「俺は小説家になる」と申しております

夢のかけら

夢のかけら

風の冷たさが肌に感じる秋の朝、私はベッドからゆっくりと起き上がった。会社に行く必要がない日々が続いているが、その自由には一抹の不安もあった。

「今日もまた、自分で決めた道を歩むんだ」と自分に言い聞かせながら、キッチンでコーヒーを淹れる。豆の香りが部屋に広がり、私の心を少しだけ落ち着かせた。

会社勤めを辞めてから半年。毎日が自由だが、その分、自分自身に責任を感じる日々が続いている。最初は夢のようだった。誰にも縛られず、好きな時間に起きて、好きなことをする。しかし、その自由の中で自分を見失いかけたこともあった。

「今日はどこまで進められるだろうか」と自問しながら、デスクに向かう。机の上には、新しいビジネスプランの書類が散らばっていた。フリーランスとして、自分の力で生活していくためには、計画と行動が必要だった。

窓の外を見ると、都会の喧騒が広がっている。スーツ姿の人々が急ぎ足で歩いているのを見て、かつての自分を思い出す。毎朝同じ時間に起き、満員電車に揺られ、上司の指示に従う日々。あの頃は、ただ時間に追われていた。しかし、今は自分で時間を作り出すことができる。

コーヒーを一口飲み、深呼吸をする。フリーランスとしての道は簡単ではないが、その分、自分の意思で前に進むことができる。それは大きな自由であり、同時に重い責任でもある。

一日の計画を立て、仕事を始める。クライアントとのメールのやり取り、新しいプロジェクトの構想、マーケティング戦略の見直し。会社勤めの頃とは違い、自分の手で全てを動かしていく感覚がある。

午後になると、少し疲れが出てきた。デスクから離れ、公園に散歩に出かける。木々の間を歩きながら、風の音や鳥のさえずりに耳を傾ける。自然の中でリフレッシュし、自分を取り戻す瞬間だ。

帰宅後、再びデスクに向かう。夕方から夜にかけて、仕事はさらに忙しくなる。しかし、その充実感は計り知れない。自分の力で成し遂げた成果が形になっていく喜びがある。

夜、ベッドに横たわりながら、今日一日を振り返る。会社勤めを辞めたことは正しかったのか。時折不安になることもあるが、今の自分には確かに自由がある。その自由をどう生かすかは、自分次第だ。

「明日もまた、自分の道を歩もう」と心に決め、目を閉じる。夢のかけらを手に入れるために。