「俺は小説家になる」と申しております

春秋花壇

文字の大きさ

大中小

1,395 / 1,690

プールサイド小景

しおりを挟む

プールサイド小景

夏の午後、青空の下でキラキラと光るプールの水面。瑞希は、プールサイドの白いタオルの上に寝転んで、まどろみながら周囲の景色を眺めていた。彼女の視線の先には、子供たちが水の中で楽しそうに遊ぶ姿があった。笑い声や水しぶきが心地よい音楽のように響き、瑞希はその光景に心を和ませていた。

彼女は、毎年この夏のひとときを楽しみにしている。忙しい日常から解放されるこの瞬間が、自分にとっての最高の癒しだ。プールサイドには、色とりどりのビーチボールや浮き輪が散らばり、リゾート気分を盛り上げていた。

瑞希の隣には、幼なじみの亮が座っていた。彼は、いつも彼女を守るように隣にいてくれた。二人は子供の頃からの友達で、互いに支え合う存在だった。亮は、陽射しを避けるためにサングラスをかけており、涼しげな表情で瑞希を見つめていた。

「やっぱり、夏はプールだな」と亮が言った。

「うん、最高だね」と瑞希は笑顔で応えた。「でも、もう少し涼しいところがいいかも」

「そっか。じゃあ、今から水の中に入ってみる？」と亮が提案した。

瑞希は考えたが、すぐに頷いた。「うん、そうしよう！」

二人はプールの端まで歩き、足を水に浸けた。ひんやりとした水が、じわりと心地よく感じる。彼女は、まるで子供のようにはしゃいで水に飛び込んだ。

水中は、一瞬の冷たさとともに、彼女を包み込んだ。瑞希は、心から笑いながら、すぐに水面に浮かんできた。亮も後を追いかけ、二人はしばらく遊びながら、思い出の中にいるかのように楽しんだ。

そのとき、プールの向こう側で見かけた女性が目に入った。彼女は、真っ白なビキニを着て、優雅に水中を泳いでいた。その姿はまるで人魚のようで、瑞希は思わず見惚れてしまった。彼女の周りには、男たちが集まり、熱心に話しかけている。

「すごいな、あの子」と瑞希はつぶやいた。

「うん、魅力的だね」と亮も目を向けた。彼は一瞬、彼女に心を奪われた様子だったが、すぐに瑞希の方を見て微笑んだ。「でも、瑞希も負けてないよ」

瑞希は照れ笑いをしながら、「ありがとう。でも、あの子みたいには泳げないよ」と言った。亮は彼女の手を取り、優しく引き寄せた。

「大丈夫、僕が教えてあげるから」と亮が笑顔で言った。

瑞希は一瞬、ドキッとした。彼の目が自分を見つめるその瞬間に、心臓が早鐘のように打った。彼とは幼なじみだが、いつも以上に近く感じるこの瞬間が新鮮だった。まるで、何かが変わったような気がした。

二人は水の中で、手を取り合いながら泳ぎ始めた。亮がリードし、瑞希もそれに続く。彼の優しい指導に従いながら、少しずつ自分のペースを取り戻していく。水の中での感覚が心地よく、瑞希は笑顔を絶やさなかった。

「ほら、見て！もうこんなに泳げるじゃん」と亮が声をかける。

「本当だ、楽しい！」と瑞希は元気に答えた。彼との時間が、まるで魔法にかけられたように感じた。泳ぎながらも、彼女の心の中には、かすかに特別な感情が芽生え始めていた。

しばらく遊んだ後、二人はプールサイドに戻った。水から上がると、陽射しが一層強くなり、瑞希の肌は温かく感じた。彼女は、タオルで体を拭きながら、隣に座る亮をちらりと見た。

「ねえ、これから何か食べに行かない？」と瑞希が提案した。

「いいね、何が食べたい？」と亮が返した。

「アイスクリームが食べたい！」と瑞希は嬉しそうに言った。

「よし、じゃあアイスクリーム屋さんに行こう」と亮が立ち上がった。

二人は、プールサイドの喧騒を離れ、近くのアイスクリーム屋へ向かった。明るい日差しの中、瑞希は亮と一緒に歩くことが、何よりの楽しみだと感じていた。

アイスクリーム屋に着くと、瑞希は色とりどりのアイスクリームを見つめ、どれにしようか迷っていた。その姿を見た亮は、「一緒に選ぶ？」と優しく声をかけてくれた。

瑞希はうれしそうに頷いた。「じゃあ、私が食べたいのは、ストロベリーとミントのダブル！」

亮も同じようにアイスクリームを選び、二人は笑顔でアイスを手に入れた。暑い夏の午後、冷たいアイスクリームの甘さが心に広がっていく。

「これ、最高！」と瑞希は満面の笑みを浮かべた。亮も嬉しそうに頷き、二人は楽しい会話を交わしながら、アイスクリームを味わった。

ふと、亮が真剣な表情に変わった。「瑞希、実は最近思っていることがあるんだ」

その言葉に、瑞希はドキッとした。何か特別なことを言おうとしているのだろうか。心が高鳴り、期待と不安が入り混じった。

「実は、瑞希ともっと一緒にいたいって思ってる」と亮が続けた。

瑞希は驚き、心臓が大きく鼓動した。「私も、亮と一緒にいるのが楽しいと思ってるよ」

その瞬間、二人の心が通じ合ったように感じた。プールサイドの明るい夏の午後、彼らの友情が新たなステージへと進む予感がした。

夏の終わりが近づいても、二人の関係は色鮮やかに広がっていった。プールサイドの思い出が、瑞希の心に特別な輝きを残し、これからの季節も共に歩んでいくことを強く願っていた。

しおりを挟む