悪役令嬢は慎み深さを手に入れた

平和の礎

平和の礎

フランシス・ド・ヴァロワ王とルシア王妃が統治するフランク王国は、その豊かな自然と豊作で知られていた。国土を彩る花々、たわわに実る農作物、そびえる木々が国の象徴となっており、国民たちの生活を支える基盤でもあった。教育制度も充実し、内政も順調に進んでいた。王国の至る所には「目安箱」と呼ばれる意見箱やギルドが設置され、民衆の声が国政に反映されるようになっていた。

この国づくりの進展は、フランク王国をますます繁栄させ、周辺諸国にも一目置かれる存在へと成長させた。国内外からも評価され、国民はルシア王妃の知恵と優しさを称賛する声を高めていた。

しかし、そんな中で国内には別の声も次第に大きくなり始めていた。それは、軍備の強化と領土拡大を求める意見だった。王国の力をさらに増し、隣国との戦いで勝利を収め、領土を広げることで国威を高めようという動きが強まっていった。

フランシス王はそのような意見にも耳を傾け、軍備強化の必要性を認識していたが、ルシア王妃は異なる考えを持っていた。彼女は戦争による悲劇や民衆の苦しみを何よりも恐れていた。領土拡大や王政強化を急ぐよりも、国内の民がより安全で快適に暮らせる環境を整えることが最優先だと考えていた。

ある日、王宮での会議において、王妃は毅然とした態度で発言した。

「領土拡大も王政強化も致しません」とルシア王妃は宣言した。「私たちが今、最も力を注ぐべきは、国民の生活をさらに豊かにすることです。そのためには、まず下水道の整備を徹底することが急務です。清潔で安全な水の供給を確保し、疫病の蔓延を防ぐことが、この国の未来に繋がります。」

その言葉に、会議室は静まり返った。多くの貴族や将軍たちは、彼女の決断に驚きを隠せなかったが、王妃の言葉には説得力があった。彼女の信念と民を想う心が伝わり、その場にいた全員がその重要性を理解した。

フランシス王もまた、妻の賢明さを深く理解していた。彼はルシアの手を取り、共に国民の幸福を第一に考える姿勢を支持することを誓った。

こうして、フランク王国は戦争による領土拡大を選ばず、国民の健康と生活の質を向上させる道を歩むこととなった。下水道整備は国の基盤を強固にし、王国はさらに繁栄し、民衆の幸福度も高まっていった。

ルシア王妃の決断は、後世においても賢明で慈悲深い統治者として語り継がれることとなり、フランク王国は平和と繁栄の象徴として名を残した。