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長い鮫洲の一日

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鮫洲の長い一日
1.

免許更新のハガキを手にした時、ため息が出た。鮫洲かぁ、遠いんだよなぁ。

アラフォー独身男の冬は、特に寒く感じる。コートの襟を立て、人波に揉まれながら電車に乗る。

車内はすでに満員。つり革にぶら下がり、目の前の景色をぼんやり眺める。

ふと、隣に立っていたOL風のお嬢さんたち二人が、楽しそうに喋っているのが聞こえた。

「ねえねえ、免許更新って緊張するよね?」

「わかるー!でも、鮫洲って遠いし、寒いし…」

二人の会話に、思わず耳を傾けてしまう。

そうだ、免許更新って緊張するよな。ゴールド免許だから優良講習だけど、それでも何かしら注意されるんじゃないかって不安になる。

それに、鮫洲は本当に遠い。しかも、今日は風が強くて寒い。

OL風のお嬢さんたちは、そんな寒さにも負けず、明るくおしゃべりしている。

その姿を見て、少しだけ元気になったような気がした。

2.

鮫洲運転免許試験場に到着したのは、一時間後。

広い試験場内は、人であふれかえっている。

受付で手続きを済ませ、番号札を手に取る。

番号が呼ばれるまで、待合室で待つ。

周りを見渡すと、老若男女様々な人がいる。

中には、子供を連れた若い夫婦も。

子供の好奇心旺盛な視線に、思わず笑ってしまう。

番号が呼ばれ、講習室に入る。

ビデオを見ながら、居眠りしないよう必死に目を覚ます。

講習が終わると、免許証の交付手続き。

新しい免許証を手に、ようやく解放されたような気持ちになった。

3.

帰路につく。

電車の中では、行きよりも空いている。

ふと、窓の外を見ると、夕焼けがきれいだった。

冬の夕焼けは、どこか寂しげな美しさがある。

そんな夕焼けを見ながら、ふと思った。

免許更新って、単に手続きを済ませるだけじゃないんだ。

自分の運転を振り返り、安全運転への気持ちを新たに

する大切な機会なんだ。

そう思うと、鮫洲まで来た甲斐があったような気がした。

4.

家に着くと、すっかり夜になっていた。

冷えた体を温めるために、熱い風呂に入る。

風呂から上がり、テレビをつけると、ニュース番組が流れていた。

画面には、交通事故のニュースが映っていた。

ニュースを見て、改めて安全運転の大切さを痛感した。

明日は、また新しい気持ちで車を運転しよう。

そう決意して、眠りについた。

5.

翌朝、カーテンを開けると、雪が降っていた。

冬の朝は、静かで美しい。

雪景色を見ながら、昨日のことを思い出した。

鮫洲は遠かったけど、充実した一日だった。

免許更新って、単なる手続きじゃないんだ。

自分の命と、周りの人の命を守るための大切な

儀式なんだ。

そう思うと、心が温かい気持ちになった。

雪道を歩きながら、今日も一日、安全運転で過ごそうと

決意した。
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