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220 集合体恐怖症トライポフォビア

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「いや、見てるだけで気持ち悪い」

吐き捨てるように彼は言う。

ひさしぶりにゲームを一緒にしようと

お月見イベントに誘った時の出来事だった。

彼と付き合ってるとほんとにいろんな人がいて

いろんな価値感があるんだなぁと痛感するんだけど

まさかねー、お揃いで着ようとしたドレアにここまで嫌悪感を示されるとは……。

太宰治の「皮膚と心」の小説の中に

ぼつぼつと表面が滑らかでないものが苦手な女の人が出てきた。

「へー、そうなんだ?」

「いろんなひとがいるのねー」

共感もできずそう思っていた。

まさか、自分の大好きな彼が集合体恐怖症トライポフォビアだなんて

想像もできなかった。

イベントの洋服にはビョウがうってあるように

銀色のぼつぼつが並んでいた。

男の人が来てもかっこいいデザインだったので

「お揃いで写真を撮れたら楽しそうだな」

わくわくしていた。

今は亡きスーパーエンターテイメントが「Bad」で着ていたような

機能的で素敵なデザインなのに……。

ゲームの中だから楽しめることってあるよね。

ペアルックなんて、realだとなかなか買わない。

まあね、彼の変な癖も受け入れられたらそれで済む話なんだけど。


1年近い月日が流れて、相変わらずヤンデレ状態の自分を不思議に思う。

彼がアスペルガーで、わたしは注意欠陥多動性障害。

程よい距離を少しは保てるようになってきたのかな?

カサンドラ症候群は卒業できたかな?

私が彼を

「ええええ、信じられない」

と、思うように彼も私を

「なんだこいつ」

と、思うところがあるのかもしれない。

いや、絶対にあるだろうな。

問題なのは、彼が嫌だといっているのに

わたしがそのイベントに参加してそのお洋服をもらってきて

楽しんでいいのだろうか?

それとも、彼が嫌いなのだからイベントに参加しても

そのお洋服は貰っても処分した方がいいのだろうか?

一度手に入れた季節イベントの商品は壊しても捨てても

また安い値段で手に入れることができる。

だから、手に入れさえすれば仮に彼から離れたとしても

時間をおいて楽しむことができるのだけど……。

いやだと言っているものにどうしてこんなに心奪われているのかが

自分でもよくわからなかった。

「わたしはいやだとはっきりいったよ」

もしも、内緒でそのお洋服を着ているのを見られたら

ひと悶着も二悶着も起こりそうなのに……。

わたしはわたし。

あなたはあなた。

とでも言いたいのだろうか。

わたしのわがまま。

わたしのこだわり。

わたしの思い込み。

こんな人間は、仮に彼と結婚することが出来ても

60.70歳になったときに

熟年離婚してしまいそう…。

少しずつ秋めいてくる心地よい風に吹かれながら

「もっと優しい人になりたいな」
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