縁(えにし)

春秋花壇

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11歳 竹皮のアルバイト

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竹皮のアルバイト

絆は11歳の夏休みに、祖父の家で竹皮のアルバイトをすることになった。竹皮の仕事は、祖父の小さな竹細工工房を手伝うことだった。梅雨が明けた6月中旬から7月上旬の晴れた朝、竹林から落ちる竹皮を拾い集めるのが日課になった。

ある晴れた朝、絆は祖父と一緒に竹林に向かった。陽射しが強く、竹林の中は涼しいが湿気が多く、竹皮がたくさん落ちている。「竹皮は午前中に拾わないとカビてしまうから、しっかり拾うんだよ」と祖父が優しく教えてくれた。絆は竹皮を一本一本丁寧に拾い集め、9段階に分けて長さを測り、きちんと整えた。

しかし、竹皮を集めている最中に、絆は一枚の竹皮が非常に硬く、曲げると割れてしまいそうなのに気づいた。「おじいちゃん、これどうしたらいいの?」と尋ねると、祖父は笑顔で答えた。「乾燥しすぎてるからね、水をスプレーして布巾で包んでおけば、しばらくすると柔らかくなるよ。でも水に浸けるのはダメだよ、カビちゃうからね」と教えてくれた。

絆は祖父の言う通りに水をスプレーし、布巾で包んでしばらく置いてみた。すると、竹皮は少しずつ柔らかくなり、取り扱いやすくなった。絆はその変化を見て、自然の素材を扱う難しさと、その中にある知恵に感心した。

ある日、絆は竹皮のアルバイトの合間に、祖父に竹細工の技術を教わることにした。祖父は長年の経験と技術を惜しみなく絆に伝えた。「竹細工は心を込めて作ることが大事なんだ。焦らず、一つ一つ丁寧に仕上げるんだよ」と祖父の言葉が心に染みた。

夏休みが終わる頃、絆は祖父の工房で初めて自分の作品を完成させた。それは小さな竹細工の箱だった。祖父は絆の作品を見て、「よくできたね」と褒めてくれた。絆はその言葉が何よりも嬉しかった。

この夏休みを通して、絆は竹皮のアルバイトを通じて、自然の中で働く楽しさと、祖父との絆を深めることができた。そして、竹細工の技術だけでなく、心を込めて物を作ることの大切さを学んだのだった。

夏が終わり、絆は学校に戻ったが、祖父との思い出と学んだ技術は心に残り続けた。次の夏休みもまた、祖父の工房で過ごすことを楽しみにしている絆だった。
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