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日本庭園
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おはようございます。☘️
しめやかな石畳
破竹の葉から落ちる雫
苔むす庭石
灯籠、東屋、茶室
大きな流れのように
くねっている砂利
侘びさび満載の
夜中の日本庭園を
堪能してきました
素敵な小説を書きたいから
インプットを増やします
震えるように
ささやく山茶花が
極月と和む
ありがとう🍀
「もう歩けない」
「えええ」
「ママ、大丈夫?」
ここは、新しく作った公園。
今日は雨ふりで、築山の岩畳も濡れていて、
滑りそうだった。
ママは、以前、寝たきりになって
全く起きあがることが困難な状況になったことがある。
あれから、少しずつ歩く練習をして、
自転車につかまってなら、
結構、遠い距離まで行くことができるようになった。
どうやら、この地は、
奇跡的にリゼロになるわけではないようだ。
この前の、青年のイライラといい、
ママの今日の状態といい、
引継ぎということなのだろう。
その辺で座って休もうにも、
東屋までは距離があった。
狭い土地なのに、石畳も曲がりくねっていて、
結構な距離を歩いたような気になる。
「ママ、平気?」
未来お嬢ちゃんが心配して、ママの手を引いている。
ママは普段履きのボロボロの安い靴を履いていた。
ここに飛ばされたときにはいていたものだ。
たぶん、あの靴は穴が開いていて、
濡れた路面の水が靴下にしみているはず。
僕はもふもふのジュリアーノ。マルチーズなの。
かつてママに飼われていた。
今はお空のお星様。
ママを守るためにそばにいる。
ママは、濡れた靴下が気持ち悪いらしく、
変な足の動かし方をし始めた。
その途端、つるっと滑って、
未来お嬢ちゃんの上にでーん><
そして、未来お嬢ちゃんはその勢いで
下の川のようなところに転げ落ちた。
「あああ」
下の川のようなところは、
できたばかりということもあり、
水は流してなかったのだけど、
この雨で結構水が溜まっている。
びしゃーん。
水しぶきと共に、お嬢ちゃんはしりもちをついた状態。
「いたーい」
ママも、
「いたいいーーー」
こういう場合、とっさのことでどっちから助けたらいいのかわからない。
にいにいは、未来を抱き起しに行った。
おんぶして、茶室まで運ぶと、
「ここにいてね」
と、ママを助けに行く。
雨は本降りになってきて、
ザーザーと音を立てている。
さっきより、濡れた岩が歩きづらい。
ママは、立とうとしているのだが、
足が痛くて立つこともできないみたい。
「おぶさって」
体を支えて、起こすと
しゃがんでママがおぶさりやすいようにした。
とりあえず、東屋へ。
東屋まで運ぶと、ママをおろし、
未来お嬢ちゃんをおんぶして、家に急いだ。
ママは、やっと自転車のところまで移動すると、
つかまりながら家に向かって歩いていた。
「歩ける?」
「うん、大丈夫みたい」
「未来は大丈夫だから、安心して」
「頼もしいわね、いつの間か大きくなって」
ママはうれしくて泣いている。
5階から落ちた青年を毎日車いすで散歩に連れて行っていたのが、
つい昨日のことのように思える。
おもえば、この子たちには普通以上の苦労をさせた。
お金が全くなくて、電気を止められ、
「キャンプだー」
と、はしゃいでいた日々。
水道も止められて、公園に夜中に水を汲みに行った日々。
遠足なのに、食べ物がなくて、
連絡帳に、その旨を書いて、
先生にお弁当を買ってもらった日々。
ガスだけは止められていなかったので、
やおやさんで、野菜の切れ端を
もらってきて炒めて食べた日々。
思い出して涙が止まらなくなる。
「ごめんね、ありがとう」
青年は、ハンカチでママの涙を拭いている。
それは、青年が2.3歳の頃、
「ちゃーちゃん、泣かないで、
僕が幸せにするからね。
僕が必ず幸せにするからね」
その時と同じような状態だった。
「あなたを産んでほんとによかった」
青年はその言葉を聞くと、
生まれてよかった。
生きていてよかった。
心から、そう思うのだった。
傘もささずに歩いている二人を
雨はしっぽり濡らしていく。
