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虚無の彼方へ

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虚無の彼方へ

日が昇り、また一日が始まる。目の前の画面には無数の文字が並び、カーソルがチカチカと点滅している。大量に生産された言葉たちは、まるで私を嘲笑うかのように虚空に漂っている。どれだけ書いても、どれだけ紡いでも、24時間経てばすべてが無意味になる。そう思う日が、今日もやってきた。

断捨離された部屋にいるような感覚だ。無駄を削ぎ落とし、必要なものだけを残したはずの部屋。しかし、その整然とした空間にはどこか冷たさがあり、空虚さが漂っている。私の書く小説も、そんな部屋のように感じられる。表面は整っているが、何もない。心がこもっていない。深みがない。

「また今日も0点か」私は小さく呟く。投稿サイトにアップした小説の評価はいつも変わらない。夜を越え、朝が来れば、その点数はゼロに戻っているような感覚だ。どれだけ工夫を凝らし、時間をかけても、その結果はいつも同じ。虚しい。

「馬鹿みたいだな」そんな思いが心の中で膨らんでいく。ネタを探して、頭を悩ませ、言葉を紡ぎ続ける日々。しかし、その努力は報われない。書いたものは読まれないし、評価もされない。SNSのタイムラインを流れる他の作家たちの作品には、キラキラとした称賛の声が溢れている。それに比べて、自分は一体何をしているのだろうか。

私は一日中、小説を書いている。机に向かい、無心でキーボードを叩き、物語を作り上げる。そのプロセス自体は嫌いではない。むしろ、好きだ。それが私の唯一の居場所だと思っているからだ。しかし、結果が伴わないと、次第にその楽しさも色褪せていく。

机の上には、開かれたノートが置かれている。そこには、未来の物語のためのアイデアがいくつも書き込まれている。新しいキャラクター設定、新しいプロット、新しい世界観。それらがどれだけ練られていても、私の心はもう期待を持てなくなっていた。「どうせまた評価されないんだろう」そんな自己否定が頭の中を巡る。

一歩外に出れば、街はいつも通りに動いている。人々は忙しそうに行き交い、日常が続いている。けれど、私はその流れに乗れないでいる。自分だけが取り残されているような、そんな孤独感が募る。「他の人たちは、もっと価値のあることをしているんだろうな」と、漠然と考えてしまう。

書くことをやめればいいのかもしれない。そうすれば、この苦しみから解放されるのかもしれない。しかし、筆を止める勇気はない。書かなければ、自分が何者なのか分からなくなってしまう。書くことでしか、自分の存在意義を確認できないのだ。

「もう、やめようか」そんな思いがふと頭をよぎる。しかし、同時に、書かなければ何も残らないという恐怖が胸を締め付ける。断捨離された部屋のように、何もない空間に自分が投げ出されてしまうのではないかという不安が、私を動けなくしている。

またキーボードに手を伸ばし、何かを書こうとする。しかし、手は止まる。言葉が浮かばない。頭の中は真っ白で、まるで霧の中に迷い込んだような感覚だ。書くことができない自分に、苛立ちが募る。

「どうしてこんなに無意味なんだろう」そう思わずにはいられない。評価がないことがすべてではないと分かっていても、人間の心は弱いものだ。誰かに認められたいという欲求が、私の中で大きくなりすぎていた。

ふと、窓の外を見る。秋の風が木々を揺らし、少しずつ葉が舞い散っている。季節は確実に進んでいるのに、自分だけが停滞しているように感じた。何かを捨てなければ、前に進めないのだろうか。それとも、このまま書き続けていれば、いつか光が見えるのだろうか。

「やっぱり、書きたいんだよな」と、自分に問いかける。答えは出ない。けれど、机に戻り、再びキーボードに手をかけた。書くことが無意味だと思う日もあれば、書くことで救われる日もある。その狭間で、私は今日もまた言葉を紡ぐ。

たとえ、それがまた0点になろうとも。

「24時間経てば、また新しい一日が来るんだ」そう自分に言い聞かせ、私はゆっくりと打鍵を始めた。






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