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「太陽のいずる時間」

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「太陽のいずる時間」

太陽が地平線から昇り始める時刻、まだ世界は静かだった。朝露が芝生に輝き、小鳥たちのさえずりが森の中から聞こえる。住宅街の片隅にある小さな公園では、年配の男性がひとり、ベンチに座って新聞を読んでいた。

男性の名前は松田清一。毎朝、同じ時間にこの公園にやって来ては、一日の始まりを迎えるのが習慣だった。季節を問わず、太陽が昇る時間になると、彼はこのベンチに座り、静かに新聞を読んだり、まわりの景色を眺めたりする。

松田は早朝の静けさが好きだった。仕事を引退してからは特に、この時間が一日の中で最も落ち着ける瞬間だと感じていた。街はまだ眠っているようで、道路にはほとんど車が通らない。公園も彼のもののように静まり返っていた。

今朝も松田はいつも通りの時間にやって来た。新聞を手に取り、少し前の記事を読みながら、眼鏡を上げ下げしては文字を追っている。すると、突然、隣に座っていたベンチから若い女性が声をかけてきた。

「おはようございます。毎朝、ここで新聞を読んでいるんですね。」

女性の名前は美咲。近所に住んでいる20代のOLで、通勤前にジョギングを兼ねてここを通ることがある。たまたま今朝、松田がいるのを見つけ、声を掛けてみたのだった。

松田は初めての人との会話に少し驚きながらも、笑顔で返事をした。

「はい、毎朝ここで新聞を読んでいますよ。静かでいい時間ですから。」

美咲も笑顔で頷いた。しばらく二人は新聞の話題や近所のことなどを交わし、意外と共通する話題が多いことに気づいた。美咲は忙しい日常の中で、こんなゆったりとした時間があることをほんのりと嬉しく感じていた。

その後も二人はたまに公園で出会うようになった。美咲は仕事のストレスを少しでも解消するため、時折朝のジョギングの途中に立ち寄り、松田と少しだけ会話を楽しんでいた。松田も孤独な時間が減り、彼女との会話で心が軽くなるような気がした。

ある日のこと、松田は公園で待ち合わせることになった。美咲が何か話したいことがあるというのだ。

「実は、この公園での時間が私にとって特別なものになってきました。松田さんと話す時間が楽しくて、それが今では私の日常の一部になっています。」

美咲はそう言いながらも、少し照れくさそうに笑った。

松田はふと、自分が美咲と出会うまでの日々を振り返った。引退後、時間がたっぷりあると思っていたけれど、実際には寂しさを感じることも多かった。それが少しずつ、美咲との出会いで変わっていったことに気づいた。

「美咲さん、私もこの時間が特別なものになっています。あなたと話すことで、日々の生活が豊かになったように感じます。」

松田は素直な気持ちを込めて言った。すると美咲も目を輝かせて笑顔で答えた。

二人はその後も毎朝、公園で会うようになった。太陽が昇るその時刻、静かな公園で二人の笑い声が響く。歳の差もありながら、彼らの間には特別な絆が芽生えていたのだった。








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