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どんだけ歩いてなかったんだよ

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どんだけ歩いてなかったんだよ

散らかった部屋を片付け、冷蔵庫の中に栄養価の高い食材を詰め込み、やっとまともな生活のスタートラインに立った。だが、いざ外に出てみると、歩くことすらこんなに辛いとは思わなかった。今日は自分を変えるために必要な物を買いに出かける決意をした。どこから手をつけるべきかもわからないが、一歩ずつ進むしかない。

外に出ると、空気が意外と新鮮で、少しだけ心が軽くなるような気がした。でも、すぐに現実が僕を容赦なく迎えた。歩き出してからほんの数分で、腰がぐらぐらし始め、膝ががくがくしているのを感じた。

「どんだけ歩いてなかったんだよ…」

つぶやきながら、僕は自分の足元を見下ろした。いつからこんなに運動不足だったのだろう。どうやら、過去の自分は完全に体を使わない生活をしていたらしい。体が急に動き出したのが、ここまで辛いとは思ってもみなかった。

近くのスーパーに辿り着いた頃には、すでに息が上がり、まるで腰が曲がったおじいさんのように歩いていた。歩くたびに、ふとしたことで膝が笑い、足が痛む。体中の筋肉が悲鳴を上げているようで、自分がどれだけ運動から遠ざかっていたかを痛感した。

スーパーの入り口にたどり着くと、ひとまずその場に立ち止まり、深呼吸をしてからドアを開けた。店内に入ると、冷たい空気が体を包み込み、少しだけ楽に感じられたが、それでも歩くたびに体が痛むのは変わらなかった。

「何から買おうかな…」

食材の棚を見ながら、心の中で計画を立てた。まずは栄養価の高い野菜と果物を選び、少しずつでも体を健康にしようと考えた。買い物リストを思い出しながら、必要なものをカートに入れていく。

しかし、カートを押すことさえ一苦労で、冷凍食品の棚に立ち寄ったときには、足の筋肉が悲鳴を上げていた。気をつけて歩いても、体全体がだるくて、もはや買い物どころではない。ようやくレジに辿り着くと、体力の限界を感じていた。

レジを終え、重い荷物を抱えながら家路についた。途中で何度も立ち止まり、肩を休めながら歩く羽目になった。帰り道では、もう少しで力尽きそうな自分に呆れつつも、歩くことがこれほど大変だとは思わなかった。

帰宅すると、家に戻るまでにどれほど疲れたかを感じるとともに、少しの達成感もあった。これが第一歩だ。これから少しずつ、運動を取り入れながら健康を取り戻していくつもりだ。だが、今日はこれで満足しなければならない。

部屋に戻り、購入した食材を冷蔵庫に片付けながら、疲れた体を少しでも休めるために座り込んだ。心の中では、これからの自分に対して期待と希望を抱きつつ、まずは体力を取り戻すためにゆっくりと休息を取ることに決めた。

これが新しい自分を作り上げるためのスタート地点なのだ。体を動かすことの大変さを実感しながらも、少しずつ前に進んでいく覚悟を決めた。どれほど歩いていなかったかを痛感しながらも、これからの生活に希望を持って、一歩一歩進んでいこうと心に誓った。








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