を見上げながら言った。

「本当だ、あれは米山さんの方角から来てるね。」次郎が同じ方向を見つめた。

米山さんはこの町のシンボルとも言える山で、山頂には昔から伝わる古い神社がある。地元の人々はその山を神聖な場所として敬い、山から出る雲を天気の予兆と見なしていた。

「ねぇ、おじいちゃんが言ってたんだ。米山さんから雲が出ると夕立が来ることが多いって。」花子が話に加わった。

「ピッカラ　シャンカラ ドンカラリンと音がするらしいよ！」三郎が興奮気味に言った。

「何それ、どんな音なんだ？」次郎が不思議そうに聞いた。

「知らないけど、おじいちゃんはいつもそう言ってたんだ。夕立が来ると、何か特別な音が聞こえるって。」三郎は肩をすくめた。

その話を聞いた少年たちは、一層の興味を持ち、雲が出てくる様子を観察し始めた。時間が経つにつれて、空は次第に暗くなり、遠くの雷鳴がかすかに聞こえてきた。

「来るぞ、夕立だ！」太郎が叫んだ。

突然、空から大粒の雨が降り出し、少年たちは急いで近くの古い小屋に駆け込んだ。小屋はかつて農具を保管するためのもので、今は使われていないが、雨宿りには十分な場所だった。

「ピッカラ　シャンカラ ドンカラリン、あれがその音なのかな？」次郎が雨の音を聞きながら言った。

「違う、もっと特別な音がするんだって。」三郎が否定した。

すると突然、雷鳴が鳴り響き、その後に何かが鳴るような音が聞こえた。

「ピッカラ　シャンカラ ドンカラリンって、これか？」花子が興奮して叫んだ。

その音は雷の後に続く風の音や、雨が小屋の屋根を叩く音が混ざり合って、まるで音楽のように響いていた。少年たちはその音に耳を澄ませ、自然の不思議なリズムに魅了された。

夕立は短時間で過ぎ去り、再び青空が広がった。雨上がりの空気は清々しく、町全体が新しい息吹を感じさせた。

「今日はすごかったな。米山さんの雲が夕立を呼ぶって、本当だったんだな。」太郎が感慨深げに言った。

「そして、あの音も。ピッカラ　シャンカラ ドンカラリンって、本当に聞こえたね。」次郎が笑顔で応じた。

「自然ってすごいよな。おじいちゃんの話も、ただの迷信じゃなかったんだ。」三郎も満足げに言った。

少年たちはその日、一層自然の力を感じ、米山さんとその伝説を一層尊敬するようになった。そして、彼らの友情もまた、夕立のように新たな息吹を得て強まったのだった。

「生きていてくれてありがとう、米山さん。」花子が小さな声で呟いた。

その言葉は、少年たちの心に深く響き、彼らはこれからも毎日を大切に生きていく決意を新たにした。そして、米山さんから出る雲を見つけるたびに、彼らはその日を思い出し、自然の力と美しさに感謝し続けた。