「俺は小説家になる」と申しております

高級食パンブーム終焉

高級食パンブーム 終焉
かつて街を席巻した高級食パンブームも、今ではすっかり落ち着きを見せ、ブーム終焉を迎えようとしていた。

かつては行列のできる店も珍しくなかったが、今では多くの店が閉店を余儀なくされている。

高級食パン専門店「穂のか」も、その例外ではなかった。

開店当初は連日行列ができる人気店だったが、最近は客足もまばらになり、経営は苦しくなっていた。

店主の穂積は、店を畳むことも考え始めていた。

そんなある日、穂積は一人の老人に声をかけられた。

「このパン、とても美味しいね。」

老人は、そう言って、店の看板商品である「極み」を美味しそうに味わっていた。

「ありがとうございます。」

穂積は、老人に礼を言った。

「ところで、あなたはパン職人になってどれくらいになるのかね？」

老人は、穂積に尋ねた。

「20年ほどになります。」

穂積は、そう答えた。

「20年か。長いね。ところで、あなたはなぜパン職人になったのかね？」

老人は、さらに尋ねた。

「私は、美味しいパンを作って、人々に幸せを届けたいと思ったからです。」

穂積は、自分の思いを語った。

「それは素晴らしいことだね。しかし、美味しいパンを作るだけでは、人は幸せにならない。」

老人は、そう言った。

「どういう意味ですか？」

穂積は、老人の言葉に疑問を感じた。

「人は、パンを食べるだけでなく、人と話したり、楽しい時間を過ごしたりすることで幸せになる。パンは、そのためのツールの一つに過ぎない。」

老人は、そう言った。

穂積は、老人の言葉に深く考えさせられた。

確かに、自分はパン作りにばかり夢中になって、大切なことを忘れていたような気がした。

「ありがとう。あなたの言葉で、目が覚めました。」

穂積は、老人に感謝の気持ちを伝えた。

老人は、微笑んでうなずいた。

「これからも、美味しいパンを作って、人々に幸せを届けてください。」

老人は、そう言って、店を後にした。

穂積は、老人の言葉を胸に、決意を新たにした。

高級食パンブーム終焉という逆風に立ち向かい、自分たちのパンで人々に幸せを届ける。

そのために、できることを全て尽くそう。

穂積は、そう決意した。