縁(えにし)

春秋花壇

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14歳の絆

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闇の中に 光を求めて
夢と現実が交差する
剣を手に 戦う勇気を持ち
星の輝きを追い求める

星空に浮かぶ 無数の輝き
その中に見るは 未来の光
闇を切り裂き 希望を描き
勇気を胸に 進む道

14歳の絆

さー、今日から3日間の陸上部の合宿。

噂では、3キロは体重が減るという。

「もうこれ以上痩せなくていいよ」

吐き捨てるように、岡野博子はつぶやいた。

彼女のあだ名は「もやし」

小学校3年生頃からの摂食障害でがりがりに痩せていた。

そして、アディクションが治った今も胸は洗濯板だった。

お尻だけは大きく成長して、まるでダチョウのように走る。

男子の心無い噂に心を痛めていた。

この頃の彼女は、勉強や運動にはほとんど興味を示さず、

推しの男子グループに夢中で

厳格な父親から、

「ミーハーな品性のないものばかり追い求める」

と、お叱りを受けることが多かった。

中二病真っただ中で、彼女に届いたラブレターを

父親が勝手に開封してしまったことに激昂していた。

彼女の部屋は二階の日当たりのいい広めの部屋だったのだが

鍵などをかけるドアもなく、階段を上ると勝手に入ることができた。

父親は、一輪挿しに花を飾ってくれたりしていたのだが、

何故かプライバシーがないといつも口にするようになっていた。

自己肯定感のなさは、どんどん彼女を変えていった。

洋服も下着も靴も勝手に買うことなど許されなかった。

それほど愛されて大切にされていたということなのだろうが、

その時の彼女にはその愛情を感じることはできなかった。

彼女の母親は、昼は百姓、夜は料理屋をして働きづくめに働いていたから、

ご飯を食べるときの挨拶くらいしか口を利くことはなかった。

小さな頃から、彼女の中に母親はいなかった。

そんな彼女が他の人たちと寝泊まりを一緒にするということは異世界の生活みたいなもので、

驚きと戸惑いの連続だった。

1年生の合宿で、他の女の子たちが着ているものをチェックし、

夜眠るときに聞く、親との生活は「隣の芝生は青く見える」

うらやましくてしょうがないような話ばかりだった。

ここにもし、女子カーストなるものが存在するならば、

最下層の底辺女子だと自負していた。

憧れの陸上部の顧問の先生は結婚してしまうし、

男子たちは、宇宙人のように訳の分からないことで騒ぎまくっている。

一人場違いな感じがして、それでも必死にみんなについていこうとする。

お風呂を薪で沸かしたり、みんなでカレーを作ったり

きゃあきゃあ、うししと笑って時は過ぎていく。

「腕をふれ、腿を上げろ」

叱咤激励の中で、ほんの少しでもタイムが伸びれば有頂天になっていく。

200メートルがセパレートでとれるその広めの校庭は、

キラキラと輝き青春の舞台にふさわしい。

腹筋、背筋、腿あげ、腕ふり、スタートダッシュ、

基本的な走りに噂通り体重は落ちていく。

休憩の時、井戸水で足を洗っていた。

すのこについた足跡を見て、男子が

「岡野、偏平足なんかー」

と、騒ぎ始めた。

「なにそれ」

「ほら、他の人の足跡を見てごらん?」

確かに私の足跡はベターッとしている。

他の人たちの足跡は、HANGTENのロゴみたいにくびれているのに……。

「これじゃあ、いいタイムは出ないよ」

と、一つ上の須藤先輩がささやいた。

須藤先輩は、色の浅黒い笑うとこぼれる白い歯が爽やかな面倒見のいいキャプテン。

「岡野、ちょっと来てごらん」

理科室と家庭科室に続く廊下まで行くと、

「ここに座って」

と、横に座ることを支持される。

「足を延ばして、足の指を10回、開く閉じるってやるといいよ」

「後、足の指でタオルを挟む、これも有効」

「そしたら、べた足が治るんですか?」

「まあ、君の努力次第かな?続けていれば改善はされると思う」

「ありがとうございました」

現代の100メートル女子自己最高タイムは13.4。

少しでも早くなれたら嬉しい。

的確な指導も受けられて気分は上昇。

この時から暇さえあれば、足の指を動かしている。

そして、ご飯のおいしいこと。

「よく噛んで食うんだぞ」

素直に、(((uдu*)ゥンゥンと頷いている自分がいる。

夜は、理科室に畳を敷いて、その上に布団を敷く。

理科室の壊れた水道が、ぽたんぽたんと夜の静寂を破っていく。

そんな中で、恒例のこわーい話。

「ひーーー」

ってなりながら、みんなでワイワイガヤガヤ楽しんでいる。

楽しかったなー。

カレーライスを4杯もおかわりしてるのに、最終日には3キロも体重が落ちている。

(過食だろ?)

そんな中で、同級生の柴田信子ちゃんと話をすることが増えていった。

彼女は、お勉強はそんなにできる子じゃなかったけど、

布団の下にスカートを敷いて寝押しをしたり

バッグの中のじぶんの荷物の整理がとても上手にできる子だった。

合宿が終わってから、彼女の家に遊びに行ったけどきちんと整理整頓された

素敵な小さな家だった。

「ダチョウがんばれよ!!」

男子にからかわれながら、中二の夏はこうして過ぎていく。

どうしてこんなに男子が気になるのかな?

別に好きな人がいるわけでもないのに……。

特に、田島淳君。

彼は、小学1年生で最初に隣に座った男の子だった。

整った顔立ちで、清潔感のある爽やかボーイ。

英語が得意で明朗快活。

(別に恋してるわけじゃないもん)

あわてて、視線をそらした。

最後の夜、校庭にござを敷いてみんなで寝っ転がって空を眺めた。

北斗七星や、北極星。

流れるようなミルキーウェイ。

今にも星が降るようだ。

広大な宇宙。

ちっぽけな自分。

なのに自分は自分が大嫌いだった。

それじゃあだめだとわかっているのに。

自分が自分育ててあげなきゃいけないとわかっているのに、

熱にうなされる幼児にように、自分を受け入れられないでいる。

「いつか、きっと笑い話になるさ」

だれかが、ぽつんとつぶやいた。

乾いた心にすーと染み入る言葉だった。


「秋の大会、優勝できるといいな~」

「いいなじゃなくて、優勝するんだよ!!」

「ファィトーー」

かすかな希望を胸に、かけがえのない思い出を紡いでいった。

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