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霧の街に消えた老人の足跡

霧の街に消えた老人の足跡

東京の北郊、霧に包まれた街「霧島」には、一人暮らしの老人、山田一郎が住んでいた。80歳を超えた一郎は、妻に先立たれ、子供たちは遠方に住んでおり、一人静かに暮らしていた。

一郎は、毎日決まった時間に散歩に出るのが日課だった。早朝、薄暗い街に灯りがともり始める頃、一郎は杖を手に家を出発する。いつも同じ道を通る一郎の散歩コースは、近所の人々にすっかりおなじみだった。

ある朝、一郎はいつものように散歩に出かけたが、一向に家に帰ってこなかった。心配になった近所の人々が探し回ったが、一郎の姿はどこにも見当たらなかった。

警察に通報された一郎の失踪事件は、街中を騒がせた。一郎は認知症の兆候が見られたこともあったため、徘徊の可能性も考えられた。しかし、一郎は普段から几帳面な性格で、徘徊するような人柄ではなかった。

数日後、一郎の杖が、街外れの山の中で発見された。一郎は山に入ったのか？しかし、一郎の足腰は弱っており、山登りをするような体力はなかった。

一郎の失踪は、謎に包まれたままだった。

数ヶ月後、一郎の遺体が、霧島の奥深い森の中で発見された。一郎は、崖から転落したような状態で発見された。警察は、事故死と断定したが、一郎がなぜ山に入ったのか、なぜ崖から落ちたのかは、最後まで解明されなかった。

一郎の失踪事件は、霧島の人々の心に深い影を残した。街は、以前にも増して霧に包まれたような、静寂に包まれてしまった。

一郎の死後、彼の家は空き家となった。家の中には、一郎の思い出が詰まった写真や手紙、日記などが残されていた。一郎の子供たちが家を訪れ、遺品整理をする中で、一郎の日記に奇妙な記述を見つけた。

「私は、霧に呼ばれている気がする。霧の向こうに、何かがあるような気がする。」

一郎は、失踪する前に、霧に何かを感じていたのだろうか？それとも、何か恐ろしい秘密を抱えていたのだろうか？

一郎の死は、霧島の人々に多くの謎を残したままだった。そして、その謎は、今日もなお、霧に包まれた街に静かに眠っている。