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翼くんが将来、どんな仕事に興味を持ち始めるのか

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翼くんが将来、どんな仕事に興味を持ち始めるのか

14歳の翼くんは、まだ将来の夢を見つけられずに悩んでいた。周囲はどんどん自分の進路を決めていく中で、自分だけが立ち止まっているような気がしていた。だが、ある日ふとしたきっかけで、翼くんの心に新たな興味が芽生えた。それは、身近なところから始まった。

――

学校の授業が終わった後、いつものように自転車で帰宅していた翼は、その日も家の近くにある小さな公園で立ち止まった。公園のベンチに座っていると、近くのカフェからいい匂いが漂ってきた。翼はふとそのカフェの窓を覗き込んだ。店内には、親しみやすい店員さんが忙しそうに働いていたが、なんだか楽しそうにも見えた。

「やっぱり、ああいう仕事っていいな…」

翼はつぶやいた。彼はその瞬間、普段の生活の中で感じる「楽しさ」を仕事に活かせる場所があるかもしれないと考えたのだ。とはいえ、まだ漠然とした思いだった。

その夜、夕食を一緒に食べていると、父親が話しかけてきた。

「おい、翼。今日もいろいろ考えてるみたいだな。」

父親の言葉に、翼は少し驚いた。自分が何を考えているのかを、父親にうまく伝えたことはなかった。しかし、父親はそんな翼の心の動きを理解しているようだった。

「お前、最近どうした?夢とか、将来やりたいことが見つかったのか?」

「うーん…まだ決まってないけど、カフェとか、料理とか、そういう仕事が楽しそうだなって思った。」

父親は一瞬、驚いた顔をしたが、すぐに優しく微笑んだ。

「お前の好きなことを大事にしろよ。無理に決めることはないけど、興味があるなら、まずはそれを少しずつ学んでみるといい。将来の仕事なんて、最初から決まっているわけじゃないからな。」

その言葉が翼の胸に響いた。何かに夢中になってみることが、将来に繋がる一歩になるかもしれない。カフェや料理に興味を持ち始めた翼は、次の日からその分野について少しずつ調べてみることにした。

――

数日後、学校の帰り道にふと目に入ったのは、地域の料理教室のポスターだった。「初心者向けクッキングクラス」の文字が大きく書かれていて、さらに「親子で参加歓迎」とある。その瞬間、翼は心が躍るのを感じた。

「これだ!」

自分にとって初めての挑戦の場として、この料理教室がぴったりだと感じた翼は、迷わず家に帰って母親にその話をした。

「料理教室に行ってみたいんだ。」

母親は少し驚きながらも、すぐに賛成してくれた。

「いいわよ、翼。やってみたいことが見つかったなら、私も応援するよ。」

翌週末、翼と母親は一緒に料理教室に参加した。クラスには親子連れや若いカップルなどが多く、初対面でもみんなが和気あいあいとした雰囲気だった。翼は少し緊張しながらも、先生の指導の下で包丁を使い、材料を切るところから始めた。最初はぎこちなかった手つきも、だんだんと上達していく。教室で作った料理は、見た目も味も素晴らしく、先生からも褒められた。

その日の帰り道、翼は母親にこう言った。

「楽しかった!また行きたい!」

母親は嬉しそうに笑いながら言った。

「そうね、これからも続けてみたら?将来の仕事にも繋がるかもしれないし。」

翼はその言葉を胸に刻みながら、自分の中で何かが変わり始めていることを感じた。これまで漠然としていた自分の「将来像」が、少しずつ形を持ち始めたような気がした。

――

月日が経つにつれて、翼はますます料理やカフェについての興味を深めていった。学校の図書館で料理本を借りては、試しに自分で作ってみたり、カフェ巡りをして店舗の雰囲気やメニューの工夫を観察したりするようになった。

その中で気づいたのは、ただ料理を作るだけでなく、人々に「おいしい!」と思ってもらえる瞬間が大きな魅力だということだ。人々を笑顔にするために、どんな料理やサービスを提供すれば良いかを考えることが、翼にとってはとても楽しく、やりがいが感じられることだった。

ある日、母親と一緒に参加していた料理教室の先生に、翼は真剣な面持ちでこう尋ねた。

「先生、将来、カフェを開きたいと思っているんです。どうすればうまくいきますか?」

先生は少し驚いた顔をしたが、やがて優しく答えた。

「それは素晴らしい夢だね。でもね、ただ料理が得意だというだけでは足りないんだよ。お客様とのコミュニケーションやお店の運営、スタッフのマネジメントなど、いろんなことを学ばなきゃいけない。けれど、夢を持ち続けることが一番大事だよ。」

その言葉は、翼の中で確かな目標を作り上げていった。

――

数年後、翼は高校を卒業した後、専門学校で飲食業の知識や経営について学ぶことを決めた。目指すのは、自分だけのカフェを開くこと。それはまだ遠い未来のことかもしれないが、翼は確実にその一歩を踏み出していた。
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