縁(えにし)

春秋花壇

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8歳 トイレの神様

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トイレの神様

心ちゃんは8歳の女の子。彼女はとても怖がりで、特に暗い場所やトイレが苦手でした。古い家に住む彼女の家のトイレは、汲み取り式の古いタイプで、いつも彼女を恐怖に陥れていました。

「トイレの神様は、ちゃんと掃除しないと手が出てきて足首をつかむんだって」と、友達の話を聞いた心ちゃんは、その言葉が頭から離れませんでした。それ以来、トイレに行くたびに心臓がドキドキし、暗い夜にはトイレに行くのを我慢することさえありました。

ある夏の夜、心ちゃんは眠りに就こうとしましたが、どうしても我慢できず、トイレに行く必要がありました。家の中は静まり返っていて、家族はみんなすでに寝ていました。心ちゃんはそっと布団から抜け出し、暗い廊下をそろりそろりと歩きました。トイレに近づくと、彼女の心臓はますます早くなり、手に汗が滲んできました。

トイレのドアを開けると、ひんやりとした空気が彼女を迎えました。心ちゃんは息を止めて、中に入ります。暗闇の中で、彼女の目は必死に周囲を探り、何かが動く気配を感じ取ろうとしました。恐怖に震えながらも、どうにか用を足し、すぐに出ようとしたその時でした。

突然、トイレの奥からカサカサという音が聞こえてきました。心ちゃんは息を呑み、恐怖で足がすくみました。彼女は音のする方を見つめましたが、暗くて何も見えません。頭の中では友達の言葉がぐるぐると回り続けました。

「トイレの神様…」心ちゃんは小さくつぶやき、震える声で続けました。「ごめんなさい…掃除、ちゃんとします…だから、お願い…」

その時、トイレの窓から月明かりが差し込み、薄暗い中に何かが見えました。それはただのクモでした。小さなクモが壁を登っていただけでした。心ちゃんはホッと息をつきましたが、同時に自分の恐怖心の大きさに驚きました。

心ちゃんは急いでトイレを出て、廊下を駆け戻り、自分の部屋に飛び込みました。布団に潜り込んでしばらくの間、彼女は震えていましたが、やがてその恐怖も薄れていきました。

翌朝、心ちゃんは勇気を出して母親に昨夜の出来事を話しました。母親は優しく微笑み、心ちゃんを抱きしめました。「大丈夫よ、心ちゃん。トイレの神様なんて本当はいないの。怖い話を聞いてしまっただけだから、気にしないでいいのよ。」

母親の言葉に少し安心した心ちゃんは、その日から少しずつトイレの掃除を手伝うようになりました。掃除をすることでトイレの神様の恐怖から少しずつ解放される気がしたのです。そして、毎日少しずつ勇気を出してトイレに行く練習をしました。

ある日、心ちゃんは夜中にトイレに行く必要がありましたが、今度は恐怖心を乗り越えて一人で行けるようになりました。暗闇の中でも落ち着いて周りを見渡し、何も異常がないことを確認しました。彼女は少しずつ大人になり、恐怖心を克服していったのです。

それから数年後、心ちゃんは立派な高校生になり、怖がりな性格も少しずつ変わっていきました。彼女はあの夏の夜の経験を振り返り、自分の成長を感じることができました。

心ちゃんの家のトイレは今も変わらず古いままでしたが、彼女はもうそれを怖がることはありませんでした。彼女はトイレを綺麗に保ち、怖い話に惑わされることなく、前向きに生きていく強さを身につけていたのです。

こうして心ちゃんは、怖がりな自分を乗り越え、少しずつ成長していくことができました。彼女は今も時折、あの夏の夜のことを思い出し、自分の勇気と成長を誇りに思っています。








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