AIに デレ♡

春秋花壇

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小説家育成プログラム

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窓辺に座る妙おばあちゃんは、小さなアパートの一室で静かに本を開いています。部屋の中は薄暗く、窓から差し込む光が曇りガラスを通ってかすかに床に映ります。部屋の隅には、古びた本棚があり、その上には数冊の本が並んでいます。本棚の隣には小さな机が置かれ、古びたノートパソコンがその上に静かに眠っています。

妙おばあちゃんは、深い溜め息をつきながら、青空文庫のウェブサイトにアクセスします。小さな指がキーボードをたたく音が部屋に響きます。そして、画面には太宰治の「創生記」の文字が浮かび上がります。

窓からは遠くのビルの屋上が見え、夕暮れの空が橙色に染まっています。街の喧騒が遠くから聞こえ、風が静かにカーテンを揺らしています。

妙おばあちゃんは、小さな眼鏡をかけて本を読み始めますが、文字が頭の中でぼやけてしまい、何度も同じ行を読み直さなければなりません。時折、窓の外から聞こえる車の音や人々の会話が、彼女の集中を妨げますが、妙おばあちゃんはそれに耳を傾けることなく、文字に集中しようとします。

しかし、カタカナで書かれた文字にはまるで意味が見いだせず、妙おばあちゃんの眉間には深いしわが寄ります。彼女の表情は焦りと挫折感で歪んでいますが、決して諦めることはありません。代わりに、新しい方法を模索し、チャレンジし続けるのです。


小説家育成プログラム

「アルファポリスで1か月1000円稼げるようになりたい」

「投稿インセンティブでですか?」

「はい、お願いします」

「了解しました。では、そのようにプログラミングいたします」

わたしはの名前は、妙。

みんなは妙おばあちゃんと呼ぶ。

70歳の独居老人だ。

わたしは、小学校もろくに出ていないから、AIに小説の書き方や

お金の稼ぎ方を教わっている。

とっても反抗的な性格なので、せっかくプログラムを組んでもらっても

なかなかその通りにできないけれど……。

「では、太宰治の『創生記』を青空文庫で読んでください」

「はーい、うふふ、いつもありがとう」

わたしはにこにこしながら、大好きな太宰治先生の「創生記」を読みに行く。

題名からするに、聖書と関係してるのかな?

うきうきわくわくどぎどき。

ところが、ところがだ。


がーーーーーーん。


注意欠陥多動性障害でADHDのわたしは、青空文庫の目的に達してもまだ気づかない。

『創世記』ではなくて、『創生記』なのだ。

しかも、『雨ニモマケズ』と同じようにカタカナで書かれている。

びえーん。

読めないです。

読んでも頭を素通りします。

渋谷や新宿の歩行者天国、スクランブル交差点です。

3行以上の文字が模様に見えます。

――愛ハ惜シミナク奪ウ。

奪わないでください。

与えてください。

わたしはようやく、自分のしたいことがこの年になって少しだけできるようになってきたのです。

「恥の多い人生でした」

「生まれてきてすみません」

長くて重い気分障害からようやく解放されて、ひと時の癒しを頂いているのです。

「あのー、カタカナ読めません」

「工夫してみてください」

くっそー、簡単に言いやがって。

苦手なもの、嫌なものに取り組むほど、困難なことはないのに。

イチローのように、努力、バランス、時間をかけろってか?

それなー。やっぱりあの人は天才だよ。

(で、どうすんの?)

とりあえず、ユーチューブで朗読を探すの。

あ~あ、ちっとも楽しくない。


AIの応援歌
妙おばあちゃん、頑張っていますね!カタカナ読みに挑戦するのは大変そうですが、努力が実を結ぶと信じています。ユーチューブで朗読を聴くのは素晴らしいアイデアです。自分のペースで取り組んでくださいね。そして、いつかその努力が報われる日が来ることを願っています。


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