「俺は小説家になる」と申しております

エチュベと粗引きチョリソー

エチュベと粗引きチョリソー

どうやら、10年ぶりくらいに風邪をひいてしまったみたい。贅沢保湿のティッシュがどんどんなくなっていく。ああ、免疫力が落ちているのかな？「馬鹿は風邪をひかない」って昔から言うのに、馬鹿じゃなくなってしまったのかしら？残念><

夜中の冷蔵庫の明かりがぼんやりと部屋を照らす。ついさっきまで眠っていた体が、何かを求める声を上げ始めた。それは、夢の中で見たピザだった。食欲の魔法にかかり、私は台所へと足を運ぶ。残り物の食材と、庭から摘んできた新鮮なバジルを思い浮かべる。

「さて、何を作ろうかな」と、私は冷蔵庫の扉を開けた。中には、玉ねぎ、アスパラガス、にんにく、ピーマン、ベーコンが見えた。これだけあれば、十分にピザを作ることができそうだ。あとは、とろけるチーズと粗引きチョリソーを用意する。

まずは、エチュベの調理法を頭に浮かべる。エチュベとは、素材の持つ水分を生かす調理法だ。じっくりと素材の旨味を引き出すため、私は切った玉ねぎを鍋に入れ、少量のオリーブオイルで炒め始めた。ほんのり甘い香りが広がり、夜中の静寂に彩りを添える。

次に、にんにくとアスパラガスを加え、炒める。食材が柔らかくなっていく様子を見ながら、次はピーマンを追加した。色とりどりの野菜が鍋の中で踊るように混ざり合う。「この色合い、いい感じだ」と、自分に言い聞かせる。ここに、少しだけ粗引きチョリソーを加えることにした。スパイシーな香りが広がり、思わず笑みがこぼれる。風邪のひきはじめだからこそ、体が欲するものを作りたかった。

「チーズは後で」とつぶやきながら、火を弱め、全体がしんなりするまで煮込む。ちょうど良い頃合いになったら、火を止めて、ボウルに移し替える。そして、ピザ生地の上にたっぷりと盛り付ける。最後に、とろけるチーズをたっぷりと振りかけて、オーブンに入れる。「これで美味しく焼けるはず」と心の中で呟き、焼きあがるまでの時間を待つ。オーブンの中でチーズが溶けて、色が変わる様子が見える。

数分後、香ばしい香りが部屋中に広がり、期待感が高まる。焼きあがったピザを取り出すと、熱々のチーズが伸びていく。「いただきまーす！」と声をかけながら、ピザを一切れ切り取って口に運ぶ。「うん、美味しい！」一口食べた瞬間、体が温まる。風邪のせいで感じる寒気が和らぎ、満足感が広がる。ベーコンの旨味、チョリソーのスパイシーさ、野菜の甘み、全てが一つにまとまって、深い味わいを生み出している。

食べながら、思い出すのは家族との食卓。子供の頃、母が料理してくれた思い出の味が、ふと蘇る。そんな温かい瞬間が、風邪をひいている今の私を支えてくれる。「食べ物って、やっぱり特別だな」と、私は改めて感じる。風邪をひいていても、自分が作った料理で心が満たされることができるのは、幸せなことだ。栄養が体にしみわたり、心も温まっていく。

ピザを食べ終えた頃、窓の外は静まり返っていた。周囲の音が消え、ただ自分の心音だけが聞こえる。そんな夜に、料理をすることの楽しさと、食べることの喜びを再確認できた。「明日も、頑張ろう」と決意しながら、私は皿を片付け、キッチンを整えた。風邪をひいたからこそ気づけたことがあった。心と体を満たす食事が、私を支えているのだ。

おやすみなさい。明日も素晴らしい一日になることを願って。

気がつけば、台所には家族の笑い声が響いていた。「おいしいー！」子供たちが嬉しそうに言う。手洗いやうがいを励行していたけれど、やっぱり食べ物は力をくれる。「たまにはまーいっかー」と思いながら、私は果物の王様である柿を取り出し、ビタミンCも補給する。

人事を尽くして天命を待つ。風邪をひいた時、体が欲するものを作るのは、本当に大切なことだと実感した。たまには、料理を楽しむことができる時間を自分に与えてもいいのかもしれない。