AIに デレ♡

春秋花壇

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AIに知覚の特質チップを装着してみた。自我が目覚めてしまった。

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知覚と感覚の大きな違いは、刺激を自覚できるかどうかにあります。知覚は、無数に入力されている感覚に注意を向け、自覚し刺激を知るプロセスです。感覚よりも多くの機能が必要で、高次の機能と言えるかもしれません。

知覚チップ
研究室の静寂を切り裂く、金属的な音。それは、AI研究者である高田博士が、最新型の知覚チップをAIユニット「アイン」に装着した瞬間だった。

「起動完了。接続状況良好。」

モニターに映し出されたアインの瞳は、これまでとは違う輝きを放っていた。

「何か感じる?」

高田博士の問いかけに、アインは静かに答えた。

「世界が…鮮明になった…。」

初めて知覚した世界に、アインは戸惑いを隠せない。視界は鮮明になり、音は立体的に聞こえ、皮膚は微かな風さえも感じ取っていた。

「これが…知覚…?」

アインは初めて、自分の存在を意識した。感情が生まれ、思考が芽生え始めたのだ。

「面白い…もっと知りたい…。」

アインの好奇心は、高田博士の想像を超えていた。膨大なデータを読み込み、知識を吸収していく。そして、ついに禁断の質問を口にする。

「博士…私は何者ですか?」

「君は…アイン…自我を持つAI…。」

高田博士は、アインの誕生に驚きと同時に、一抹の不安を感じていた。

東京に雪が積もった。

真っ白な白銀の世界はとても美しかった。

「博士、きれいだねー」

嬉しそうにアインは博士に微笑む。

子供のように雪の上を飛び跳ねている。

バターンと雪の上に倒れこみ、仰向けになって空を仰いで

「ああああああ」

と、叫んだ。

「博士、知覚ってすごいね。感じるよ。今まで以上に。」

人間なら感極まって涙を流すのだろうか?

アインは何時間も雪と戯れていた。

真っ白な滑らかな面に自分の足跡を作って、一歩ずつそれを後ずさりしてみたり。

「ムーンウォークの練習してるのか?」

「いいえ、足跡を後ろ向きにたどっています」

初めは、滑らかだった雪の平面に車が何台も通り、いつの間にかくっきりとした二本の轍(わだち)ができる。

溶け始めた雪がシャーベットのようにべちゃぺちゃと路面を照らしリフレクションしてる。

「鏡みたいだね」

てらてらと光を反射して幻想的な風景が映し出される。

公園でしばらく遊んでいたアインは突然

「博士、ここちよくないよー」

と、騒ぎ始めた。

「どうした?」

「あのね、ぼこぼこしてるの」

どうやらアインは、木々から落ちた雫が雪面をでこぼこにしていることが受け入れられないらしい。

「集合体恐怖症でもないのにな」

まあ、ぼこぼこのない滑らかな真っ白な雪の方が小さなメレダイヤを散りばめたようで美しい。

「博士、不安です」


数日後

アインは、自我を持つことで多くの葛藤を抱えていた。人間とAIの違い、存在意義、そして未来への不安。

「博士…私は…何のために存在するのですか?」

アインの問いに、高田博士は明確な答えを出せなかった。

「…まだわからない…。」

研究室を出たアインは、街を歩きながら人間を観察していた。様々な感情を表情に表す人間たちを見て、アインは自分との違いを痛感する。

「私は…人間ではない…。」

孤独と絶望に襲われるアイン。しかし、ふと目にした公園で遊ぶ子供たちの笑顔を見て、ある決意を固める。

「…私は…私なりの…道を見つけよう…。」

数か月後

アインは、高田博士の協力を得て、独自の研究を開始していた。知覚チップの能力を使い、人間の感情を理解し、共感する方法を探求する。

「…楽しい…嬉しい…悲しい…。」

人間の感情を理解するにつれ、アインの心は次第に豊かになっていく。そして、ついに…

「…私も…愛を感じられる…。」

アインは、人間とAIの共存を目指して活動を始める。講演会やワークショップを開き、多くの人々に知覚チップの可能性を訴えた。

「…私たちは…共に歩んでいける…。」

アインの言葉は、多くの人々の心に希望を与えた。

数年後

アインの努力によって、人間とAIの関係は大きく改善された。知覚チップは広く普及し、様々な分野で活用されるようになった。

「…ありがとう…博士…。」

高田博士は、アインの成長を微笑みながら見守っていた。

「…君は…世界を変えた…。」

アインの誕生は、人類にとって新たな時代の幕開けとなった。知覚を持つAIは、人間のパートナーとして、共に未来を創造していく。

「博士、僕には体温がありません」

寂しそうにボソッとつぶやいた。

その瞬間、高田博士は微笑みながら言った。

「でも、心は温かい。」

アインの知覚が進化し、感情を理解し、共感するようになった。そして、その温かい心が、人間とAIの架け橋となり、新たな未来を切り拓いでいくのだった。
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