「俺は小説家になる」と申しております

春秋花壇

文字の大きさ
上 下
1,017 / 1,782

諦めたらそこで試合終了だよ

しおりを挟む
諦めたらそこで試合終了だよ

秋風が吹く中、都心の公園では人々が穏やかな時間を過ごしていた。しかし、その公園の隅にある小さな広場では、一人の青年が必死に自分と向き合っていた。彼の名前はショウ。年齢は20歳で、大学の体育会系クラブに所属しているが、最近の彼の心は揺れていた。

ショウはバスケットボールチームの一員として頑張ってきたが、最近の試合で連続して負けてしまい、自信を失っていた。彼のチームは地区大会で敗退の危機に直面しており、ショウ自身も自分の能力に疑問を抱いていた。練習が終わると、公園の広場で一人黙々とシュートの練習をする日々が続いていた。

「こんなにやっても、全然うまくならない。」ショウは自分に対して愚痴をこぼしながら、何度もリングに向かってボールを投げた。シュートが外れる度に彼の心は折れそうになり、手のひらには汗がじんわりと滲んでいた。

そんな彼に向かって、ふとした瞬間に響いた声があった。「諦めたら、そこで試合終了だよ。」

その声に振り向いたショウの目に映ったのは、年配の男性が一人、ベンチに座っている姿だった。彼はスポーツウェアを着ていて、見た目は穏やかだが、その眼差しには深い経験が感じられた。

「おっしゃる通りですけど…」ショウは困惑した表情で答えた。「今の自分にはどうしても無理だと思えて…」

男性は微笑んで、ショウに向かって手を差し伸べた。「一緒に練習してみよう。お前が悩んでいる姿を見て、どうしても助けたくなったんだ。」

ショウは少し戸惑いながらも、その申し出を受け入れた。男性と一緒に練習を始めると、彼はすぐにその技術と経験の豊かさに驚かされた。男性は的確なアドバイスをしながら、ショウにシュートのフォームやメンタル面でのコツを教えてくれた。

「ショウ、お前のシュートは素晴らしい。でも、時には自分を信じることも大切だ。自分を信じることで、他の誰も信じる力が湧いてくる。」男性は言った。

その言葉はショウの心に深く響いた。彼はこれまで、自分を信じることができず、ただ努力するだけの毎日だった。しかし、男性の言葉と実践を通じて、自分を信じる力が徐々に芽生えていくのを感じた。

「ありがとうございます。」ショウは感謝の気持ちを込めて言った。「僕、頑張ります。」

男性は頷き、練習を終えると、「いつでもここに来て練習しなさい。試合が終わったわけではない。まだまだ可能性はある。」と優しく言った。

その後、ショウは練習に励む毎日を続け、チームメートと共に試合に向けての準備を整えていった。試合当日、ショウと彼のチームは、緊張と期待の中でコートに立った。彼はこれまでの努力と、男性から教わった信じる力を胸に、自信を持ってプレーした。

試合は白熱し、双方のチームが一歩も譲らない戦いを繰り広げた。最後の数分間、ショウのチームは僅差でリードを奪われていたが、彼は決して諦めず、全力で戦い抜いた。試合終了のホイッスルが鳴ったとき、彼のチームは逆転勝利を果たしていた。

勝利の瞬間、ショウはチームメートたちと喜びを分かち合いながら、自分が大切なことを学んだことを実感していた。彼は心から、その教えを授けてくれた男性に感謝していた。

公園の広場に戻ると、あの男性の姿は見当たらなかった。ショウは空を見上げながら、心の中で「ありがとう」と呟いた。彼は自分の努力と信じる力が、どんな困難にも立ち向かう力になることを確信していた。

ショウの目には、未来に向かって進む力強い光が灯っていた。どんなに厳しい状況でも、諦めずに歩み続けることで、新たな可能性が開けることを彼は深く理解していた。








しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

処理中です...