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ペンタブラックな過去

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ペンタブラックな過去

「何よ、橋の下から拾われてきたくせに」

側近たちの心無い言葉に、赤子の時から傷ついてきた。そう、ルシアは第一王女でありながら、実の子ではなかった。

ジュリエット王妃がフランシス・ド・ヴァロワ第一王子を妊娠しているとも知らず、川遊びに出かけた際に、草むらの中で見つけた子供だった。中から雪のように肌の白いルシアが、箱の中で捨て猫のようにか弱い声で泣いていたのを哀れに思い、王妃は彼女を拾って育てることにした。まるでモーゼの女の子版のような話だった。

しかし、ルシアがモーゼと違っていたのは、彼女には心配してついてくる姉もおらず、実の母親に導かれることもなかったことだ。ジュリエット王妃はルシアを可愛いと思ったが、そのか弱い姿を見て、いつも壊れてしまいそうで抱くことができなかった。

ミルクで育てられたルシアは、授乳の時さえ誰からも抱かれることはなく、ベッドに寝かせたまま、まるで餌を与えるように育てられた。優しい人肌のぬくもりを知らないまま、AIのように感情が育つことなく、知識だけが与えられていった。彼女は聡明であったが、感情を理解することはできず、人の気持ちもわからない子供に育っていった。

後に人々はこれを「愛着障害」と呼んだ。

ジュリエット王妃は、ルシアを自分の子供であるフランシス王子の婚約者として育てた。しかし、人の妬みは恐ろしいものである。おつきのメイドたちは心の中でルシアに嫉妬しており、「捨て子のくせに」と陰口を叩くことが増えていった。

ルシアが自制を知らず、かんしゃくを起こすたびに、「わがままで傲慢だ」と不評が広まった。誰からも愛されることがなかったルシアは、誰かを愛することも知らなかった。人は鏡のようなもので、誰かに愛され、大切にされて初めてそれを反射する。だが、ルシアはまるでペンタブラックのように、どんなに光を当ててもすべてを吸収し、反射することができなかったのだ。

フランシス王子との婚約が発表された日も、ルシアは心の中で孤独を感じていた。王子は優しく接してくれたが、彼女の心は冷え切っていた。どれほどの愛情を注がれても、彼女の心には届かなかった。

ある日、ルシアは王宮の庭で一人佇んでいた。美しいバラの花が咲き誇る庭園で、彼女は深い孤独感に包まれていた。その時、一人の老人が近づいてきた。彼は庭師で、ルシアが幼い頃から見守ってきた人物だった。

「お嬢様、お元気ですか?」老人は優しく問いかけた。

「元気なんて、あるわけないでしょう。私は誰からも愛されていないのですから」ルシアは涙をこらえながら答えた。

老人は微笑み、静かに語り始めた。「お嬢様、愛は時に見えないものです。ですが、見えなくても存在しているのです。あなたがここにいること、それ自体が愛の証なのです。」

その言葉に、ルシアは少し驚いた。老人の言葉は、彼女の心に微かな光を灯した。彼女は自分の過去と向き合い、少しずつ心を開いていくことを決意した。

フランシス王子も、ルシアの変化に気付き、彼女を支えるために全力を尽くした。彼の優しさと忍耐強さが、少しずつルシアの心を癒していった。

時間が経つにつれて、ルシアは少しずつ愛を感じることができるようになった。彼女は過去の痛みを乗り越え、未来に希望を見出すことができた。そして、フランシス王子と共に、新たな人生を歩み始めたのだった。

ペンタブラックのように光を吸収していた彼女の心は、少しずつ輝きを取り戻し、周りの人々にその光を反射するようになった。愛の力は、どんなに深い闇でも照らすことができるのだと、ルシアは実感したのである。

この小説は、ペンタブラックな過去を持つルシアが、愛と希望を取り戻すまでの過程を描いています。いかがでしょうか?

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