まるで二人の涙のように……。
読んでくださってありがとうございます。
しめやかな石畳
破竹の葉から落ちる雫
苔むす庭石
灯籠、東屋、茶室
大きな流れのように
くねっている砂利
侘びさび満載の
夜中の日本庭園を
堪能してきました
素敵な小説を書きたいから
インプットを増やします
震えるように
ささやく山茶花が
極月と和む
ありがとう🍀
「もう歩けない」
「えええ」
「ママ、大丈夫?」
ここは、新しく作った公園。
今日は雨ふりで、築山の岩畳も濡れていて、
滑りそうだった。
ママは、以前、寝たきりになって
全く起きあがることが困難な状況になったことがある。
あれから、少しずつ歩く練習をして、
自転車につかまってなら、
結構、遠い距離まで行くことができるようになった。
どうやら、この地は、
奇跡的にリゼロになるわけではないようだ。
この前の、青年のイライラといい、
ママの今日の状態といい、
引継ぎということなのだろう。
その辺で座って休もうにも、
東屋までは距離があった。
狭い土地なのに、石畳も曲がりくねっていて、
結構な距離を歩いたような気になる。
「ママ、平気?」
未来お嬢ちゃんが心配して、ママの手を引いている。
ママは普段履きのボロボロの安い靴を履いていた。
ここに飛ばされたときにはいていたものだ。
たぶん、あの靴は穴が開いていて、
濡れた路面の水が靴下にしみているはず。
僕はもふもふのジュリアーノ。マルチーズなの。
かつてママに飼われていた。
今はお空のお星様。
ママを守るためにそばにいる。
ママは、濡れた靴下が気持ち悪いらしく、
変な足の動かし方をし始めた。
その途端、つるっと滑って、
未来お嬢ちゃんの上にでーん><
そして、未来お嬢ちゃんはその勢いで
下の川のようなところに転げ落ちた。
「あああ」
下の川のようなところは、
できたばかりということもあり、
水は流してなかったのだけど、
この雨で結構水が溜まっている。
びしゃーん。
水しぶきと共に、お嬢ちゃんはしりもちをついた状態。
「いたーい」
ママも、
「いたいいーーー」
こういう場合、とっさのことでどっちから助けたらいいのかわからない。
にいにいは、未来を抱き起しに行った。
おんぶして、茶室まで運ぶと、
「ここにいてね」
と、ママを助けに行く。
雨は本降りになってきて、
ザーザーと音を立てている。
さっきより、濡れた岩が歩きづらい。
ママは、立とうとしているのだが、
足が痛くて立つこともできないみたい。
「おぶさって」
体を支えて、起こすと
しゃがんでママがおぶさりやすいようにした。
とりあえず、東屋へ。
東屋まで運ぶと、ママをおろし、
未来お嬢ちゃんをおんぶして、家に急いだ。
ママは、やっと自転車のところまで移動すると、
つかまりながら家に向かって歩いていた。
「歩ける?」
「うん、大丈夫みたい」
「未来は大丈夫だから、安心して」
「頼もしいわね、いつの間か大きくなって」
ママはうれしくて泣いている。
5階から落ちた青年を毎日車いすで散歩に連れて行っていたのが、
つい昨日のことのように思える。
おもえば、この子たちには普通以上の苦労をさせた。
お金が全くなくて、電気を止められ、
「キャンプだー」
と、はしゃいでいた日々。
水道も止められて、公園に夜中に水を汲みに行った日々。
遠足なのに、食べ物がなくて、
連絡帳に、その旨を書いて、
先生にお弁当を買ってもらった日々。
ガスだけは止められていなかったので、
やおやさんで、野菜の切れ端を
もらってきて炒めて食べた日々。
思い出して涙が止まらなくなる。
「ごめんね、ありがとう」
青年は、ハンカチでママの涙を拭いている。
それは、青年が2.3歳の頃、
「ちゃーちゃん、泣かないで、
僕が幸せにするからね。
僕が必ず幸せにするからね」
その時と同じような状態だった。
「あなたを産んでほんとによかった」
青年はその言葉を聞くと、
生まれてよかった。
生きていてよかった。
心から、そう思うのだった。
傘もささずに歩いている二人を
雨はしっぽり濡らしていく。
まるで二人の涙のように……。
読んでくださってありがとうございます。
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