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消失点

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「消失点」

地球暦2145年、テクノロジーの進化は人類の生活を一変させた。都市は空中に浮かび、個人の思考はデジタル化され、自由に情報とつながることができる。しかし、その進化には影があった。突如として現れた「消失現象」によって、都市の一部が、何の前触れもなく消えていく事件が発生し始めたのだ。

それはある日、突如としてやってきた。何の音も、何の光もなく、ただ一瞬で人々や建物、全てが消えてしまう。その現象は「ブラックアウト」と呼ばれた。

「また消えたのか…」

科学者の秋山リオは、眉をひそめてホログラムに映し出された報告書を眺めていた。今回の消失は、リオの生まれ故郷でもある東部第七都市で起きたという。そこには、彼の両親も住んでいた。

「数万人が一瞬で…」彼は手のひらを握りしめたが、どうすることもできなかった。

消失現象は、近年頻繁に起こるようになり、政府も対策に乗り出していたが、原因は未だに不明。消えた人々や物がどこへ行ってしまったのか、戻る術はあるのか、全てが謎に包まれていた。

「リオ、これを見てくれ」

仲間の研究員、ナオミが焦った表情で彼にデータを渡した。彼女は消失現象の解析を担当している。

「今朝の消失現象の前後に、異常なエネルギーパターンが検出されたわ。これを見て…」

ホログラムに映し出されたデータには、確かに異常なエネルギー反応が記録されていた。それは、今までのブラックアウトと共通する特徴を持っているが、今回は違う点が一つあった。

「この反応…以前にあったか?」リオが聞くと、ナオミは首を横に振った。

「いいえ、これは初めてのパターンよ。だけど、これがどこから来ているのかがわかったの。」

ナオミが指差した場所には、地球の衛星軌道上に存在する巨大な宇宙ステーション「アルカディア」の座標が示されていた。

「まさか、アルカディアが関係しているというのか?」リオは驚いた。アルカディアは人類の英知を結集して作り上げた、次世代の宇宙開発基地だ。その内部には最高機密の技術が集められているが、なぜそこが関係するのかは謎だった。

リオとナオミはすぐにアルカディアに向かうことを決めた。アルカディアは厳重なセキュリティ下にあったが、研究チームのメンバーである彼らは、特別な許可を得て乗り込んだ。

「ここで何が行われているのか、直接確かめるしかない」

アルカディアの内部は静かで、まるで何も異常が起きていないかのようだった。しかし、リオたちが調査を進めるうちに、ある不可解な部屋にたどり着いた。そこには、巨大な装置が設置されており、異常なエネルギーが渦巻いていた。

「これが、消失現象の原因か?」リオはつぶやいた。装置には「次元干渉装置」と記されたプレートが貼られていた。

「次元干渉装置…?」ナオミも目を見開いた。「この装置が、消失を引き起こしているのか?」

彼らが調べていると、突然装置が起動し、異様な光が部屋全体に広がった。リオとナオミはその場に留まろうとしたが、体が引き寄せられる感覚に襲われた。次の瞬間、彼らは見知らぬ場所に立っていた。

「ここは…どこだ?」

目の前に広がるのは、荒れ果てた大地。見上げると、そこにはアルカディアも地球もない。空は暗黒で、何も存在していないように感じられた。

「まさか、これが…消失した先?」

リオは周囲を見回しながら、消えたはずの東部第七都市の人々がこの世界に囚われているのかもしれないという考えが頭をよぎった。だが、辺りは静まり返り、人影は見当たらなかった。

「ここがどこで、どうやって戻るのか調べるしかないな」

ナオミと共にこの異次元世界を探索する中、彼らは次第にある仮説にたどり着いた。この次元は、元々存在していたが人間が干渉すべき場所ではなかった。それを、アルカディアの実験が誤って開いたのだと。

「消失現象は、次元のバランスを崩してしまった結果だ」リオは断言した。「このままでは、地球全体がこの世界に飲み込まれてしまうかもしれない。」

彼らは急いで元の世界に戻る手段を探し、やっとのことで異次元を開いた装置を逆操作する方法を見つけた。手順通りに操作を行うと、再び光が彼らを包み込んだ。

次に目を開けたとき、彼らは元のアルカディアに戻っていた。すぐに装置の電源を完全に切り、消失現象の原因となっていた実験を終わらせた。

「消失は…止まったんだな」リオは息をつき、ナオミもほっとした表情を見せた。

地球は救われたが、消えてしまった人々は戻らなかった。それでも、リオは彼らがどこかで生き続けているのだと信じたかった。









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