お金がない

感謝状と詐欺の予兆

「感謝状と詐欺の予兆」

兵庫県三木市の緑が丘町にあるJA兵庫みらい緑が丘支店は、普段と変わらぬ静かな朝を迎えていた。6月6日、支店のスタッフたちは開店準備を整え、日常業務を始めると、通常通りの仕事が待っていた。しかし、この日は予想外の出来事が待っていた。

午前11時半、支店のドアが開き、66歳の男性が入ってきた。彼の顔には焦りが色濃く、手にはスマートフォンを握りしめていた。彼はカウンターに立ち、職員に向かって声を絞り出した。

「3億4500万円の入金が完了したってメールが来たんです。でも、重複送金になってしまって、出金できないって。記録を一時削除するために2万円を用意してほしいって、メールで指示が来たんです。」

男性の説明を聞いた職員、岡本裕文次長（48）は一瞬で違和感を覚えた。金融機関で働いている彼は、詐欺の手口に詳しく、こうした状況が詐欺の予兆であることをすぐに察知した。

岡本次長は冷静に男性に対応し、彼の説明を丁寧に聞いた。その後、彼はすぐに支店内の他の職員に連絡を取り、該当の案件が特殊詐欺の可能性があると確認した。詐欺の手口は、預金者に対して偽の入金通知を送り、その後、手数料や記録削除の名目で金銭を要求するというものだった。

「詐欺案件が増えている」と岡本次長は言い、男性に対してアドバイスをした。「もしおかしいと思ったら、すぐに交番に行くようにと言われています。とりあえず、私たちと一緒に近くの交番に行きましょう。」

男性は不安そうに頷き、岡本次長とともに支店を出た。彼の目には感謝と期待が入り混じっていた。岡本次長は、男性を安全に交番へと導き、警察に事情を説明した。警察官たちはすぐに対応し、男性が詐欺に引っかかることを防ぐことができた。

この事件の後、JA兵庫みらい緑が丘支店は、三木署から感謝状を受け取ることになった。支店内では、職員たちが集まり、感謝状を受け取るセレモニーが行われた。小西久美子店長（53）は、感謝状を受け取りながら、その重みを感じていた。

「お一人お一人の大事なお金を金融機関として守りたい」と小西店長は、目を潤ませながら言った。「心を引き締めて、未然防止に努めたいです。」

感謝状の贈呈は、単なる表彰ではなかった。それは、支店の職員たちが毎日心を込めて働いている証しであり、地域社会を守るための彼らの努力が形となった瞬間だった。支店内では、これからも特殊詐欺を含む様々な詐欺案件に対して、警戒を怠らず、常に地域住民の安全を第一に考えることが誓われた。

その後、支店では定期的に詐欺防止のための研修が行われ、全職員が詐欺の手口や対応策について再確認し、意識を高めていった。岡本次長の敏腕さと、支店全体の協力が、地域社会を守る一助となったことは、支店内外に深く刻まれる出来事となった。

そして、緑が丘町の小さな支店が、大きな社会的貢献を果たしたこの日の出来事は、今後も多くの人々に語り継がれることだろう。詐欺被害を未然に防ぐための努力と、その成果が、地域社会全体を支えていることを、支店の職員たちは心から感じていた。