「俺は小説家になる」と申しております

ときめきの先に

「ときめきの先に」

夏休みの終わりが近づいてきたある日、ゆりは小さな胸の奥に新しい感情を抱いていた。小学校の最終学年、6年生になって以来、何かが変わり始めているように感じていた。それは体の成長だけでなく、心の中に芽生えた何か。ワクワクとドキドキが入り混じり、まるで心の中に小さな光が揺れているようだった。

「なんだろう、この感じ…？」ゆりは自分でも説明がつかない感情に戸惑いつつも、そのときめきを楽しんでいた。友達と過ごす時間、好きな本を読んでいる時、そして何よりも、最近はクラスの男の子の一人を思い浮かべると、その感情が一層強くなるのだ。

彼の名前はたけし。クラスの人気者で、スポーツも勉強も得意だった。ゆりは彼のことを特別に意識するようになった自分に気づき、驚いていた。これまで友達としか見ていなかった男の子に、こんな感情を抱くなんて思ってもみなかった。

ある日、夏休みの宿題を片付けようと図書館へ向かう途中、ゆりは偶然たけしに出会った。彼は一人で歩いていて、こちらに気づくとにっこりと笑って手を振った。その瞬間、ゆりの胸がドキッと高鳴った。

「こんにちは、ゆり。」彼の声が耳に届くと、ゆりは急に恥ずかしくなり、顔を赤くした。

「こ、こんにちは、たけし。」どうしようもなくぎこちない返事をしながらも、心の中はときめきでいっぱいだった。

「図書館に行くの？」たけしが尋ねると、ゆりは小さくうなずいた。

「うん、宿題がまだ終わってなくて…」

「僕もだよ。良かったら一緒に行かない？」彼の提案に、ゆりの心臓はまたもやドキドキと鳴り始めた。二人で図書館に行くなんて、まるで小さな冒険のように思えた。

「うん、一緒に行こう！」ゆりは少し緊張しながらも、嬉しさを隠せずに答えた。

図書館に向かう途中、二人は学校のことや夏休みの思い出について話した。ゆりはたけしとの会話が楽しくてたまらなかった。普段はそんなに話す機会がなかっただけに、新鮮で、何もかもが新しい発見のようだった。

図書館に到着し、それぞれの宿題に取り組み始めると、ゆりはたけしが近くにいることを意識しながらも、集中しようと努力した。しかし、彼の存在が気になって、時折ちらりと彼の方を見てしまう。そんな自分にまたドキドキしてしまうのだった。

「どうしたの？」たけしが笑顔でゆりを見つめる。彼はゆりの視線に気づいていたらしい。

「な、何でもないよ！」ゆりは慌てて目をそらし、顔を伏せた。

たけしは優しく微笑んだ。「そう？でも、もし何かあったら言ってね。僕、力になるから。」

その言葉に、ゆりの心は温かさで満たされた。彼の優しさが、さらに彼への気持ちを強くさせた。

時間が経つにつれて、ゆりは自分の中で何かが変わっていくのを感じていた。この気持ちは単なる憧れではない。彼女自身が少しずつ大人になりつつある証拠だった。勇気を出して、たけしとの距離を縮めていくことにワクワクしながら、これからどうなるのかという期待感が、ゆりの心をさらにときめかせていた。

その日の帰り道、たけしと並んで歩くゆりは、以前よりも少しだけ自信を持っている自分に気づいた。彼女はただの子供ではなくなりつつあるのだ。心の中で芽生えたこの感情を大切に育てていきたい、そんな思いが彼女の胸に広がっていた。

「また一緒に勉強しようね。」たけしが別れ際に言った言葉に、ゆりは笑顔で答えた。「うん、またね！」

その後、家に帰ると、ゆりは自分の部屋で窓から夕焼けを眺めながら、今日の出来事を振り返っていた。成長するってこういうことなんだ、と彼女は感じた。心がときめき、少しずつ自分が変わっていく感覚。それはワクワクとドキドキが混じり合い、これからの未来への期待感をさらに膨らませていった。

「これからも、勇気を出して進んでいこう。」ゆりはそっと呟き、明日が来るのを楽しみにしながら、少しだけ大人びた気持ちでその日を締めくくった。

終わり

この物語は、成長期にある少女が新たな感情に気づき、それを受け入れていく姿を描いています。ワクワクとドキドキの中で、自分自身が変わっていくことの喜びや、未来への期待感を感じる様子が中心となっています。