干物女を圧縮してみた

春秋花壇

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生きててよかった

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生きててよかった

今日は病院に行く日だ。いつもは気が重いこの場所も、今日は少し違った気持ちで向かうことができた。病院の庭には、さまざまな花々が咲き乱れていて、毎回ここに来るたびに心が癒される。シュウメイギクの可憐な花、エピデンドラムの華やかさ、そしてエンジェルストランペットの優雅さ。色とりどりの花たちが、まるで私を迎え入れてくれているようだった。

「今日もきれいだなあ。」そう呟きながら、私は深呼吸をした。秋の澄んだ空気が、心の中まで浸透していくように感じる。「ああ、生きててよかった」と思わず口にする。心の奥で渦巻いていた不安が、花の香りに包まれ、少しずつ薄れていくのを感じた。

日和、27歳。大学卒業後は地元の企業に就職したものの、仕事が忙しすぎて心を亡くしてしまったような生活を送っていた。友達も少なく、休日はほとんど家にこもり、趣味のアニメやマンガに浸っていた。まさに干物女と呼ばれる状態だった。しかし、最近はそんな自分を見直そうと決意し、何か新しいことを始めようとしていた。病院に通う理由は、健康診断と軽い体調不良のためだったが、今ではそれすらも楽しみに変わりつつあった。

病院の庭に腰を下ろし、しばらく花を眺める。色鮮やかな花々は、秋の柔らかい日差しを浴びて生き生きとしている。そんな景色を前に、私の心もまた、少しずつ潤いを取り戻していく。

「日和さん、今日は体調どうですか?」看護師のミカさんが近づいてきた。彼女はいつも優しい笑顔で私を迎えてくれる。

「今日は気分がいいです。花がきれいで。」私は素直に答えた。ミカさんもその答えに微笑んだ。

「そうですね。ここは癒しの空間ですから。花を見ると、心が和む気がしますよね。」

「ええ、本当にそう思います。」心の底から同意する。花を見ていると、悩みや不安がふっと消えていく気がする。

「じゃあ、病院の外にある、もう少し大きな庭にも行ってみませんか?」とミカさんが提案してくれた。彼女の提案に私は嬉しくなり、頷いた。

病院の外に出ると、もっと広い庭が広がっていた。ベンチに座る人々や、子供たちが遊ぶ姿が目に入る。空は青く澄み渡り、穏やかな秋の日差しが心地よい。ここにいると、人生の小さな幸せが感じられる。

「日和さん、何かやりたいことはありますか?」ミカさんが尋ねてくれた。私は少し考えた。

「実は、最近ガーデニングに興味を持ち始めて…。花を育てるって、きっと楽しいだろうなって。」

「それは素晴らしいですね!花を育てることで、自然と触れ合えますし、日々の小さな喜びを感じられると思います。」

その言葉に、私の心がさらに軽くなった。日々の忙しさの中で、何かに心を注ぐことで、気持ちが前向きになれるかもしれない。私はガーデニングに挑戦しようと決意した。

「それに、花を育てていると、人との繋がりも増えますよ。地域の花壇活動に参加するのもいいかもしれません。」

ミカさんの言葉は私の心に響いた。私も少しずつ、人との繋がりを求めるようになりたい。家にこもりがちだった自分を変えるきっかけを探していたが、今やその第一歩が見えてきた気がする。

病院の庭での時間は、いつの間にか心の栄養を与えてくれる場所となっていた。私の中に静かな自信が芽生え始め、少しずつ色を取り戻していく。今日の診察が終わった後、帰りに花の苗を買って帰ろう。そんな思いが心の中で膨らんでいく。

病院を後にし、帰り道を歩いていると、空を見上げた。澄んだ青空には秋の雲が浮かんでいて、その景色がまた私の心を癒してくれる。「生きててよかった」と心から思える瞬間が増えてきた。このまま少しずつ、花のように生き生きとした毎日を送れるようになるといいな。

帰宅した私は、さっそくネットでガーデニングの情報を探し始めた。どんな花が育てやすいか、どんな土が必要か、どんな道具を揃えればいいか。心が躍る。新しい趣味を始めることで、もっと自分を大切にしていける気がする。

これからの生活に少しずつ色を添え、花が咲くような日々を迎えられたら。そう思うと、未来への期待が膨らんでいく。どんな小さなことでも、心から楽しんで生きていけたら、きっと私はもっと素敵な自分になれるはずだ。

「さあ、まずは花の苗を買いに行こう!」そう決意しながら、日和は新たな一歩を踏み出す準備を整えた。生きていることの喜びを感じながら、未来へと向かう希望に満ちた瞬間を迎えたのだった。






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