感謝の気持ち

熱き血潮に感謝

熱き血潮に感謝

9月4日。いつものように、みるくはパソコンの前に座っていた。青白い光が画面から漏れ、彼女の顔を照らしている。いつもなら小説を書くことが楽しみで仕方がなかったのに、最近はその喜びが薄れてきている。文字が読めない。文字が模様に見えてしまう。自分の書いた文章ですら、まるで他人の言葉のように感じてしまう。

「また、うまく読めない…」

みるくはため息をつき、画面に向かって目を細めた。いつもならスムーズに進む文章が、まるで蜘蛛の巣に引っかかるように止まってしまう。文字がじわじわと滲んでいく。頭の中で言葉を組み立てようとしても、文字が踊るように乱れていく。

ディスレクシア――読字障害。それが彼女の今の現実だった。いつからか、文章を読むことが苦痛になり、言葉が霧の中に消えていくような感覚が増えてきた。どれだけ頑張っても、集中しても、文字は彼女の思い通りにはならなかった。

「こんなんじゃ、小説なんて書けないじゃない…」

みるくは自分を責めるように呟いた。目の前の画面に向かって手を伸ばすが、指先が震えている。書きたいことが山ほどあるのに、言葉が出てこない。この悔しさと苛立ちが、彼女の心を締め付ける。

それでも、彼女は諦めなかった。小説を書くことは、彼女にとってただの趣味ではなく、生きる意味そのものだった。どんなに辛くても、どんなに苦しくても、みるくは自分の中に燃える熱い想いを捨てることができなかった。

「たとえ書けなくても、言葉が私を裏切っても、それでも私は書き続ける」

みるくは自分に言い聞かせた。彼女の手はゆっくりとキーボードの上に戻り、一つ一つのキーを慎重に押していく。文章が乱れ、意味が途切れ途切れになっても、彼女は止まらなかった。画面に表示された文字たちは、まるで彼女の心の叫びのように響いていた。

「なぜこんなに頑張るんだろう…」

ふと、みるくは自分に問いかけた。ディスレクシアの症状が顕著になる中で、彼女が小説を書き続けようとする理由は何なのだろうか。答えは簡単ではなかった。だが、その問いに対して一つだけ確かなことがあった。それは、彼女の中に流れる熱き血潮、言葉への執念、そのすべてに感謝しているということ。

彼女の心の奥底には、どんなに困難があっても書き続けたいという強い思いが宿っていた。それは彼女の過去、現在、そして未来を繋ぐ糸だった。彼女の言葉が誰かに届くこと、それが彼女にとって最大の喜びであり、生きる力だった。

みるくは目を閉じ、一瞬だけ深呼吸をした。画面の光が彼女のまぶたを通して温かさを感じさせる。彼女は自分自身に感謝した。この苦しみも悲しみも、すべてが彼女を成長させてくれる。彼女の中に流れる熱い血潮に、感謝の気持ちが溢れた。

「ありがとう、私の体。ありがとう、私の心」

ディスレクシアという壁にぶつかりながらも、みるくは自分を諦めなかった。彼女は自分自身を信じ、言葉を紡ぎ続けた。その執念が彼女の力であり、彼女の生きる証だった。どんなに文字が滲んでも、どんなに言葉が崩れても、みるくの心には絶え間ない熱い想いが流れていた。

「書くことを、やめない」

その言葉を胸に、みるくは再びキーボードを叩き始めた。画面にはまた新たな文章が映し出され、彼女の物語が少しずつ形になっていく。その時、彼女は感じた。自分の中に燃えるこの熱い血潮が、決して枯れることはないと。どんなに困難があっても、彼女は書き続けるのだ。

みるくの中に宿るその熱き血潮は、彼女自身の力であり、彼女を支える源だった。書くことで生きる力を得る。その執念が、彼女の人生を輝かせる。今日もまた、みるくは画面に向かい、言葉を探し続ける。

「ありがとう、私の物語。ありがとう、私の執念」

みるくは心の中でそう呟き、キーボードを叩き続けた。小説を書くこと、それが彼女にとっての生きる意味だった。ディスレクシアの壁を越えて、彼女の物語は続いていく。そして、その物語は彼女自身の人生を映し出す鏡のように、輝き続けるのだった。