「俺は小説家になる」と申しております

無間地獄の作家

無間地獄の作家

木村明は、もう何年も小説を書き続けてきた。彼の夢はいつか自分の作品が認められ、人気作家になることだった。最初は純粋な情熱で書き始めたが、次第に現実の厳しさが彼を打ちのめすようになった。

明はある日、執筆サイト「アルファポリス」に自身の小説を投稿することにした。そこは多くの作家が集い、読者の評価によってポイントが付けられるシステムがある。ポイントが高ければ高いほど、作品が注目され、出版のチャンスが広がる。明にとって、これが最後の賭けのようなものだった。

投稿した初日、彼は期待と不安が入り混じる気持ちでサイトをチェックした。しかし、思い描いていたような反響はなかった。数時間が経っても、ポイントはわずかに10ptだけだった。

「まあ、最初はこんなものだろう。きっと後から増えるさ」

自分にそう言い聞かせながら、明は書き続けた。毎日、仕事の合間に少しずつ文章を綴り、少しでも多くの人に読んでもらえるよう、工夫を凝らして投稿を続けた。しかし、累計ポイントは一向に増えず、10,000文字を書き上げた時点でポイントはたったの100ptだった。

「こんなに頑張っているのに、どうして評価されないんだ…」

明は焦燥感と絶望感に襲われた。毎日毎日、何時間もかけて書き上げた作品が、まるで誰にも読まれていないかのように感じられた。夜も眠れず、次の日の仕事にも影響が出るほどだったが、それでも彼は諦めることができなかった。

そして、投稿を続けるたびに感じる虚しさは、まるで無間地獄のようだった。ポイントが増えることはなく、どれだけ書いてもそれが報われる兆しが見えなかった。10,000文字を書いて100ptしかもらえなかった明は、これが「無間地獄」なのかと感じるようになった。

「一体、どこが悪いんだろう？ 何が足りないんだ？」

明は自分を責めることしかできなかった。だが、答えは見つからない。試行錯誤を繰り返しても、結果は変わらなかった。自分の才能の限界を感じるたび、心は少しずつ壊れていった。

ある日、明はとうとう限界を迎えた。疲れ果てた彼は、ふとアルコールに手を伸ばし、現実から逃れるように酔いしれることにした。酔いが回るにつれて、彼の中でくすぶっていた感情が爆発した。

「こんなに苦しんでまで書き続ける意味があるのか？ 誰も読んでくれない、誰も評価してくれない。それなら、いっそ全部やめてしまったほうが楽じゃないか！」

しかし、その声は誰にも届かない。彼が執筆をやめたところで、誰も彼の苦しみを知ることはないのだ。アルコールに溺れたまま、明は心の中で叫び続けた。

翌朝、二日酔いの頭痛に苦しみながら、明はもう一度サイトを開いた。ポイントは相変わらず増えていない。だが、その瞬間、彼はあることに気づいた。

「こんなにも書いてきたんだ。俺が今ここでやめたら、これまでの努力がすべて無駄になる」

無間地獄に囚われたかのような絶望感の中で、彼はわずかな希望の光を見出した。たとえ評価されなくても、たとえ誰にも読まれなくても、彼がこれまで書いてきたものは確かに存在する。無間地獄のような苦しみを味わいながらも、彼は自分のために書き続けることを選んだ。

そして、ある日突然、彼の作品に少しずつコメントがつき始めた。評価されるのを待つのではなく、彼自身が読者と向き合い、コミュニケーションを取り始めた結果だった。やがて、彼のポイントはゆっくりとではあるが、少しずつ増えていった。

木村明は、無間地獄のような辛い日々を乗り越え、少しずつ前に進んでいくことを決意した。ポイントの増減に囚われず、ただ自分の作品に誇りを持ち、書き続けることを選んだのだ。彼の歩みは遅くても、その一歩一歩が確かなものだということを、今では理解している。

「これが、俺の道だ」

明はそう呟きながら、新しいページを開き、また物語を書き始めた。