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独居老人のつぶやき 3 子猫

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朝、目が覚めると、いつものように窓の外を眺めた。

外は、まだ薄暗かった。

ふと、窓の下で、猫が鳴いているのが聞こえた。

猫は、寒そうに体を丸めて、震えていた。

最近よく遊びに来るいつもの猫だった。

私は、猫に声をかけた。

「どうしたの、寒い?」

猫は、私の声に反応して、顔を上げてくれた。

「みゃー」

か細い小さな声。

「大丈夫、大丈夫。ここに入れてあげるから。」

私は、猫を抱き上げて、部屋の中に入れた。

猫は、私の膝の上で、体を温めていた。

私は、猫を撫でながら、つぶやいた。

「一人じゃ、寒いよね。」

やわらかなモフモフの光沢のある毛並み。

優しい体温が伝わってくる。

目ヤニがついていたので、綿棒にベビーオイルをつけて拭いてあげた。

えっ?なんでベビーオイルがあるのかって?

そりゃあ、自分の耳掃除をするときに使うためさー。

私は、独居の老人だ。

妻は、数年前に亡くなり、子供たちは、それぞれに家庭を持ち、遠くに住んでいる。

私は、一人で、この小さな部屋で暮らしている。

毎日、同じことの繰り返し。

朝起きて、ご飯を食べて、テレビを見て、寝る。

たまに、散歩に出かけることもあるが、それも、いつも同じ道を、同じ時間に。

そんな日々の中で、唯一の楽しみは、猫との時間だ。

猫は、私に、生きる喜びを与えてくれる。

猫が、私の膝の上で、体を温めてくれるとき、私は、孤独を感じることがなくなる。

「ねぇ、猫ちゃん。

お前は、何を考えているんだろう?」

私は、猫に話しかけながら、つぶやいた。

猫は、私の顔をじっと見つめていた。

その目は、とても優しい。

「お前は、私のことを、どう思っているんだろう?」

私は、またつぶやいた。

猫は、何も答えなかった。

ただ、私の顔を見つめていた。

その目は、私に、何かを伝えようとしているように見えた。

「ありがとう、猫ちゃん。

お前がいてくれるから、私は、一人じゃないと思える。」

私は、猫にそう言って、抱きしめた。

猫は、私の腕の中で、気持ちよさそうに、体を丸めていた。

私は、また、つぶやいた。

「いつか、お前と一緒に、海に行きたいな。」

猫は、私の声に反応して、耳を動かした。

「お前は、海が好きだろう?

波の音を聞くと、気持ちいいだろう?」

私は、猫に話しかけながら、つぶやいた。

猫は、何も答えなかった。

ただ、私の顔を見つめていた。

その目は、私に、何かを約束しているように見えた。

「いつか、きっと、お前と一緒に、海に行けるよ。」

私は、そう言って、猫を抱きしめた。

猫は、私の腕の中で、気持ちよさそうに、体を丸めていた。

私は、猫を抱きしめて、幸せな気持ちになった。

猫は、私に、生きる希望を与えてくれる。

私は、猫がいてくれて、本当によかったと思う。

私は、猫に、もう一度、つぶやいた。

「ありがとう、猫ちゃん。

お前がいてくれて、私は、生きていける。」

猫は、私の声に反応して、目を細めた。

その目は、私に、愛を告げていた。

私は、猫を抱きしめて、生きる力を与えられた。

猫を飼うのは禁じられているんだけど、少しくらいなら大丈夫かも。

私は猫を炬燵に入れて、猫砂と餌とシャンプーを買いに行った。

首輪も付けてないから大丈夫だよね。

猫を抱え、風呂場に行き風呂桶の中に入れた。

もちろん、お湯は入っていない。

シャワーを出し洗おうとしたんだけど、なぜかお湯が出ない。

猫は危険を察したのか、深い風呂桶をよじ登ろうとして大騒ぎをしている。

随分わたしの腕はひっかかれてしまった。

「なんでこんな時に限ってお湯が出ないんだ?」

わたしは投げ捨てるようにつぶやいた。

仕方なく流しにつれていき、湯沸し器のお湯で猫を洗うことにした。

「ふんぎゃー」

いやいや、アパレルわ、あばれるわ。上を下への大騒ぎ。

もう、もう、大騒ぎ。

わたしの服までびっしょぴっしょ。

わたしが子猫を虐待しているみたいじゃないかー。

まるでやんちゃなモグアイがグレムリンに変化したみたい。

そこら辺中、水浸し。

6か所もひっかき傷ができてしまった。

「おまえすごいね」

「やんちゃだね」

大きなバスタオルで拭いてやると、

「やっと終わったー」

と、思っているのか暴れなくなった。

(ああ、しんど。大変な作業だな)

ドライヤーは嫌だろうから、炬燵の中に入れてあげた。

大騒ぎをしたせいか、キーンと耳鳴りがする。

「ああ、よる年波には勝てないね」

最近、ちょっと無理をするとすぐに腰が痛くなったり、

道路から家に入る段を荷物を持って上がるのは困難を覚える。

いったん、段の上に荷物を置いてじゃないと上がれない。

一時の気の迷いで、猫を家に入れて大丈夫なのか?

保護されている犬を飼おうとしたら、断られたことを思い出した。

公園で猫のお世話をいつもしてるおじいさんに猫を抱っこして、相談に行った。

猫は雌だった。

だから、もしも飼うのなら避妊手術をした方がいいといわれた。

15~16歳が猫の平均寿命だから、よく考えた方がいいとも言われた。

公園にはたくさんの猫が遊びに来る。

自分が面倒見れなくても、誰かがエサをあげたり糞の処理をしてくれたりしている。

飼ってはいけないという契約で入ったアパートなら、大家さんが戻られた時に

もめるんじゃないかとか事細かに話していった。

無責任かもしれないけど、わたしは公園ねこと遊ぶことにした。

散々わたしの腕をひっかいた「みー」も遊びに来るんだから仕方ないよね。

だっこするとあったかかったのにな。

一緒にお布団に入ると、丸くなって寝ていたのにな。

「縁が逢ったら、一緒に海に行こうね」

可愛いピンクの肉球が笑う。
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